『キング』という雑誌が、「国民」という均質な存在を編成したという観点を膨大な資料から論証してゆく刺激的な一編。
この雑誌が単なる活字メディアに留まらず、音楽、映画などあらゆるジャンルを駆使して読者を次第に均質化し、「国民」として編成していったその過程を論ずるあたり、確かに説得力がある。
ただし円本の登場以降、市場において重要な位置を占めた探偵小説が、なぜか黙殺されているのは気にかかる。『大暗室』を連載した乱歩をはじめ、横溝正史、大下宇陀児、大倉燁子、海野十三といった多くの探偵小説家が誌面を飾っていたはずだ。もし作者がいう「公共性」を論じるのならば、探偵小説と「モダン層」(大宅壮一)の関係は極めて重要だと思われるのだが。
とはいえ戦前の大衆文化を考える上で必読の一冊であることは間違いない。
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キングの時代: 国民大衆雑誌の公共性 単行本 – 2002/9/25
佐藤 卓己
(著)
日本初の100万部を達成し,「雑誌の黄金時代」を築いた伝説的雑誌『キング』―この熱狂的な支持を受けた「国民大衆雑誌」の意味を,同時代のメディア環境全体のなかで捉え直し,戦時体制における『キング』と講談社文化の役割を,それが実現した公共性の視座から解明する.近代日本おける参加=動員のメディア史.
- 本の長さ462ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2002/9/25
- ISBN-104000225170
- ISBN-13978-4000225175
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
日本初の百万部を達成し、「雑誌の黄金時代」を築いた伝説的雑誌『キング』。この熱狂的な支持を受けた「国民大衆雑誌」の意味を、それが実現した公共性の視座から近代日本史に位置づけ直し解明する。参加=動員のメディア史。
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2002/9/25)
- 発売日 : 2002/9/25
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 462ページ
- ISBN-10 : 4000225170
- ISBN-13 : 978-4000225175
- Amazon 売れ筋ランキング: - 720,967位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1960年、広島市生まれ。1984年 、京都大学文学部史学科卒業。1986年、同大学院修士課程修了。ミュンヘン大学近代史研究所留学後、1989年京都大学大学院博士課程単位取得退学。東京大学新聞研究所助手、同志社大学文学部助教授、国際日本文化研究センター助教授などを経て、現在は京都大学大学院教育学研究科教授。
『「キング」の時代―国民大衆雑誌の公共性』(岩波書店2002年)で第24回日本出版学会学会賞、第25回サントリー学芸賞を、『言論統制―情報官・鈴木庫三と教育の国防国家』(中公新書2004年)で第34回吉田茂賞を、『ファシスト的公共性―総力戦体制のメディア学』(岩波書店2018年)で第72回毎日出版文化賞を受賞。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2002年11月25日に日本でレビュー済み
既存の『キング』論を読んでいる人ならば「『キング』の時代」と聞いて、岩波文化対講談社文化だとか、戦犯雑誌としての『キング』論を語った本だろうと思うことだろう。
しかし、本書はあえて従来の雑誌研究とは異なる「内容の分析よりもメディア環境における媒体そのものの分析を重視した」ことによりその従来の通説を覆すことに成功している。
戦前~戦中の膨大な数の資料をうるさい位に持ち出していることも見逃せない。『キング』や、『キング』論について何も知らない人でもそのお陰で本書から取り残されることなく『キング』を読むが如く「面白くて為になる」読書を楽しめる。
しかし、本書はあえて従来の雑誌研究とは異なる「内容の分析よりもメディア環境における媒体そのものの分析を重視した」ことによりその従来の通説を覆すことに成功している。
戦前~戦中の膨大な数の資料をうるさい位に持ち出していることも見逃せない。『キング』や、『キング』論について何も知らない人でもそのお陰で本書から取り残されることなく『キング』を読むが如く「面白くて為になる」読書を楽しめる。