本書は、専門を異にする二人の東大教授が、グローバル化という複雑な過程を、文化の政治学とポリティカル・エコノミーの対話の中から、主として1990年代の日本に対する批判的な実践として、分析しようとしたものである。その際、日常の生きられる場での諸々の社会的実践の変容と結び付いたものとして、グローバル化の諸過程をとらえることが意図されている。
本書の長所は、第一に具体的な日本の事例に即してグローバル化について論じている点であり、第二に鋭い分析が随所に見られる点である。他方、先進国である日本に即して論じている為、消費社会化とグローバル化との区別が曖昧である点が気になる。著者達も承知のことと思うが、第三世界に視点を据えれば、違ったグローバル化の像が得られるだろ!う。
なお、著者達は1979年の断絶を強調しているが、これは通常戦後史が1970年前後(68年革命、環境問題、石油危機)と1990年前後(冷戦崩壊)で区分されることを考えると、非常に興味深い。私見では、1970年の断絶が1979年の断絶に帰結し、1990年の断絶が1999年ないし2001年の断絶に帰結しているように思われるが、この点について著者の意見をより詳しくお聞きしたいところである。
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グローバル化の遠近法: 新しい公共空間を求めて 単行本 – 2001/2/27
グローバル都市・東京に登場した石原慎太郎,消費社会に見え隠れするナショナリズム,脱政治の動きに胚胎する「政治」の危険性と可能性-グローバル化がつきつけるせめぎあいと逆説の数々を読み解きつつ,今この国に起きている地殻変動の意味,新しい公共空間の地平を探る.気鋭の著者が討議を重ね共同で打ち出す,斬新な現代日本論.
- 本の長さ230ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2001/2/27
- ISBN-104000226029
- ISBN-13978-4000226028
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
グローバル化がつきつける、様々なレベルでの変化を読み解きつつ、今この国に起きている地殻変動の意味、「新しい公共空間」のありようを探る。気鋭の研究者二人が、綿密な議論を重ねて共同で打ち出す斬新な現代日本社会論。
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2001/2/27)
- 発売日 : 2001/2/27
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 230ページ
- ISBN-10 : 4000226029
- ISBN-13 : 978-4000226028
- Amazon 売れ筋ランキング: - 90,548位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 86位日本論
- - 1,727位社会学概論
- - 11,104位ビジネス・経済 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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姜尚中(カン サンジュン)
1950年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。
東京大学大学院情報学環教授。専攻は政治学・政治思想史。
著書に『マックス・ウェーバーと近代』、『オリエンタリズムの彼方へ』、『ナショナリズム』、『東北アジア共同の家をめざして』、『日朝関係の克服』、『姜尚中の政治学入門』、『ニッポン・サバイバル』『悩む力』ほか。
共著回編者に『ナショナリズムの克服』、『デモクラシーの冒険』、『在日一世の記憶』ほか。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2003年3月25日に日本でレビュー済み
「グローバル化」視点の獲得によって浮かび上がる世界観を指摘する。よくありがちな底の浅いグローリズム万歳の本でもアンチグローバリズムの本でもない。
以下、本書の世界観を私なりに比喩を用いて述べる(僭越ながら私個人による図式的解釈である。本書を読んで良く分からない時の参考にしていただきたい)。水を入れたバケツに絵の具を何度もたらすと、水流で色が混ざり合って模様ができる。個々の模様は一見、確固とした存在に見える。しかし、良く見れば同じような模様があったとしても、全く同じではなく微妙な色の差異があるし、どこからどこまでが「一つの模様」なのか容易に判別できない。また水流によってすぐに色と模様が変化してしまう。テクノロジーの進歩が生み出した超高速のヒト・モノ㡊カネ・情報の「水流」(グローバル化)によって、我々は元々世界がこのような流動的な流れ(「フロー」)の一時的な結節点の姿であったことを【思い出した】のだ。我々はこれまで「市民」「社会」「公共空間」「国民」といった概念が自明で確固とした単一の実在であると誤解してきた。が、これらは上記の「水流の中の色模様」のようなもので「たまたまそう見える」に過ぎない。個々の市民のアイデンティティの拠り所はみんな同じように見えても個人個人で差異があるし「公共空間」は無限にある公共空間の多様な重なりが作り出す一時的な調和の姿なのである。浅薄なナショナリストが扇動するような確固とした実在としての「国民」なぞ存在しなかったのだ。またあるいは「都市」とは、人流・物流が次に移動する!ための一時的な休息・活動場、ターミナルとしての場に過ぎない。
本書は歴史学や社会学の最新見解を縦横に援用し手際良く纏め、上述のような世界観を提供する。読者個々人の世界解釈と政治実践に非常に有益な指針となるだろう。お勧め。
以下、本書の世界観を私なりに比喩を用いて述べる(僭越ながら私個人による図式的解釈である。本書を読んで良く分からない時の参考にしていただきたい)。水を入れたバケツに絵の具を何度もたらすと、水流で色が混ざり合って模様ができる。個々の模様は一見、確固とした存在に見える。しかし、良く見れば同じような模様があったとしても、全く同じではなく微妙な色の差異があるし、どこからどこまでが「一つの模様」なのか容易に判別できない。また水流によってすぐに色と模様が変化してしまう。テクノロジーの進歩が生み出した超高速のヒト・モノ㡊カネ・情報の「水流」(グローバル化)によって、我々は元々世界がこのような流動的な流れ(「フロー」)の一時的な結節点の姿であったことを【思い出した】のだ。我々はこれまで「市民」「社会」「公共空間」「国民」といった概念が自明で確固とした単一の実在であると誤解してきた。が、これらは上記の「水流の中の色模様」のようなもので「たまたまそう見える」に過ぎない。個々の市民のアイデンティティの拠り所はみんな同じように見えても個人個人で差異があるし「公共空間」は無限にある公共空間の多様な重なりが作り出す一時的な調和の姿なのである。浅薄なナショナリストが扇動するような確固とした実在としての「国民」なぞ存在しなかったのだ。またあるいは「都市」とは、人流・物流が次に移動する!ための一時的な休息・活動場、ターミナルとしての場に過ぎない。
本書は歴史学や社会学の最新見解を縦横に援用し手際良く纏め、上述のような世界観を提供する。読者個々人の世界解釈と政治実践に非常に有益な指針となるだろう。お勧め。