４人のドキュメンタリストの共同作品である、映画『３１１』の制作過程をまとめた本である。
映画祭で上映された作品には、賛否両論、罵倒と称賛が巻き起こったという。
それぞれが現場を現認しようと、４人は震災から半月後に被災地を訪ね、そこで起きていることをカメラに収めた。
４人は、それぞれが心に引っかかるものを感じながらもカメラを回し続けた。
それはなぜかを問う内容となっている。
映画館で作品も観たが、そこに描かれているものは、テレビで放映された映像とは大きく異なっている。
つまり、テレビで放映されている映像は、「高性能」のフィルターで濾し取られたものにほかならない。
（「高性能」には「自主規制」というものも含まれる）
報道されていることは、被災地の現状の何分の１かのものでしかないということだ。
確かに、多くの人が目を背けたくなるような映像は、テレビには適さないかもしれない。
でも、テレビで流されている映像が被災地の「すべて」だと誤解されないためには、
このような映像作品が作られる意義はあると思う。
こういう映像に対して生理的に反発したくなる気持ちもわかるが、
後世に被災状況をより正確に伝えるためには、彼らのような仕事が必要なのではないか。
そして、こういう作品を作る彼らに決して血が通っていないわけではなく、
様々な葛藤を抱えていることもわかってくる。
しかも、このような作品を撮っても決して金もうけにはならないことを、著者の１人である森があとがきで述べている。
それでもやる、ということに対しては、確かに意見が分かれるだろう。
私はこういう態度を支持したい。
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