チョムスキーの言語論、科学観を知る上ではとても参考になる良書。
ただし生成文法に関する箇所は専門的になり、用語がわからない人が読んでも理解しづらいのでは(解説は一切ありませんので)。
感じた点ランダムに;
1.チョムスキーは数学や物理学は単純な現象だけしか扱わず、複雑なものは他の分野に任せてしまうと言っているが、宇宙やミクロの世界などの複雑な世界は物理学が研究していると思うのだが。
2.チョムスキーは博士論文はあまり難しいテーマを選ばないようにするべきだと述べている。特に極小主義に関しては複雑すぎて無理だろう(つまりあきらめなさい)と述べている。研究にチャレンジは必要なのでは?チョムスキー自身、複雑な問題は避けるようにしているみたいなことを言っているのだが。
3.初期ではチョムスキーはヘブライ語の分析をしているが、母語話者にそのつど確認しなければならない面倒くささがあり、結局英語の分析に変更してしまった。自分では他の言語を学んで研究しようとしない。他の学者に他の言語の研究を任せる。ちょっと怠惰?あるいはアメリカ式プラグマティズム?元祖生成文法のチョムスキーが他の外国語がわからないなら、やはり生成文法は英語分析に他なるまい。
4.パラメータと原理は説明的妥当性と記述的妥当性のパラドックスを解決するために生まれたみたいなことが言われているが、要は英語の生成文法を他国語に適用できないためにこじつけた仮説。遺伝的成分に影響を及ぼさない、言語獲得に過重な負担を課さないという要因がパラメータにあるとのこと。でも証拠はない。
5.前から思っていたのだが、θ理論ってハリデーの機能文法のパクリ?目標点とか起点とか。役割と聞くとどうしても機能文法を連想してしまう。でもPROとt痕跡の違いをθ規準から説明できることからやはり異なるのだろう。
6.「中国語のWH移動」とは?中国語と英語はパラメータ値が同じ??
7.可能世界意味論の「ニクソン」の例はわかりやすくて興味深かった。
8.チョムスキーは経済学に関しては誤解だらけ。
チョムスキーといえば博学の印象があったが、チョムスキーでも知らないことが多く(人間なんだから当たり前か)、また興味の無いことには労力を費やさない姿勢があること、誤解していることも多いことが本書を読んでみてわかった。
本書を読む前に生成文法の基礎を学んでおいた方がよいかも。
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生成文法の企て 単行本 – 2003/11/27
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チョムスキーによる科学・言語論の決定版
- 本の長さ399ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2003/11/27
- ISBN-104000236385
- ISBN-13978-4000236386
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内容(「MARC」データベースより)
知の巨人が自らの科学観と言語観を率直かつ詳細に語る。原理・パラメータモデルが誕生しつつある、1979~80年にかけて行われたインタビューと、極小主義の本格化を経て2002年秋に行われたインタビューを併せて収録。
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2003/11/27)
- 発売日 : 2003/11/27
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 399ページ
- ISBN-10 : 4000236385
- ISBN-13 : 978-4000236386
- Amazon 売れ筋ランキング: - 383,314位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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上位レビュー、対象国: 日本
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2015年1月15日に日本でレビュー済み
2018年8月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「人間の言語習得は知性の獲得を証明するものではなく、単に種の進化の延長であるーー。」
はじめてこの考え方に触れたとき、正直なところ拒絶の感情を抱いた。
言語の獲得。これこそ人類が手に入れた最も価値ある道具であり、およそ人間が産み出したあらゆる文化・技術の成立の基盤にあって、いまや現代社会を支える最たるもの。私の言語観とはこのようなものだった。
しかしチョムスキーの主張は違った。言語はあくまで進化の過程で生まれ出でた産物にすぎぬという。言語の獲得は人類の不断の努力によってもたらされた成果などでは決してなく、そもそも新人に遍くプログラミングされた潜在的なものであるらしい。いわゆる普遍文法と呼ばれる概念である。
生成文法の面白さは、全人類に共通の言語能力が脳内に存在し(普遍文法)、個別の言語の獲得に際しては個別言語の言語構造に対応しながら脳内の言語能力が生成されたもの(生成文法)、という考え方をするところにあろう。これは非常に独特であるように思われた。と同時に、心理学界における遺伝主義、生得論に通じるところがあるようにも思われた。
当初は相容れぬと切り捨てた生成文法も、学部で心理学に出会い、精神分析学を学ぶうちに馴染みやすくなってきた。
今はまだこの理論の多くを知らないが、自身の学問探究の深化に繋がればと思っている。
はじめてこの考え方に触れたとき、正直なところ拒絶の感情を抱いた。
言語の獲得。これこそ人類が手に入れた最も価値ある道具であり、およそ人間が産み出したあらゆる文化・技術の成立の基盤にあって、いまや現代社会を支える最たるもの。私の言語観とはこのようなものだった。
しかしチョムスキーの主張は違った。言語はあくまで進化の過程で生まれ出でた産物にすぎぬという。言語の獲得は人類の不断の努力によってもたらされた成果などでは決してなく、そもそも新人に遍くプログラミングされた潜在的なものであるらしい。いわゆる普遍文法と呼ばれる概念である。
生成文法の面白さは、全人類に共通の言語能力が脳内に存在し(普遍文法)、個別の言語の獲得に際しては個別言語の言語構造に対応しながら脳内の言語能力が生成されたもの(生成文法)、という考え方をするところにあろう。これは非常に独特であるように思われた。と同時に、心理学界における遺伝主義、生得論に通じるところがあるようにも思われた。
当初は相容れぬと切り捨てた生成文法も、学部で心理学に出会い、精神分析学を学ぶうちに馴染みやすくなってきた。
今はまだこの理論の多くを知らないが、自身の学問探究の深化に繋がればと思っている。
2015年2月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
自分には難しい内容だった。自分の理解力のなさを実感、トホホです。
2013年6月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
同時に何冊かのチョムスキーの本を読みながら理解するとわかりやすいと思います。
2005年7月31日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
チョムスキーの難解な体系をある程度以上理解するためには必読の書。
むろんとうてい易しいとはいえない内容で、言語学以外の幅広い分野にまで内容は及んでいる。しかし真に生成文法という壮大な体系を理解するためには本書はさけて通れない。じっくりと時間をかけてひもとき、理解していくことが望まれる。
訳者の注だけでも大変読み応えがあり、普段生成文法に非常に批判的な先生の口からも「絶対いい本だ」と言わせた名著である。
むろんとうてい易しいとはいえない内容で、言語学以外の幅広い分野にまで内容は及んでいる。しかし真に生成文法という壮大な体系を理解するためには本書はさけて通れない。じっくりと時間をかけてひもとき、理解していくことが望まれる。
訳者の注だけでも大変読み応えがあり、普段生成文法に非常に批判的な先生の口からも「絶対いい本だ」と言わせた名著である。
2018年2月19日に日本でレビュー済み
チョムスキーのインタビュー集。「どのようなアプローチであっても、『言語とは何か?』という問いに対する答えは明確であるべき(『ソフィアレクチャーズ』より抜粋)」という御大の言葉通り、本書からは「なぜ生成文法なのか?」という、生成文法、ひいては御大のイデオロギーを、広い知的分脈から伺い知ることができる。
言語と数学に共通して存在する「離散無限性」から、生成文法は数学的に啓発された理論であることは理解できるが、それと同時に、『純粋理性批判』の項831「数学での成功による理性の錯覚」や834「哲学と数学の違いー形式の違い」が思い起こされる。数学と言語を御大がどれほど同列に考えているかはわからなかったが、それでも「我々はひたすら間違った方向へと進んでいて、遅かれ早かれそのことが表面化して来るかも知れないという可能性は心に留めて置かなければならないと思う」という言葉からも、御大自身も生成文法に一抹の不安を抱えているのんだなと知った。
本書の内容は(私にとっては)決して平易ではないが、時間をかけて噛みしめるように読むと、読むたびにきっと何か大きなヒントが得られるように思う。私にとって初めて御大の思想に触れることができた本なので、感動が大きい。やはり御大は偉大だ。ものすごく。
言語と数学に共通して存在する「離散無限性」から、生成文法は数学的に啓発された理論であることは理解できるが、それと同時に、『純粋理性批判』の項831「数学での成功による理性の錯覚」や834「哲学と数学の違いー形式の違い」が思い起こされる。数学と言語を御大がどれほど同列に考えているかはわからなかったが、それでも「我々はひたすら間違った方向へと進んでいて、遅かれ早かれそのことが表面化して来るかも知れないという可能性は心に留めて置かなければならないと思う」という言葉からも、御大自身も生成文法に一抹の不安を抱えているのんだなと知った。
本書の内容は(私にとっては)決して平易ではないが、時間をかけて噛みしめるように読むと、読むたびにきっと何か大きなヒントが得られるように思う。私にとって初めて御大の思想に触れることができた本なので、感動が大きい。やはり御大は偉大だ。ものすごく。
2012年7月6日に日本でレビュー済み
この書はチョムスキーのインタビュー集である。
政治活動家としてのチョムスキーには、直接はほとんど触れられておらず、話題は生成文法に関するものが中心である。
以下は、チョムスキーの言葉で印象に残ったもの。
「私が色々な活動に追われすぎているため…、他のいかなる(学問)分野との交流も希薄なんです」(56頁)
「我々はひたすら間違った方向へと進んでいて、遅かれ早かれそのことが表面化してくるかも知れない」(100頁)
「(言語史の分野では)私自身の研究が、本当に信じがたいくらいに、ひどく歪められてきたんです」(115頁)
「私がやっている類いの研究は、いつでも常にこの分野のほんの一握りの人達のみが興味を持っているにすぎなかった」(125頁)
「アメリカ国内では…建設的で創造的な研究になる可能性があっても、…この分野では芽を摘まれてしまっている」(131頁)
「私が英語以外の他の言語を研究しないのは、どれ一つとしてよく知らないからなんです」(204頁)
「文法というものは実際に存在しなくてはならないんです。つまり脳の内に文法に対応する何かがなくてはならないわけです」(254頁)
「脳科学は…現段階においては一般理論の内容は乏しいですね。…脳科学が正しいものを見ているかどうかさえ誰にもわかりません」(367頁)
これほど著名な学者であっても、自分の説が誤解されていることに悩み、また自分は少数派であると述べている。
アメリカでは創造的な研究がしにくいと述べるなど、意外な主張が多々見られた。
生成文法の行く末は私にはよく分からないにしても、率直に言って、チョムスキーに対して親近感を覚えたことは確かである。
政治活動家としてのチョムスキーには、直接はほとんど触れられておらず、話題は生成文法に関するものが中心である。
以下は、チョムスキーの言葉で印象に残ったもの。
「私が色々な活動に追われすぎているため…、他のいかなる(学問)分野との交流も希薄なんです」(56頁)
「我々はひたすら間違った方向へと進んでいて、遅かれ早かれそのことが表面化してくるかも知れない」(100頁)
「(言語史の分野では)私自身の研究が、本当に信じがたいくらいに、ひどく歪められてきたんです」(115頁)
「私がやっている類いの研究は、いつでも常にこの分野のほんの一握りの人達のみが興味を持っているにすぎなかった」(125頁)
「アメリカ国内では…建設的で創造的な研究になる可能性があっても、…この分野では芽を摘まれてしまっている」(131頁)
「私が英語以外の他の言語を研究しないのは、どれ一つとしてよく知らないからなんです」(204頁)
「文法というものは実際に存在しなくてはならないんです。つまり脳の内に文法に対応する何かがなくてはならないわけです」(254頁)
「脳科学は…現段階においては一般理論の内容は乏しいですね。…脳科学が正しいものを見ているかどうかさえ誰にもわかりません」(367頁)
これほど著名な学者であっても、自分の説が誤解されていることに悩み、また自分は少数派であると述べている。
アメリカでは創造的な研究がしにくいと述べるなど、意外な主張が多々見られた。
生成文法の行く末は私にはよく分からないにしても、率直に言って、チョムスキーに対して親近感を覚えたことは確かである。
2018年7月8日に日本でレビュー済み
インタビュー集とはいえ、彼の思考を理解する上で大事な一冊。生成文法に一抹の不安を抱いているのが感じられるが、革新的なアイデアを提示する者にとっては当然のことと思われる。現実的に認知言語学の分派は彼の不安が的中した事を語っている。