カトリック修道女による禅へのいざない。キリスト教徒が自己の宗教生活に禅を取り入れるとはいかなることか、という主題のもと色々な事が述べられている。彼らにとって禅とは、キリスト教と横並びにされるような「宗教」ではなく、むしろ自己の宗教性を磨くためのスピリチュアルな技法のようなもの。特に、神と自己とが一体化する「祈り」の一種として、禅は高く評価されている。神の光に照らされて、自己の本質を見極めつつ自己から自由になる。その自由の道に生きるための方法として、この東洋的な瞑想法は実に有益であると認められているわけだ。ちなみに、このような東洋文化への好意的なまなざしは、第二次ヴァチカン公会議以降に顕著になった、諸文化融和的なカトリックの宣教思想を背景としている。
著者は、ヴァイオリニストでもあるカナダ人修道女で、鎌倉の三雲禅堂（三宝教団の修行場）で禅を習得し、現在、英国の監獄で囚人たちに禅・瞑想の指導を行っているという特異なプロフィールの持ち主。その様々な体験から導き出された見解には、なるほどと思わせるものが少なくない。比較宗教学等に関心のある読者の一人として、神への信仰と仏になるための道との関係性を論じる彼女の語りは非常に興味深い。ただし、単に「座禅」の技術や効用を学びたい向きには、やや話が込み入りすぎているので、あまりすすめない。少し変化球的な「禅入門」として読まれるのが、よろしいかと思う。
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