著者の本は、この1冊しか読んでいないが、哲学不毛の国日本にこのような思想家がいることに驚かされる。
この本の内容は割愛するが、内容の秀逸さは、実際にこの本を読まなければわからない。
この本の内容の検証は後世にゆだねられるが、考察の深さに感服した。「いやはや、これは参った」と言うのが感想だ。
著者の思想は、哲学不毛の国日本よりも、外国で、より高く評価されるのではないか。
マルクスの資本論が、現在でも、世界中で引用されるのは、現実の資本主義経済の理解に役立つからである。誰もが資本論を読み、その内容に賛成するにしろ、批判するにしろ、深く考えることができる。
優れた書物は、後世に生き続ける。この本もそのひとつだろう。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
世界史の構造 (岩波現代文庫 文芸 323) 単行本 – 2010/6/25
柄谷 行人
(著)
資本=ネーション=国家が世界を覆い尽くした現在、私たちはどんな未来も構想し得ないでいる。しかし本書は、世界史を交換様式の観点から根本的にとらえ直し、人類社会の秘められた次元を浮かび上がらせることで、私たちの前に未来に対する想像力と実践の領域を切り開いて見せた。『トランスクリティーク』以後十余年の思索の到達点。
- 本の長さ528ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2010/6/25
- 寸法13.5 x 4 x 19.5 cm
- ISBN-104000236938
- ISBN-13978-4000236935
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
著者について
柄谷行人(からたに こうじん)
1941年生まれ.評論家.
著作としては,『定本 柄谷行人集』(全5巻,岩波書店),Transcritique : On Kant and Marx(The MIT Press),『世界共和国へ――資本=ネーション=国家を超えて』(岩波新書)など多数ある.
1941年生まれ.評論家.
著作としては,『定本 柄谷行人集』(全5巻,岩波書店),Transcritique : On Kant and Marx(The MIT Press),『世界共和国へ――資本=ネーション=国家を超えて』(岩波新書)など多数ある.
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2010/6/25)
- 発売日 : 2010/6/25
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 528ページ
- ISBN-10 : 4000236938
- ISBN-13 : 978-4000236935
- 寸法 : 13.5 x 4 x 19.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 222,169位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
1941年生まれ。評論家 (「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 世界史の構造 (ISBN-13: 978-4000236935 )』が刊行された当時に掲載されていたものです。)
カスタマーレビュー
星5つ中4.2つ
5つのうち4.2つ
全体的な星の数と星別のパーセンテージの内訳を計算するにあたり、単純平均は使用されていません。当システムでは、レビューがどの程度新しいか、レビュー担当者がAmazonで購入したかどうかなど、特定の要素をより重視しています。 詳細はこちら
157グローバルレーティング
虚偽のレビューは一切容認しません
私たちの目標は、すべてのレビューを信頼性の高い、有益なものにすることです。だからこそ、私たちはテクノロジーと人間の調査員の両方を活用して、お客様が偽のレビューを見る前にブロックしています。 詳細はこちら
コミュニティガイドラインに違反するAmazonアカウントはブロックされます。また、レビューを購入した出品者をブロックし、そのようなレビューを投稿した当事者に対して法的措置を取ります。 報告方法について学ぶ
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2010年10月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
とても、面白く読め、刺激的でもありました。
「トランスクリティーク」よりずっと読みやすいとおもいます。
4種の交換形態と、資本・国家・ネーションの関連、そしてアソ
シエーション・・・と、なじみのテーマを勿論扱っているわけですが、
今回は序文で著者も語っているように、意識的に体系的な構成に
なっています。
分厚くはありますが、キーになるような観点は、論じる題材に即して、
丁寧に変奏しつつ繰り返し説明されているので、ヘーゲルをよむような
身構えもいりませんし、晦渋さに辟易となるようなことはないでしょう。
世の中の「見方」ということを、あまり意識して考えたことのない方には、
とりわけ(あってるとか、間違ってるとかの議論はさておき)
ひとつの面白いスキームを提供する本となるはずです。
ただ、最終章の著者の方向性については、正直ついていけない。
著者のいう「アソシエーションを実際に運用すべく始めた実験は
あえなく頓挫しました。
結局、「組織的な技術論の問題があっただけで、原理論的には問題なし」と
総括したんでしょうか?
そのころとあまりかわり映えしないように思いました。
「アソシエーション」は理念型だからいいとして、国連が殆ど国を超える審級として
機能も信じられもしてない現在、いくら突破口がそこにしかないからとはいえ、
「超越論的X」だの「他者」だのと、むりむりカントの永久平和にジョイントし、
錦の御旗を織り上げ、ありもしない活路がまさに現在ないがゆえに、逆に思念し
続けることこそに活路がある、という倒錯的な態度を提示してみせる。
やはり、ついていけないです。
しかも、その実現には1国だけがやってもだめで「セカイドウジカクメイ」が必要ナノダ・・・。
エッ?それ、どっかで読んだことあります。
たしか、昔、ヘルメット姿のお兄ちゃん達の間でブームになったオマジナイだった気がします。
「トランスクリティーク」よりずっと読みやすいとおもいます。
4種の交換形態と、資本・国家・ネーションの関連、そしてアソ
シエーション・・・と、なじみのテーマを勿論扱っているわけですが、
今回は序文で著者も語っているように、意識的に体系的な構成に
なっています。
分厚くはありますが、キーになるような観点は、論じる題材に即して、
丁寧に変奏しつつ繰り返し説明されているので、ヘーゲルをよむような
身構えもいりませんし、晦渋さに辟易となるようなことはないでしょう。
世の中の「見方」ということを、あまり意識して考えたことのない方には、
とりわけ(あってるとか、間違ってるとかの議論はさておき)
ひとつの面白いスキームを提供する本となるはずです。
ただ、最終章の著者の方向性については、正直ついていけない。
著者のいう「アソシエーションを実際に運用すべく始めた実験は
あえなく頓挫しました。
結局、「組織的な技術論の問題があっただけで、原理論的には問題なし」と
総括したんでしょうか?
そのころとあまりかわり映えしないように思いました。
「アソシエーション」は理念型だからいいとして、国連が殆ど国を超える審級として
機能も信じられもしてない現在、いくら突破口がそこにしかないからとはいえ、
「超越論的X」だの「他者」だのと、むりむりカントの永久平和にジョイントし、
錦の御旗を織り上げ、ありもしない活路がまさに現在ないがゆえに、逆に思念し
続けることこそに活路がある、という倒錯的な態度を提示してみせる。
やはり、ついていけないです。
しかも、その実現には1国だけがやってもだめで「セカイドウジカクメイ」が必要ナノダ・・・。
エッ?それ、どっかで読んだことあります。
たしか、昔、ヘルメット姿のお兄ちゃん達の間でブームになったオマジナイだった気がします。
2023年3月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
交換様式Dは予言通りに行かない。
それは、諸国家連邦が出来てからでもない。
それは敗戦時の日本の天皇制を転覆させた力ではなく
ITやAIが世界の下々に行き渡る
人類電脳時代に突入してからの個々の力の連帯による。
WEBで自分の祖国が虐げられた歴史を知って
テロが発生したように
世の不正義であることへの意識が
世界で人々に共有される時に
交換様式D”(あくまでダッシュ)への火蓋がじりじりと切られる。
アジアの超大国がIT技術を駆使して
全人類の能力を最大限発揮させる環境整備のため、
異常な富の偏在を修正し、
人類の危機を救おう、全人類の福利厚生を図ろう、
とかいうビジョンを掲げられれば
世界を覆うことができるが、
志の高い国家や政治家はいない。
現体制が独占する富を不平等と考える人々が
今後も世界中で増加し続ける。
現体制は不正義と感じる人々が大多数になった時、
誰が不正義側の傭兵として(命を張って)現体制を維持するか?
その前にテクノロジーによる富の再配分が実現するだろうか?
遵法の歴史が浅い国は交換様式の変更は実現されやすい。
イギリスが交換様式D”に抵抗する最後の国家になると予想する。
それは、諸国家連邦が出来てからでもない。
それは敗戦時の日本の天皇制を転覆させた力ではなく
ITやAIが世界の下々に行き渡る
人類電脳時代に突入してからの個々の力の連帯による。
WEBで自分の祖国が虐げられた歴史を知って
テロが発生したように
世の不正義であることへの意識が
世界で人々に共有される時に
交換様式D”(あくまでダッシュ)への火蓋がじりじりと切られる。
アジアの超大国がIT技術を駆使して
全人類の能力を最大限発揮させる環境整備のため、
異常な富の偏在を修正し、
人類の危機を救おう、全人類の福利厚生を図ろう、
とかいうビジョンを掲げられれば
世界を覆うことができるが、
志の高い国家や政治家はいない。
現体制が独占する富を不平等と考える人々が
今後も世界中で増加し続ける。
現体制は不正義と感じる人々が大多数になった時、
誰が不正義側の傭兵として(命を張って)現体制を維持するか?
その前にテクノロジーによる富の再配分が実現するだろうか?
遵法の歴史が浅い国は交換様式の変更は実現されやすい。
イギリスが交換様式D”に抵抗する最後の国家になると予想する。
2022年6月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
交換様式を下部構造と捉え、それに規定される上部構造との連環する関係を歴史的に読み解いている本です。経済学、社会学、歴史学などの基本になる考え方を提示しています。文章が読みやすく、高度な内容が解りやすく書かれています。いわゆる学問に役立つだけでなく、福祉や介護など、現代の問題を考える際にも、押さえておくべき考え方を知ることができます。
2021年3月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書で著者が目指すのは:歴史学者が扱う世界史ではなく、複数の基礎的な交換様式の連関を構造論的に明らかにすること。それは世界史に起こった3つの交換様式=A: 互酬(部族社会などでの贈与と返礼)、B: 従属的(階級社会での略奪と再配分、C: 資本制社会(貨幣と商品)、 を構造論的に明らかにすること、だそうです。更に、そのあと4つ目の移行 を本書で見出す、と。
交換様式A,B,C について、400頁を費やして多くが語られます: 国家の起源、貨幣の力、ギリシャ文明、イスラム教、世界帝国、ブッダ、マルクス、カント、資本主義、ニーチェ、ヘーゲル、プルードン、ラッサール、等等。そして、それらが語られたあとの結論となる交換様式のDは:諸国家連邦が出来て交換様式Aの高次元での回復、 だそうです。著者は国際連合(本来の訳語は連合国=日本は敵国となっております)に大いに期待しているようです。しかし、いま漸く「国連」は日本人にもその実態が判ってきて、加盟国の利害がひたすら絡み合う修羅場(?)で、多額の分担金を払い長い間ナイーブに信用・信頼して来たのは日本だけのようです。それで、著者は結論として交換様式A=(互酬原理)にもとづく世界システム が出来るべきだ、創るべきだ、と述べますが、どうも現実とかなりかけ離れたご意見と思います。著者の広範な深い知識には敬服いたしますが、期待して時間をかけて読んだ割には結論に至ってなにかはぐらかされた感じ、が正直な読後感です。
交換様式A,B,C について、400頁を費やして多くが語られます: 国家の起源、貨幣の力、ギリシャ文明、イスラム教、世界帝国、ブッダ、マルクス、カント、資本主義、ニーチェ、ヘーゲル、プルードン、ラッサール、等等。そして、それらが語られたあとの結論となる交換様式のDは:諸国家連邦が出来て交換様式Aの高次元での回復、 だそうです。著者は国際連合(本来の訳語は連合国=日本は敵国となっております)に大いに期待しているようです。しかし、いま漸く「国連」は日本人にもその実態が判ってきて、加盟国の利害がひたすら絡み合う修羅場(?)で、多額の分担金を払い長い間ナイーブに信用・信頼して来たのは日本だけのようです。それで、著者は結論として交換様式A=(互酬原理)にもとづく世界システム が出来るべきだ、創るべきだ、と述べますが、どうも現実とかなりかけ離れたご意見と思います。著者の広範な深い知識には敬服いたしますが、期待して時間をかけて読んだ割には結論に至ってなにかはぐらかされた感じ、が正直な読後感です。
2010年7月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
世界同時革命というヴィジョンをカントが持っていたということに思い至るときにカントとマルクスとは思いもかけずに際会すると柄谷は言う(xviii)。
マルクスのヴィジョンには疑問があるにしても(後述)、ヘーゲルを事前(xiii)の思想として読み直したと考えれば興味がわく。
『世界共和国へ』の拡大版でもあるが、atでの論考、定本4,5巻が投入され、より『トランスクリティーク』の続篇の色彩が強い。普遍宗教に関してはより詳細な記述となった。
ヘーゲルの『歴史哲学』のトリアーデと比較すべきなのだが、柄谷の場合その四象限を駆使した構成は、完全に脱神秘主義的である。
ただ、マルクスをここまで擁護する必要はあるのか?とプルードンのマルクスへの手紙(本書361頁)を読みながらやはり思う。
確かにプルードンの認識は甘かったかも知れないが、それはゲゼルによって改訂されたのであってマルクスの批判は政治主義を出ていない。
ちなみに、プルードンの晩年は国際政治論に費やされており、複数の国家のレベルを彼が意識していたことは明白だ。
結局ウェーバーや文化人類学者の非マルクス主義的言説でマルクスを補強しているかに見えながら、本書において柄谷は実はカントによってマルクスを乗り越えているのである。
(主に第一部で国家に抗する氏族社会の可能性を現代的に読み直し、主にフロイトを援用した点は評価できる。)
しかしながら、マルクスをカントによって改訂するというような面倒な作業はやめて、単にプルードンの認識に還るべきなのだ。以下のプルードンの言葉が冒頭に掲げられるべきだ。
「政治機能は産業機能に還元される、社会秩序はたんに交換という事実にのみ由来する」(「連合の原理」、定本『トランスクリティーク』274頁より)
さて、本書の構成は序論(43頁)で説明されたように、以下の四象限図(15頁)にもとづいており(自由と平等のパラメータは評者が付記した)、
B |A
国家 |ネーション
___|_____ (平等)
C |D
資本 | X
|
(自由)
章タイトルを付記すると以下のようになる(大枠は逆コの字に進むが、章はB→C→A→DとNの鏡文字風に進む)。
_______________________
| | | | (氏族 |
| 1国家 |3世界帝国|1定住革命| 社会)|
| 第二部 | 第一部 |
|___世界=帝国___|__ミニ世界システム_|
| (B) | (A) |
| | |2 |序説 |
|2世界貨幣|4普遍宗教|贈与と呪術|交換様式論|
|_____|_____|_____|_____|
| |3 | | |
|1近代国家|ネーション| | |
| 第三部 | 第四部 |
|_近代世界システム__|___現在と未来___|
| (C)4 |1 (D) 2 |
|2産業資本|アソシエー|世界資本主|世界 |
| |ショニズム|義の段階と|共和国へ |
|_____|_____|反復___|_____|
ちなみに以下のボロメオの環(330頁。上図に対応させるため90度回転したうえで改変)を念頭に置く
とよい(こうすると上記全体構成においてB→C→A→Dと章が進む順序が納得できる)。
B
(国家)
悟性
|\
| \ A
| /|想像力(ネーション)
|/ |
感性 X
(資本)
C D
(これはヘーゲルのトリアーデそのものであるが、柄谷はXというオルタナティブを措定する。)
さて本書を通読すると分かるが、A〜Dそれぞれにアンチノミー(周知のようにカントのアンチノミーもカテゴリーごとに四種ある)があり解決されないと考えるべきだろう。
「権威と自由」がネーションや平等によって解決しないように(参照:『プルードン3』377頁、『トランスクリティーク』275頁)。
アンチノミーの認識こそが交換の基礎なのではないだろうか?
追記:
東洋に関する記述が普遍宗教以外に増えたらいいと思うのだが、、、 例えば、231頁以下の老子に関する記述により、道教をアナキズムと考える見方に理論的歴史的基礎ができたと言ってもよい。
(これまでプルードン=社会革命を擁護する立場から辛口に書いて来たが、客観的に見て)本書にはこうした達見が満ち満ちている。
本書は文化史的には『アンチ・オイディプス』以来のスケールの大きな作品であり(世界同時革命は器官なき身体にあたるだろう)、人類は本書によってやっとヘーゲル歴史哲学のオルタナティブを手に入れたと思う。
また、交換から移動へのタームの重点の変化が特筆すべきだとも思う。
補足:
アジールに関する部分以外に(参照: The Structure of World History: From Modes of Production to Modes of Exchange )、文庫版『世界史の構造』は、ギリシア(文庫版177‾189頁)に関する部分も全面的に改稿、追記されている。
アーレントの引用(181頁)など、全体の主題と重なるし、『哲学の起源』の要約的な箇所もある。
個人的には179頁の緩やかな連合体の象徴としてオリンピアの競技会を挙げたのが印象的だった。
この部分だけでも文庫版購入の価値はある。
マルクスのヴィジョンには疑問があるにしても(後述)、ヘーゲルを事前(xiii)の思想として読み直したと考えれば興味がわく。
『世界共和国へ』の拡大版でもあるが、atでの論考、定本4,5巻が投入され、より『トランスクリティーク』の続篇の色彩が強い。普遍宗教に関してはより詳細な記述となった。
ヘーゲルの『歴史哲学』のトリアーデと比較すべきなのだが、柄谷の場合その四象限を駆使した構成は、完全に脱神秘主義的である。
ただ、マルクスをここまで擁護する必要はあるのか?とプルードンのマルクスへの手紙(本書361頁)を読みながらやはり思う。
確かにプルードンの認識は甘かったかも知れないが、それはゲゼルによって改訂されたのであってマルクスの批判は政治主義を出ていない。
ちなみに、プルードンの晩年は国際政治論に費やされており、複数の国家のレベルを彼が意識していたことは明白だ。
結局ウェーバーや文化人類学者の非マルクス主義的言説でマルクスを補強しているかに見えながら、本書において柄谷は実はカントによってマルクスを乗り越えているのである。
(主に第一部で国家に抗する氏族社会の可能性を現代的に読み直し、主にフロイトを援用した点は評価できる。)
しかしながら、マルクスをカントによって改訂するというような面倒な作業はやめて、単にプルードンの認識に還るべきなのだ。以下のプルードンの言葉が冒頭に掲げられるべきだ。
「政治機能は産業機能に還元される、社会秩序はたんに交換という事実にのみ由来する」(「連合の原理」、定本『トランスクリティーク』274頁より)
さて、本書の構成は序論(43頁)で説明されたように、以下の四象限図(15頁)にもとづいており(自由と平等のパラメータは評者が付記した)、
B |A
国家 |ネーション
___|_____ (平等)
C |D
資本 | X
|
(自由)
章タイトルを付記すると以下のようになる(大枠は逆コの字に進むが、章はB→C→A→DとNの鏡文字風に進む)。
_______________________
| | | | (氏族 |
| 1国家 |3世界帝国|1定住革命| 社会)|
| 第二部 | 第一部 |
|___世界=帝国___|__ミニ世界システム_|
| (B) | (A) |
| | |2 |序説 |
|2世界貨幣|4普遍宗教|贈与と呪術|交換様式論|
|_____|_____|_____|_____|
| |3 | | |
|1近代国家|ネーション| | |
| 第三部 | 第四部 |
|_近代世界システム__|___現在と未来___|
| (C)4 |1 (D) 2 |
|2産業資本|アソシエー|世界資本主|世界 |
| |ショニズム|義の段階と|共和国へ |
|_____|_____|反復___|_____|
ちなみに以下のボロメオの環(330頁。上図に対応させるため90度回転したうえで改変)を念頭に置く
とよい(こうすると上記全体構成においてB→C→A→Dと章が進む順序が納得できる)。
B
(国家)
悟性
|\
| \ A
| /|想像力(ネーション)
|/ |
感性 X
(資本)
C D
(これはヘーゲルのトリアーデそのものであるが、柄谷はXというオルタナティブを措定する。)
さて本書を通読すると分かるが、A〜Dそれぞれにアンチノミー(周知のようにカントのアンチノミーもカテゴリーごとに四種ある)があり解決されないと考えるべきだろう。
「権威と自由」がネーションや平等によって解決しないように(参照:『プルードン3』377頁、『トランスクリティーク』275頁)。
アンチノミーの認識こそが交換の基礎なのではないだろうか?
追記:
東洋に関する記述が普遍宗教以外に増えたらいいと思うのだが、、、 例えば、231頁以下の老子に関する記述により、道教をアナキズムと考える見方に理論的歴史的基礎ができたと言ってもよい。
(これまでプルードン=社会革命を擁護する立場から辛口に書いて来たが、客観的に見て)本書にはこうした達見が満ち満ちている。
本書は文化史的には『アンチ・オイディプス』以来のスケールの大きな作品であり(世界同時革命は器官なき身体にあたるだろう)、人類は本書によってやっとヘーゲル歴史哲学のオルタナティブを手に入れたと思う。
また、交換から移動へのタームの重点の変化が特筆すべきだとも思う。
補足:
アジールに関する部分以外に(参照: The Structure of World History: From Modes of Production to Modes of Exchange )、文庫版『世界史の構造』は、ギリシア(文庫版177‾189頁)に関する部分も全面的に改稿、追記されている。
アーレントの引用(181頁)など、全体の主題と重なるし、『哲学の起源』の要約的な箇所もある。
個人的には179頁の緩やかな連合体の象徴としてオリンピアの競技会を挙げたのが印象的だった。
この部分だけでも文庫版購入の価値はある。
2023年6月3日に日本でレビュー済み
恐ろしいほどの知識と説明への情熱というべきか。
この論が正しいとかではなく、その静かな継続する情熱に敬意をはらいたい。
逆に、序文にある、「マルクスをカントから読み、カントをマルクスから読む」と同時にヘーゲルを、その前後に立つ思想家から読む。結果として新たなヘーゲル批判を試みることになると。結果として、マルクスによるヘーゲル批判をやり直すことになっている。
がゆえに、上記の哲学者たちとの柄谷行人との思想格闘を、見物することになった。これは実に面白い。脳味噌から汁が出てしまうかもしれない。好きな方にはおすすめである。
この論が正しいとかではなく、その静かな継続する情熱に敬意をはらいたい。
逆に、序文にある、「マルクスをカントから読み、カントをマルクスから読む」と同時にヘーゲルを、その前後に立つ思想家から読む。結果として新たなヘーゲル批判を試みることになると。結果として、マルクスによるヘーゲル批判をやり直すことになっている。
がゆえに、上記の哲学者たちとの柄谷行人との思想格闘を、見物することになった。これは実に面白い。脳味噌から汁が出てしまうかもしれない。好きな方にはおすすめである。
2020年3月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
これからの時代の展開をしっかり把握することができました。若い頃「マルクス」に展望を持ち、「マルクス」に限界と絶望をした世代にとってはポジティブで真摯な学び直しになります。あと何年生きるかわかりませんが、世界と時代の流れを見てしっかり生きていきたいものです。