本書は、著者が、1973年から1999年の間に発表したものを集めた論文集である。
本書の原題である「歴史的存在論（historical ontology）」は、フーコーの論文「啓蒙とは何か」によるものである。それによれば、歴史的存在論は「知と権力と道徳からなる枢軸」を考察の対象とするものである。もっとも、フーコーは「それを通じてわれわれが自分自身を知の対象として作り上げる真理」、あるいは「それを通じて主体として作り上げるところの権力」、「それを通じて道徳的な行為者として作り上げる道徳」というように、われわれが我々自身をいかに「作り上げる」のかというプロセスに関心を集中させたが、ハッキングは、この「作り上げ」をより一般化し、さまざまな「作り上げ」の多様性を考察しようとする。それは、＜名づけ＞というわれわれの営みがその対象といかなる相互作用を及ぼしうるのかという問題に関心を持つ「動的唯名論者」の立場である。
本書は、以上のような問題関心から、フーコーの著作、科学史、哲学史を中心に、さまざまなトピックと取り上げてており、非常に示唆に富むものを多く含み、興味深く読める。一読を薦めたい。
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