最近の東京の景観のはずなのにどこか懐かしい情景が写し込まれています。モノクロ写真の特性かもしれませんし、カメラマンの思いがそこに凝縮されているのかもしれません。
日々移り変わる東京の中に、昭和の匂いを探しだそうと言う努力が感じられる写真集でした。
平林靖敏さんは、サンケイ新聞社のカメラマンとして36年間従事され、現在フリーカメラマンとなって活動されている方です。撮影場所と撮影年月日が写真の下に書かれていました。使用機器は書かれていませんが、中判カメラ（６×６判）で５年間かけて撮り続けられたものです。2000年1月から2005年4月の期間ですが、何十年も前から同様の景色が広がっていたことを感じさせる被写体を意図的に選んでいるからこそこのような趣きのある写真集が出来上がるのでしょう。
南品川、北品川、南千住、日本堤、東上野、佃、湊、飯田橋、早稲田、向島、上野公園、綾瀬、谷中、根津、代官山、千束、滝野川、本郷、雑司が谷、銀座などの風景が収められています。足を運び、被写体と向き合い、庶民の生活の体温が感じられる写真を撮り続けてきたのがよく分かりました。
巻末には、作家の森まゆみさんとの対談がありました。
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