原作が出版されて長い年月のあと日本語訳がでてとびつきました。
概要は知っていましたので大きく驚くことはありませんでしたが、歴史とは大いなるウソであるという「真実」を軸に回る豪華な絵巻を、どれだけその真実とウソが分ったかは別としてできるだけ丁寧に楽しみながら読みました。
ニケタスという聞き手の存在によってそのウソに読者が物差しをあてられるように組み立ててあるのだと想像しながら二人の対話にとくに気をつけて読みました。バウドリーノはかく言います。(『...ニケタス殿、あなたは、私の羊皮紙になったので、その上に私は多くのことを書きますが、すっかり忘れていたことも、手がひどりでに動いて文字になります。...」(P276)
かくして上巻は読み終え、これから下巻にとりかかります。上巻で繰り広げられたウソの絵巻がどのように読者を高次元で納得させるのか、楽しみです。なにか読んでしまうのも惜しいような気持ちもあり、まるでよいワインの瓶を前にして、「呑みたい。でも呑んでしまえばビンが空になる」というジレンマですが、読み終わってどれだけ余韻の芳香がたのしめるかが下巻の採点のポイントになります。
プライム無料体験をお試しいただけます
プライム無料体験で、この注文から無料配送特典をご利用いただけます。
非会員 | プライム会員 | |
---|---|---|
通常配送 | ¥410 - ¥450* | 無料 |
お急ぎ便 | ¥510 - ¥550 | |
お届け日時指定便 | ¥510 - ¥650 |
*Amazon.co.jp発送商品の注文額 ¥3,500以上は非会員も無料
無料体験はいつでもキャンセルできます。30日のプライム無料体験をぜひお試しください。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
バウドリーノ(上) 単行本 – 2010/11/11
{"desktop_buybox_group_1":[{"displayPrice":"¥1,980","priceAmount":1980.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"1,980","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"N1XRrLWYEo1pcRI9NEbGA%2B5KgKowAAoP%2F36WnqbtQX1lyvXVwn0hZ45GF7BWoFRaxyzs%2F4QOu30N2eaLBPlWEs8MvGvVsIoAc5tGqkcq9Z0pxSb%2BBoOigFg2IoqZ6oxwtSySyy2WaZZSk%2BRYzHpX%2BAzXoxH%2BDi3Q891Dptew1n7%2FGX05lYh9X5G9G0QGM5Wy","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"NEW","aapiBuyingOptionIndex":0}]}
購入オプションとあわせ買い
『薔薇の名前』で世界の読者を魅了したエーコが、ふたたび中世を舞台に放つ物語。時は十字軍の時代。神聖ローマ皇帝フリードリヒの養子となった農民の子バウドリーノが語りだす数奇な生涯とは……。エーコが遊びごころたっぷりに、史実と伝説と空想を織りまぜながらつむぎ出す破天荒なピカレスク・ロマン。話題のベストセラーがついに登場!(全2冊)
- 本の長さ360ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2010/11/11
- 寸法13.5 x 3 x 19.5 cm
- ISBN-104000244272
- ISBN-13978-4000244275
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2010/11/11)
- 発売日 : 2010/11/11
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 360ページ
- ISBN-10 : 4000244272
- ISBN-13 : 978-4000244275
- 寸法 : 13.5 x 3 x 19.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 956,120位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 351位イタリア文学 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2013年7月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
重厚なストーリーで、西洋文化を学ばねばと思わされました。
おもしろかったです。
おもしろかったです。
2012年2月27日に日本でレビュー済み
上質な読み物。
下巻の展開が。。。
下巻の展開が。。。
2011年6月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
初期十字軍の時代を背景にした大変スケールの大きい物語、特にビザンツ帝国や十字軍の歴史、教会の歴史ついでに異端の歴史などなどを少々かじったことのある人間にとってはたまらなく、衒学的な満足感を与えてくれる。もちろん作家がウンベルト・エコだから隠されているメッセージを読み解くのも楽しい。必要があったら参考書**を傍らに置いてでも多くの読者に挑戦してもらいたい。
**お勧めは ギボン ローマ帝国衰亡史、ルネ・グルッセ 十字軍の歴史 ハンス・ヨナス グノーシスの歴史など
**お勧めは ギボン ローマ帝国衰亡史、ルネ・グルッセ 十字軍の歴史 ハンス・ヨナス グノーシスの歴史など
2011年11月1日に日本でレビュー済み
ウンベルト・エーコを読むということは
ただ活字を目で追うという行為ではない。
もちろん、本書は普通の物語として読むこともできる。
確かに『薔薇の名前』の頃よりも、
ずいぶんと明るく、読み易くはなっている。
しかし、それは難易度が下がったという意味ではない。
この実に深い深い森に足を踏み入れるには
西洋史・地理・キリスト教・言語学・伝説と
あらゆる「西欧的」教養が必要とされる。
恐らくエーコは森の奥でにやりと笑って、読者を待っている。
読書家が、真の度量を試される一冊である。
ただ活字を目で追うという行為ではない。
もちろん、本書は普通の物語として読むこともできる。
確かに『薔薇の名前』の頃よりも、
ずいぶんと明るく、読み易くはなっている。
しかし、それは難易度が下がったという意味ではない。
この実に深い深い森に足を踏み入れるには
西洋史・地理・キリスト教・言語学・伝説と
あらゆる「西欧的」教養が必要とされる。
恐らくエーコは森の奥でにやりと笑って、読者を待っている。
読書家が、真の度量を試される一冊である。
2011年1月26日に日本でレビュー済み
上巻では、フリードリヒ赤髭王とともにヨーロッパにいたパウドリーノが、司教ヨハネの国に向かって旅立つ。彼が語る旅でみたものは・・・。日本人には、デジャブを感じるかもしれない。澁澤龍彦『高丘親王航海記』のアンチポデンス。高丘親王は東から海路で、パウドリーノは西から陸路で、違う宗教でも同じ目的を目指す。エーコと澁澤が同じルーツから取りだしたものは何か。ただ、エーコは最後まで書けたが、澁澤は喉の真珠とともに旅の途中で高丘親王と心中するするしかなかった。
上巻が歴史的事実をもとに展開するのと比べて、下巻は歴史的事実のパウドリーノ的真実をから始まり、あとはめくるめく中世いや博物学の世界へ。
澁龍ファンにはにんまり、荒俣宏ファンもうなずく下巻。こんな楽しみ方をできるのは、日本人の特権です。
上巻が歴史的事実をもとに展開するのと比べて、下巻は歴史的事実のパウドリーノ的真実をから始まり、あとはめくるめく中世いや博物学の世界へ。
澁龍ファンにはにんまり、荒俣宏ファンもうなずく下巻。こんな楽しみ方をできるのは、日本人の特権です。
2011年2月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
別紙として表面に多彩な登場人物一覧、裏面に物語の舞台となる地中海周辺世界が刷られたものが挟み込まれている。時代背景はローマ帝国が東西に分裂し十字軍の遠征が数回あった頃。エーコの小説を読むのはこれが4作目。洪水の如くペダンチックな文章にも多少は慣れたのか、他の作品に見られる文体の敷居の高さはあまり感じなかった。「薔薇の名前」を読了してから幾星霜、塩野七生の一連の著作やちょっぴり哲学書の斜め読みを重ねた経験値のおかげかも知れない。本作には欄外の訳注がないので、エーコの奔放に駆使する「遊び」とか「冗談」の意味を少しでも味わうためには、共和制ローマから帝国へ移行した頃より中世までの西欧の歴史やキリスト教の神学的な知識があった方が良いと思う。荒唐無稽な珍道中としてストーリーラインを追うだけの読み方だと、それなりのページ数があるので読了は大変だろう(「フーコーの振り子」でエーコ小説デビューした私が正にそうでした)。一週間くらいかけてとうとう訳者あとがきまで読み終えた私は、この前新書で買った聖書をついに読むタイミングが到来したと思った。
2017年12月16日に日本でレビュー済み
『薔薇の名前』で知られるウンベルト・エーコ作『バウドリーノ』岩波文庫下巻では、主人公バウドリーノが遂に東方へ旅立つ。
上巻に続き、ビザンチンの歴史家ニケタスに自らの生涯を語っているバウドリーノ。
自他ともに認める嘘つきである彼(但し、町を守る為など、良かれと思っての事ではある)が語る物語は、ますます奇想天外な世界へ突入する。
アーサー王伝説でも主要なモチーフとなる「聖杯(キリスト磔刑時の血を受けた盃)」までも作り上げてしまったバウドリーノ。
この聖なる一品を伝説的な東方の君主「司祭ヨハネ」に献上するという名目で、12人の賢王を装って皆で司祭ヨハネの王国を目指すのだが・・・
犬頭人や、文庫上巻の表紙に描かれている、胴体が歩いているような人間(?)などは実際に中世の著述に東方の驚異として出てくるが、
バウドリーノもそういった存在に遭遇し、様々な冒険をしていく。果てしなく長く遠く且つ不可思議な道程を進み、遠い遠い町に滞在するバウドリーノ一行のストーリーは、
異世界が広がっていて、読んで非常に面白い内容になっている。と同時に、バウドリーノの語る驚異の世界は本当なのか?という疑問は上巻以上に生じてくるわけである。
いずれにせよ、バウドリーノが語り終わったところで、(物語中における)現実の、今の状況に引き戻されるわけだが、そこでもう一捻り、新たな驚きの物語が生じる。
このラストの辺りは、現実に起こったことなのだが、それがこれまでのバウドリーノの話とちゃんとつながっているのである。
やはりバウドリーノは本当に驚異に満ちた土地を旅してきたのだろうか・・・
『バウドリーノ』は史実、中世ヨーロッパの作品の内容、著者の創作、著者の美学・記号論学者としての学識とが絶妙に織り合わされ、
物語の中で物語が語られるという二重のフィクションの構造を持ち、且つ、普通に読んで楽しめる力作である。
上巻に続き、ビザンチンの歴史家ニケタスに自らの生涯を語っているバウドリーノ。
自他ともに認める嘘つきである彼(但し、町を守る為など、良かれと思っての事ではある)が語る物語は、ますます奇想天外な世界へ突入する。
アーサー王伝説でも主要なモチーフとなる「聖杯(キリスト磔刑時の血を受けた盃)」までも作り上げてしまったバウドリーノ。
この聖なる一品を伝説的な東方の君主「司祭ヨハネ」に献上するという名目で、12人の賢王を装って皆で司祭ヨハネの王国を目指すのだが・・・
犬頭人や、文庫上巻の表紙に描かれている、胴体が歩いているような人間(?)などは実際に中世の著述に東方の驚異として出てくるが、
バウドリーノもそういった存在に遭遇し、様々な冒険をしていく。果てしなく長く遠く且つ不可思議な道程を進み、遠い遠い町に滞在するバウドリーノ一行のストーリーは、
異世界が広がっていて、読んで非常に面白い内容になっている。と同時に、バウドリーノの語る驚異の世界は本当なのか?という疑問は上巻以上に生じてくるわけである。
いずれにせよ、バウドリーノが語り終わったところで、(物語中における)現実の、今の状況に引き戻されるわけだが、そこでもう一捻り、新たな驚きの物語が生じる。
このラストの辺りは、現実に起こったことなのだが、それがこれまでのバウドリーノの話とちゃんとつながっているのである。
やはりバウドリーノは本当に驚異に満ちた土地を旅してきたのだろうか・・・
『バウドリーノ』は史実、中世ヨーロッパの作品の内容、著者の創作、著者の美学・記号論学者としての学識とが絶妙に織り合わされ、
物語の中で物語が語られるという二重のフィクションの構造を持ち、且つ、普通に読んで楽しめる力作である。