現代文学において、極めて著名な二人の作家ポール・オースターとジョン・Ｍ・クッツェーの約4年にわたる往復書簡集。
ただし、共に愛好するサミュエル・ベケットが縁で意気投合した二人が、書籍化を前提にして書いたものである。
ポールは、タイプライターで打ったものを封書に入れてジョンに送る。ジョンは、当初はポールの伴侶シリ宛にｅメールを送り、それを渡してもらっていたが、途中からファックスに切り替える。この方法の違い、特にポールが通常の郵便を使っているために、少しだけだが時間差が発生しており、それがちょっとした面白さになっている。
話題はかなり多岐にわたる。印象に残るのは、スポーツの話題が目立つこと。特にテニスについては、詳しい。一方で、サッカーについては、やや否定的な意見である。野球やクリケット、ジョンの趣味であるもあるサイクリングにも触れられている。
政治的・社会的な話題に触れることも多い。ポールはユダヤ系だが、イスラエル政府には批判的だし、ジョンは生地が南アフリカ共和国だけあって、“差別”に敏感である。当然だが“暴力”に関しては、厳しい意見を述べている。また、ポールは映画に関連した仕事がかなりあり、嗜好としても映画好きなこともあって、映画に関する言及も多い。
年齢的には、ジョンが7歳年長だが、それをあまり感じさせられることはない。
作品の制作過程、書評に対する考え方、ファンレター、作家や編集者との付き合いなど、作家生活の“日常”も垣間見え、面白い。
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