「時間や空間は実在するのか？」、「時間に始まりや終わりはあるのか？」、「空間に端はあるのか？」、「タイムトラベルは可能か？」、「時間は過ぎ去るのか？」など、時間と空間をめぐる素朴な難問についての哲学的なエッセイである。といっても、著者は文学への造詣が深く、随所に文学作品からの引用がちりばめられ、決して堅苦しい本ではない。西欧において、ギリシャ時代以来、様々な哲学者、宗教家、科学者、文学者の苦闘の跡を、興味深いストーリーとしてまとめている。
本書には、「マクタガードによる時間の非実在性の証明」（1891年）など、あまり知られていないやや進んだトピックスも含まれている。また、多宇宙理論への哲学的な視点など、最新の物理学にも目配りされている。このように本書は、時間と空間をめぐる広範囲なテーマを網羅したユニークな本といえる。また、著者の考え方を押し付けるのではなく、様々な論者の視点を、著者の切口で整理している。
本書は、キリスト教的なバックグラウンドの下での、西欧的な時間・空間論である。欲をいえば、仏教など東洋的な視点を総合することで、より普遍的な時間・空間論になりえたのではないか、という感想を持った。
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