本書の一番大きな特徴は、東アジアという地域について、議論の土台となるデータを用いて説明を加えたことである。そのデータも、経済データに限定せず、政治、社会・文化という幅広い領域を網羅している。ネットワーク解析という手法を用いて、冷静かつ批判的な視座を提供している点も評価されるだろう。限られた体験や報道をもとに、扇情的な中国脅威論や極めて楽観的な東アジア共同体論が井戸端会議のように議論されている現在、このような企画は貴重である。
社会科学というのは、本来本書のようなデータや手法に基づいてなされるものではないのだろうか。項目によっては分析が物足りない部分や一部の図が見にくいなどの欠点はあるが、今後、東アジアを論じる場合、必携の１冊となるだろう。
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