E・H・カーは
歴史とは何か (岩波新書)
において、「歴史とは、現在と過去との対話である」と述べた。ケンブリッジでの公演を書籍化したカーの著作は、歴史について考えるのに今なお非常に役立つ古典的名著である。しかし、初版が1961年であるため表現が古く少々読みづらいところがある。
それに対し本書は、一次史料から始まる実際の歴史叙述の道筋について、そこに含まれる問題点を指摘しながら、わかりやすく解説してくれている。カーよりもより実践的な形で、現在の歴史叙述について知るのに恰好の入門書である。
1.「殺人と歴史」
本書の導入部分。1308年の異端審問の記録にある殺人事件をとりあげ、そこから本書でとりあげる諸問題について述べる。つまり、なぜわれわれはこの殺人事件に興味を持つのか?なぜ、どのようにこの殺人事件が「歴史」として取り上げられるのか?
2.「イルカの背から象牙の塔へ」
古代から近世までの歴史叙述についての章。ヘロドトス、トゥキュディデス、ジャン・ボダンなどが取り上げられる。
3.「『実際はどうであったか』――真実、資料館、古物愛好」
近代以降の歴史叙述についての章。啓蒙思想家、ギボン、ランケなどが取り上げられる。
4.「さまざまの声と沈黙」
「史料」の利用法とその問題点についての章。ノリッジ公文書館にある1625年から42年までのヤーマス議会議事録をとりあげ、そこから「史料」の諸問題について述べる。つまり、「史料」とは何か?歴史家は史料をどのように「発見」するのか?そしてそれをどのように読むのか?
5.「1000マイルの旅路」
史料にある「事実」が「歴史」へと昇華されていくプロセスについての章。前章の議事録を再びとりあげ、そこから歴史家がどのように大きな「物語」を形成するのかについて述べる。
6.「猫殺し――過去は見知らぬ国なのか?」
過去の認識論についての章。18世紀パリの印刷工の徒弟たちによる猫殺しをとりあげ、そこから歴史の連続と断絶という問題について述べる。つまり、過去の人々の考え方は我々と同じなのか否か?もし異なるのであれば、我々は過去について知ることができるのか?
7.「真実の語り」
結論の部分。歴史は何のためにあるのか?なぜ歴史は重要なのか?
本書を読んで歴史にさらに興味をったならば、本書末は読書案内があるよ。
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歴史 ― HISTORY (〈1冊でわかる〉シリーズ ― Very Short Introductions日本版) 単行本 – 2003/6/6
ジョン・H・アーノルド
(著),
新 広記
(翻訳)
歴史は面白い! 過去の探究は私たち自身を発見させ,さらに未来の新たな可能性をも切り拓いてくれる.新しい歴史学の成果を十二分にふまえ,異端審問の記録に残ったある修道僧殺しの話を皮切りに,古代から現代まで豊富な事例を引きながら,歴史とは何か,それはどう探究するのかを巧みに伝える.新時代の歴史学入門.
- 本の長さ205ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2003/6/6
- ISBN-104000268619
- ISBN-13978-4000268615
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
歴史は面白い! 過去の探究は自分自身を発見させ、未来の新たな可能性をも切り拓く。新しい歴史学の成果をふまえ、豊富な事例を引きつつ、歴史とは何か、それはどう探究するのかを巧みに伝える新時代の歴史学入門。
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2003/6/6)
- 発売日 : 2003/6/6
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 205ページ
- ISBN-10 : 4000268619
- ISBN-13 : 978-4000268615
- Amazon 売れ筋ランキング: - 198,044位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 704位歴史学 (本)
- - 40,944位ノンフィクション (本)
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トップレビュー
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2020年2月3日に日本でレビュー済み
歴史好きならこの本は、歴史学のあるべき方向へとあなたを導いてくれるでしょう。
難しい内容ではなく、興味を持って先に読み進められます。
歴史の叙述の仕方、どのように史料を読み込んでいくべきかがわかります。
巻末の参考文献にもチャレンジしましょう。
難しい内容ではなく、興味を持って先に読み進められます。
歴史の叙述の仕方、どのように史料を読み込んでいくべきかがわかります。
巻末の参考文献にもチャレンジしましょう。
2013年10月11日に日本でレビュー済み
異なる国家や民族の間で、歴史観や歴史認識を一致させることはなぜ難しいのか?
この問題を考えるヒントを得たいと思い、この本に行き当たりました。
西洋史研究の引用が多く、中世の宗教や社会問題については、正直なところ今ひとつピンとこない事例も多かったです。
しかし、歴史の考え方、歴史への接し方を理解するうえで、福井憲彦氏による巻末の解説が大変参考になりました。たしかに「歴史研究の作法」を学ぶための良書と呼ばれるにふさわしい本だと思います。
自分なりに示唆が得られたのは次の3つ。大胆に要約してみました。それぞれの観点は、たとえば日中間、日韓間における歴史認識の違いを考えるときの大前提、リテラシーと呼べるものではないかと思いました。
1.歴史(HISTORY)といったときには、「実態としての過去」と「記述としての過去」という2つの意味がある。歴史研究とは、単に「実態としての過去」を解明することではない。
2.われわれが知りうるのは現実に起こっていること、起こったことのごく一部にすぎない。したがって、歴史は「問い」を立てることにはじまる。何を問うために史料を調べるのかが先にあるということだ。
3.歴史を「問う」作業には、史料を手がかりとして「事実を確認する」作業と「事実を解釈する」作業の2つがあり、後者には「歴史」を多様な視点から眺め直してみるという意義がある。
この問題を考えるヒントを得たいと思い、この本に行き当たりました。
西洋史研究の引用が多く、中世の宗教や社会問題については、正直なところ今ひとつピンとこない事例も多かったです。
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自分なりに示唆が得られたのは次の3つ。大胆に要約してみました。それぞれの観点は、たとえば日中間、日韓間における歴史認識の違いを考えるときの大前提、リテラシーと呼べるものではないかと思いました。
1.歴史(HISTORY)といったときには、「実態としての過去」と「記述としての過去」という2つの意味がある。歴史研究とは、単に「実態としての過去」を解明することではない。
2.われわれが知りうるのは現実に起こっていること、起こったことのごく一部にすぎない。したがって、歴史は「問い」を立てることにはじまる。何を問うために史料を調べるのかが先にあるということだ。
3.歴史を「問う」作業には、史料を手がかりとして「事実を確認する」作業と「事実を解釈する」作業の2つがあり、後者には「歴史」を多様な視点から眺め直してみるという意義がある。
2006年2月1日に日本でレビュー済み
2、イルカの背から政治の塔へ
6、猫殺しー過去は見知らぬ国なのか?
好奇心そそられて買ってしまったら、歴史のレも怪しい自分にはかなりいけてた。歴史の入門書というのも買ってしまった理由。
まえがきに、歴史とは何であるか、どのようにしてそれを調査するのか、何のためにそれが存在するのかという問いに対するわたしの見解である。と書かれてるとおりの内容。
1、殺人と歴史。の読み始めは、推理小説みたいに始まったので取っ付きやすかった。
何度か読みたいと思った。
6、猫殺しー過去は見知らぬ国なのか?
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1、殺人と歴史。の読み始めは、推理小説みたいに始まったので取っ付きやすかった。
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