サッカーなんてどこが面白いんじゃろ、といつも思う。2時間もかけてホンの2点か3点しか決まらないなんてさあ。後ろの方のプレイヤーなんて歩いてるときあるじゃん。・・・なあんてこと書くとサッカーファンから罵詈雑言と必殺拳が飛んできそう。これはそういうサッカーファンに対するエーコのエッセイをもとに著者がそれを改めて記号論的に解釈しなおした本なのです。
エーコによれば、サッカーファンの行動はフロイト流の「死の本能」をなぞったもので、その点からすると戦争行為と基本的には同じなのですって。つまり「記号論的なゲリラ戦」とも解釈できるわけ。社会現象としてのサッカーファンの行動は、確かに他のスポーツファンにはあまり見られないもので、特にイタリアの場合はそれが資本や政治権力ともかなりタイトに結びついているためにいっそうコトがややこしくなるらしい。エーコはそれを笑い飛ばすがごとくに分析していて、非イタリア人は笑っちゃう。「どんなに過激であっても、日曜日のサッカーがある時にピッチを占拠しようとする革命家などいるはずはない。」エーコはそう言い切ったんだそうな。
この本のごていねいなところは記号論の基本概念や参考文献などもあとがきに詳しく記されているってことかな。だから記号論なんかどうでもっ、という人もけっこうわかった気になって読めると思います。
ところでサッカーの語源って「association football」なんだってね。これ、思いっきり皮肉よね。それから蛇足だけど著者のミドルネームは「ペリクレス」これも、なんかなあ...思わせぶり。
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エーコとサッカー (ポスト・モダンブックス) 単行本 – 2004/3/27
ピーター・トリフォナス
(著)
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なぜサッカーはあれほどまでに観衆を熱狂へと駆り立てるのか.サッカーは単なるゲームではない.生活世界の多様な意味をそこに読み取らせる文化の記号体系であり,その背後には文化産業たるメディアの介在があるのだ.記号学者エーコが文化現象としてのサッカーとサッカーをめぐる言説の解読に挑む.
- 本の長さ116ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2004/3/27
- ISBN-104000270737
- ISBN-13978-4000270731
商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
なぜサッカーはあれほど観衆を熱狂へ駆り立てるのか。サッカーは多様な意味をはらむ文化の記号体であり、背後には文化産業たるメディアの介在があるのだ。記号学者エーコが文化現象としてのサッカーの解読に挑む。
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2004/3/27)
- 発売日 : 2004/3/27
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 116ページ
- ISBN-10 : 4000270737
- ISBN-13 : 978-4000270731
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,326,430位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 283位イタリア文学研究
- - 1,048位フランス・オランダの思想
- - 2,579位西洋哲学入門
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2008年7月26日に日本でレビュー済み
「私はサッカーが嫌いだ」とほざくエーコ先生がサッカーについて触れた文章は3篇あるわけで(いずれも短篇。日本語訳なし)、それらエーコ先生のサッカーとサッカーをめぐる言説の解読に挑んだのが本書である。
どうやら運動音痴で街のサッカー少年たちからバカにされまくっていたトラウマをもつエーコの展開するサッカー論はアンチファン的かつアンチマニアック。
まがりなりにもプレーするエクスタシーの経験があればまた違った視点もあっただろうが、幸か不幸かそんな気配は微塵もなく、サッカーとサッカーを取り巻く様々なシステムにおいて今なお存在する「人々の価値観を支配する強力な原理」(だからモダンサッカーはあってもポストモダンサッカーはまだないのか?)に対して痛烈に批判を加えている。
だが、その批判の生々しさについて本書では今ひとつ迫真性が感じられなかったのは、エーコの原著そのもののせいか、はたまた訳者の問題か。いずれにせよ少々難解なコトバ使いでございました。
今福龍太センセーの名調子による解説によって理解はずいぶん助けられますが、予備知識を持ってもう一度トライしたい一冊でありますな。
どうやら運動音痴で街のサッカー少年たちからバカにされまくっていたトラウマをもつエーコの展開するサッカー論はアンチファン的かつアンチマニアック。
まがりなりにもプレーするエクスタシーの経験があればまた違った視点もあっただろうが、幸か不幸かそんな気配は微塵もなく、サッカーとサッカーを取り巻く様々なシステムにおいて今なお存在する「人々の価値観を支配する強力な原理」(だからモダンサッカーはあってもポストモダンサッカーはまだないのか?)に対して痛烈に批判を加えている。
だが、その批判の生々しさについて本書では今ひとつ迫真性が感じられなかったのは、エーコの原著そのもののせいか、はたまた訳者の問題か。いずれにせよ少々難解なコトバ使いでございました。
今福龍太センセーの名調子による解説によって理解はずいぶん助けられますが、予備知識を持ってもう一度トライしたい一冊でありますな。
2004年6月22日に日本でレビュー済み
ウンベルト・エーコのサッカー・エッセイを通して「サッカー」という記号の意味を解読する著作。エーコは「私はサッカーのファンは嫌いだ」と語り、ファンとアンチ・ファンの間のディスコミュニケーションに目を向けるが、これはエーコの国イタリアのお国柄をある程度念頭に置く必要があるだろう。ファンとアンチ・ファンに分けてサッカーが語られるほどの熱狂は日本では想像が出来ないし、かつてはイタリアにとってのサッカーに等しい存在だっただろうプロ野球は今ではスポーツのone of themである。いや、イタリアでもサッカーの価値は相対的に下がっているに違いない。皆がおしゃべりに参加しうる絶対的なスポーツが存在する時代はある意味、幸福かもしれないが、今はそんな時代ではない。人々は好きなことについて好きな人と好きな時に好きなだけ語る。時々空しくなるかもしれないが、私たちは、いつも、いつまでも無責任に好きなスポーツについて語っていたいのだ。
スポーツの楽しみ方も多様化している。コンピュータゲームによる選手育成、チーム経営シミュレーションやインターネット上の果てしない「スポーツをめぐるお喋り」についてエーコがどう語るのか是非聞いてみたいと思う。
スポーツの楽しみ方も多様化している。コンピュータゲームによる選手育成、チーム経営シミュレーションやインターネット上の果てしない「スポーツをめぐるお喋り」についてエーコがどう語るのか是非聞いてみたいと思う。