著者のKamenはとにかく猛烈に生産する人という印象で、次から次に本が出ます。
多産=低質という勝手な思い込みでしばらく手を出さずにいたのですが、
読んでびっくり、非常に良質な研究書が多いのです。
すみませんでしたKamen先生、という感じであります。
今回邦訳された本書も、Kamenの送り出した良作の内の一つに
入るものです。原著自体、コンパクトで読みやすいですが、やはり
日本語で読めるのはありがたい。個人的には、行政組織の名称にどんな
訳語があてられているか、またこれまで読んできた西語・英語研究文献の
内容と照らし合わせて理解を再確認できて、とても有用でした。
内容は、黄金時代と呼ばれる近世スペインの内情について、
従来の誤謬(とKamenが考えるもの)を修正しつつ、また未解決の問題を
きちんと提示しつつ語っていくというもの。厳選された、しかし非常に充実した
参考文献(註)がまた素晴らしい。
概説書・参考書としても、またこれから近世スペインを研究しようと言う人が
とっかかりを見つけるのにも最適だと思います。
本書に付された訳者解説も、非常に有益なものです。
多産なKamenの足取りを簡潔に整理しています。
また本書が出た後、つまり2005年から2008年までの間のKamenの動向を
押さえた箇所や、Kamen自身のバイオの紹介は非常に興味深かった。
そしてKamenの持つ強烈な修正主義的傾向を指摘する事で、本書からうまく
距離をとる一助にもなっているような気がします。
まさに凝縮の1冊。
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スペインの黄金時代 (ヨーロッパ史入門) 単行本 – 2009/1/20
- 本の長さ200ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2009/1/20
- ISBN-104000272020
- ISBN-13978-4000272025
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2009/1/20)
- 発売日 : 2009/1/20
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 200ページ
- ISBN-10 : 4000272020
- ISBN-13 : 978-4000272025
- Amazon 売れ筋ランキング: - 660,573位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,763位ヨーロッパ史一般の本
- カスタマーレビュー:
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2009年3月18日に日本でレビュー済み
近年の歴史学研究の最先端の成果をもとに、また鋭い批判的精神からスペイン黄金時代の実態を明らかにする一冊。
中世から近世、近代の第一歩を踏み出し、近代世界システムを切り開いたスペインであるが、その性質について、通説にとらわれず、本質に迫る。具体的には、「絶対王政」のありかたや異宗教間の関係、そしてなぜ宗教改革が起きなかったか、資本主義が発達しなかったか、という重大なテーマが論じられる。それは当然スペイン一国史観の枠組みを超えて重大な問題提起につながっていく。
参考文献も充実している。
中世から近世、近代の第一歩を踏み出し、近代世界システムを切り開いたスペインであるが、その性質について、通説にとらわれず、本質に迫る。具体的には、「絶対王政」のありかたや異宗教間の関係、そしてなぜ宗教改革が起きなかったか、資本主義が発達しなかったか、という重大なテーマが論じられる。それは当然スペイン一国史観の枠組みを超えて重大な問題提起につながっていく。
参考文献も充実している。
2009年3月16日に日本でレビュー済み
本書は1936年ビルマで生まれ、英国で学び、英米やカタルーニャで教鞭をとり、時事評論でも知られるスペイン近代史家が、1988年に刊行し論争を呼んだ本の2005年第二版の邦訳であり、16〜17世紀のスペイン帝国を扱っている。本書は黄金時代とスペインの語義から始まり、まず絶対王政期にも王権には常に制限が加えられており、その王国はブルボン朝まで複数の王国の同君連合体であり、国家は官僚制を発展させつつも、身分制的・地方的諸特権の制約を受けていたこと(しかも財政的理由からそれは促進されていた)が確認される。また近世スペイン帝国は、主としてハプスブルク家の王位継承によって突然出現し、人材や資金の不足は他の同君連合国からまかなわれたが、国内には反帝国感情も強く、また防衛のための戦争が頻発したことで、帝国内の反乱も招いた。スペイン衰退論も、実際には各地域・各部門ごとの大きな差異ゆえに、国家全体で論じてもあまり意味はないが、国際商業が外国人主導であったことは注目される。文化面では、中世スペインにおけるイスラーム教、キリスト教、ユダヤ教の共存が注目される(これがスペインを非西欧とする議論につながる)が、近世にはユダヤ人とイスラーム教徒は改宗か国外退去を迫られ、改宗者もしばしば異端審問にかけられた。宗教改革の不在も、一つにはこの多文化的状況から説明されうる。ただし、異端審問所も対抗宗教改革も検閲制度も、民衆生活には限定的な影響しか及ぼさなかったという。このように、著者は社会史研究の成果をもとに、制度のもつ社会的役割の過大評価を戒めながら、近世スペイン帝国を普通の西欧国家として位置づける。それは同時に、スペイン史を一国史の枠組みでとらえることへの批判でもある。通説批判が強すぎるように感じられる面もあるが、興味深い本であることは確かである。