お姫様がぷかぷか浮かんでいる表紙と、「対象年齢小学5.6年以上」に騙されてはいけません。
大人が読んでも(というより大人であるほど)、読み応えのある童話です。
表題の「かるいお姫さま」と「昼の少年と夜の少女」の二つの話が収録されています。
「かるいお姫さま」の方は、魔女に呪いをかけられて「重さ」を失ったお姫さまが、王子さまの献身的な、文字通り身を捧げる愛に救われる話です。
「昼の少年と夜の少女」は、魔女の実験(?)により、それぞれ生まれた時から、闇を全く与えられなかった少年と、逆に薄暗いランプ1つの他には、光を全く与えられなかった少女が出会い、助け合い、それぞれを閉じ込めていたものと戦い、殻を破って新しい世界に旅立つ話です。
昔話を題材にしたような話ですが、隠喩や皮肉、風刺もふんだんにあり、また、ところどころ残酷さや不気味さもある点で、大人が読んでも、というより大人が読んだ方が、より楽しめるかもしれません。
注意点としては、ところどころ、訳文が固すぎると思われる点です。
例えばこんな一節
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旅をしているあいだに、王子さまは私たちのお姫さまについての噂を耳にしました。しかし、お姫さまは魔法のとりこになっているという噂でしたので、王子さまは、自分がそのお姫さまの魅力のとりこになることはあるまいと思っていました。重さをなくしたお姫さまなんかに、何の用があるでしょう。そんなお姫さまでは、次にまた何をなくすか、わかったものではありません。今度は可視性をなくすかもしれませんし、可触性をなくすかもしれません。簡単に言うなら、目とか耳とかいった基本的感覚器官に働きかける力をすべて失い、死んでしまったか生きているかさえわからなくなるかもしれないのです。(かるいお姫さまp52)
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あるいは、こんな一節
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一人になると、少女はたいてい壁の浮き彫りをながめてすごしました。彩色をほどこしたその浮き彫りは、自然界のさまざまな力を寓意的な形によって表現したものでしたが、この世のあらゆる被造物は一つの大きな秩序に属しているわけですから、少女にもやがて、それらのあいだのつながりの一端が見えてきました。こうして少女の心にも、物事の真実の姿の影が、ひそかに忍び込んでくることになったのでした。(昼の少年と夜の少女p128)
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ところどころこんな感じですので、対象年齢の小学5・6年生でも、それなりの読書経験がなければ、チャレンジングな難しさだと思われます。
うちの場合は、実は、小学2年と幼稚園年長の夜の読み聞かせ用として購入したので、すぐに「失敗した!」と思ったのですが、意外なことに、子どもたちがはまりました。難しい言葉、例えば「可触性をなくす」を「誰も触ることができなくなる」などに読み替えて、時間をかけてなんとか読み終えました。途中、何度も「もうこの本止めて他の本にする?」と聞いても、上の子だけでなく、下の子も「もっと!」と、続けて読みたがり(でも毎晩すぐに寝てしまう)、何より親である私自身も話に引き込まれました。子どもたちがどこまで内容を理解できたかはわかりませんが、楽しい読み聞かせの時間でした。
前にも書いた通り、大人の方が楽しめる本だと思いますので、大切にとっておいて、子どもが大きくなってから本棚で「発見」して、読み返すのを期待したいと思います。
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かるいお姫さま (岩波少年文庫 (133)) 文庫 – 2005/9/17
- 本の長さ224ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2005/9/17
- ISBN-104001141337
- ISBN-13978-4001141337
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店; 改版 (2005/9/17)
- 発売日 : 2005/9/17
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 224ページ
- ISBN-10 : 4001141337
- ISBN-13 : 978-4001141337
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,012,297位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 692位岩波少年文庫
- - 1,542位こどものSF・ファンタジー
- - 10,719位英米文学研究
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2005年10月14日に日本でレビュー済み
お姫さまがただ救われる弱い存在であるだけで終わらずに、
積極的に事態の打開に向けて動いていました。
俗に言う「お転婆少女」の原型がここにあると思いました。
積極的に事態の打開に向けて動いていました。
俗に言う「お転婆少女」の原型がここにあると思いました。
2018年1月13日に日本でレビュー済み
英語版を読んだが、最初から終わりまでお姫さまとその家族(父王)のキャラの酷さがショックだった。王子がこの姫を好きになった理由も軽過ぎ。更に、度重なる夜の湖での水泳密会など、子供たちの恋のお手本にもならない。著者はキリスト教の神学者で、いろんな霊的な現実をこの童話に盛り込みたかったんだろうけれど、主人公の姫の人格の酷さのために残念なお話に感じた。マクドナルドのは、他の作品をお勧め。