主人公のキムは賢く、悪知恵も、インド人に取り入るすべも、慣習も知り尽くしている生きる力に富んだ孤児でした【もとはイギリス人でした】。19世紀末、イギリス領インドで繰り広げられたスパイ合戦に、幼いキムはスパイとして利用され取り込まれていきます。
最初は読みにくい箇所に出会うたびに読書のリズムが崩れてしまい、閉口しました。恐らく、いくつものお話の要素が含まれているため、物語がどこに着地するのかわからなかったからでしょう。本来それが物語のおもしろさなのですが・・・。
キムと出会い、いつくしみ育てていくラマ僧の大きな愛（自分は足元にも及ばない大きな愛）に感動いたしました。同時に惜しげもなくキムの教育に大金を投じる姿に驚きました。奥様もいい！パキスタン、チベットへと不安に駆られながら物語の世界をさ迷い歩き、気がつくと上下巻を2日で読み終えていました。読了後は盛りだくさんの内容に充足感を覚えました。物語はやはりいい、大好きだと再確認できました。
数年前、息子が滞在していたインドの田舎町で、文盲の人々から受けたというたくさんの良心に、私も触れたような気がしました。私が旅行者として訪れた際のインドのガイドさんの饒舌、温かさ、親密な（近い）距離の取り方もよみがえってきました。最近では失われた人の情、「徳」を積むというその「徳」について、インドの方々の間で育まれてきた宗教心、おこがましい限りですが、インドを愛してやまない作者キプリングの心のど真ん中、インドへの愛に飛び込んだ気分です。
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