始まりは堅い、かったい美文調で始まるこの物語。
財産に目が眩み自分を捨てた美女に、高等学校を中退し金貸しに身を転じた若者が復讐(?)するという話。
「愛か金か」という、とんでもなく通俗的かつ普遍的テーマを、「花○愛の劇場」なみに泥臭く展開する。
面白いのは、登場人物のキャラクターがブレブレなこと。
宮があっさり貫一を捨てたと思いきや、その後ずいぶん貫一にご執心だったり、
貫一もあれだけ宮を愛していながら、ちょっと怪しい行動があるとぶち切れて絶縁宣言したり。
金貸しに身をやつし凄惨さをにじませる若造の貫一に、やり手の美人高利貸し満枝があっさり惚れ込んだり…
(そんなイケメンなら、何で宮は貫一を捨てたんでしょう…)
「人間を写実的に描く」ことに心血を注いだ日本近代文学とは明らかに一線を画し、
場面場面の盛り上がり重視で都合良く人間を配置するあたりは、どことなく江戸の歌舞伎を想起させる。
(たとえば田山花袋『蒲団』の時雄なんかも芳子に対するスタンスがブレブレですが、あれはすごく人間臭い、リアリティのあるブレ方ですね)
ダラダラ続く小説の常として、未完とのこと。
弟子の小栗風葉が終編金色夜叉を書いたというが、どうなんでしょう。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
金色夜叉(上) (岩波文庫 緑 14-1) 文庫 – 2003/5/16
尾崎 紅葉
(著)
金の誘惑にひかれた婚約者に裏切られた主人公は,金力の鬼,金色夜叉となって社会に報復するが,心は充たされない-尾崎紅葉(1868-1903)の代表作『金色夜叉』は,毎朝の新聞の配達を待ちかねる読者の絶大な支持を受けて,明治30年1月1日から5年以上にわたって,断続的に『読売新聞』に連載された.解説=杉本秀太郎
- 本の長さ344ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2003/5/16
- ISBN-104003101413
- ISBN-13978-4003101414
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ: 1 / 1 最初に戻るページ: 1 / 1
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2003/5/16)
- 発売日 : 2003/5/16
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 344ページ
- ISBN-10 : 4003101413
- ISBN-13 : 978-4003101414
- Amazon 売れ筋ランキング: - 415,169位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと見つけたり、似たような著者を調べたり、おすすめの本を読んだりできます。
カスタマーレビュー
星5つ中3.5つ
5つのうち3.5つ
10グローバルレーティング
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
- 2015年3月9日に日本でレビュー済み上巻では最初に「金色夜叉」についてという、片岡良一氏の概観が掲載されている。紅葉最後の長編作品で、
前・中・後・続・新続編と六部からなり、それでも完結をみるに至らないで、門人風葉が終編を書き足したとある。
片岡氏によれば、当時の錯綜する明治文学界においてこの作品は社会派小説ならず新恋愛小説ならず、中途
半端な位置づけを余儀なくされた作品と評されたそうである。これはあくまで関係筋の専らの風評で、一般読者
の反応とは別物である。雅文・言行一致・欧文和訳混在の文体を用い、「金が敵の世の中」を風俗小説化した点
で好評を博した。登場人物それぞれが、それなりの言い分や道理がある、この点を踏まえればこの小説は非常
に現実的で、のちに講談調にこしらえられ、感傷的な哀調子のヴァイオリンで街中を流した浪花節では片付けら
れない深刻な憂鬱が全編を覆っている。
上巻は、「箕輪」の歌留多会での宮と富山銀行令息富山惟継との出会いに始まり、高利利貸し鰐淵直行の家屋
が狂女によって放火され、全焼した瓦礫を前にただ呆然と佇む貫一の場で終わっている。