『平安朝の母と子――貴族と庶民の家族生活史』(服藤早苗著、中公新書)で、立身した女が、落ちぶれた、かつての夫と再会するという『今昔物語集』の巻第三十・第五の話を知りました。話の全体が知りたくなり『今昔物語集――本朝世俗篇(下) 全現代語訳』(武石彰夫訳、講談社学術文庫)を手にし、原文を読みたくなり『今昔物語集(4)』(馬淵和夫・国東文麿・今野達校注・訳、小学館・日本古典文学全集)まで遡りました。
『今昔物語集(4)』の「巻第三十・第五 身貧男去妻成摂津守妻語」の解説の「谷崎潤一郎の『蘆刈』も本伝承に取材する」という一節に導かれ、『吉野葛・蘆刈』(谷崎潤一郎著、岩波文庫)所収の『蘆刈(あしかり)』に辿り着いた次第です。
谷崎潤一郎の『蘆刈』には、正直言って、少々がっかりさせられました。私は『今昔物語集』の巻第三十・第五を谷崎がどう料理するのかということに興味を抱いたのだが、換骨奪胎の程度が激しく、時代背景も物語展開も説話とは大きく異なっていたからです。
だからと言って、谷崎に罪はありません。『今昔物語集』の趣を追い求めた私が悪かったのです。それどころか、さすが、谷崎です。昔の物語から刺激を受けて、独特のマゾヒズム文学作品を創り上げてしまったのですから。
解説に、こうあります。「(『蘆刈』は)『大和物語』百四十八段にもとづいている。これは睦みあっていたけれど、貧しくてたちゆかなくなった夫婦が別れ別れとなり、男はひどく零落して難波の浦にわび住いし、さる高貴な人の妻となった女と再会するが、蘆刈人とおちぶれたわが身を恥じて人の家に逃げ隠れてしまったという話である。女は男の身の上をあわれみ、自分の着ていた衣を脱いで手紙と一緒に男にやったというが、谷崎の『蘆刈』は一面においてこの説話の後日談となっていることに気づかされよう」。蘆刈説話は、『大和物語』にも『今昔物語集』にも存在していたことが分かります。
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吉野葛・蘆刈 (岩波文庫 緑 55-3) 文庫 – 1986/6/16
谷崎 潤一郎
(著)
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- ISBN-104003105532
- ISBN-13978-4003105535
- 出版社岩波書店
- 発売日1986/6/16
- 言語日本語
- 寸法10.5 x 1.7 x 14.8 cm
- 本の長さ172ページ
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- 出版社 : 岩波書店 (1986/6/16)
- 発売日 : 1986/6/16
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 172ページ
- ISBN-10 : 4003105532
- ISBN-13 : 978-4003105535
- 寸法 : 10.5 x 1.7 x 14.8 cm
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5 星
遂に、谷崎潤一郎の『蘆刈』に辿り着いたが・・・
『平安朝の母と子――貴族と庶民の家族生活史』(服藤早苗著、中公新書)で、立身した女が、落ちぶれた、かつての夫と再会するという『今昔物語集』の巻第三十・第五の話を知りました。話の全体が知りたくなり『今昔物語集――本朝世俗篇(下) 全現代語訳』(武石彰夫訳、講談社学術文庫)を手にし、原文を読みたくなり『今昔物語集(4)』(馬淵和夫・国東文麿・今野達校注・訳、小学館・日本古典文学全集)まで遡りました。『今昔物語集(4)』の「巻第三十・第五 身貧男去妻成摂津守妻語」の解説の「谷崎潤一郎の『蘆刈』も本伝承に取材する」という一節に導かれ、『吉野葛・蘆刈』(谷崎潤一郎著、岩波文庫)所収の『蘆刈(あしかり)』に辿り着いた次第です。谷崎潤一郎の『蘆刈』には、正直言って、少々がっかりさせられました。私は『今昔物語集』の巻第三十・第五を谷崎がどう料理するのかということに興味を抱いたのだが、換骨奪胎の程度が激しく、時代背景も物語展開も説話とは大きく異なっていたからです。だからと言って、谷崎に罪はありません。『今昔物語集』の趣を追い求めた私が悪かったのです。それどころか、さすが、谷崎です。昔の物語から刺激を受けて、独特のマゾヒズム文学作品を創り上げてしまったのですから。解説に、こうあります。「(『蘆刈』は)『大和物語』百四十八段にもとづいている。これは睦みあっていたけれど、貧しくてたちゆかなくなった夫婦が別れ別れとなり、男はひどく零落して難波の浦にわび住いし、さる高貴な人の妻となった女と再会するが、蘆刈人とおちぶれたわが身を恥じて人の家に逃げ隠れてしまったという話である。女は男の身の上をあわれみ、自分の着ていた衣を脱いで手紙と一緒に男にやったというが、谷崎の『蘆刈』は一面においてこの説話の後日談となっていることに気づかされよう」。蘆刈説話は、『大和物語』にも『今昔物語集』にも存在していたことが分かります。
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2024年2月13日に日本でレビュー済み
『平安朝の母と子――貴族と庶民の家族生活史』(服藤早苗著、中公新書)で、立身した女が、落ちぶれた、かつての夫と再会するという『今昔物語集』の巻第三十・第五の話を知りました。話の全体が知りたくなり『今昔物語集――本朝世俗篇(下) 全現代語訳』(武石彰夫訳、講談社学術文庫)を手にし、原文を読みたくなり『今昔物語集(4)』(馬淵和夫・国東文麿・今野達校注・訳、小学館・日本古典文学全集)まで遡りました。
『今昔物語集(4)』の「巻第三十・第五 身貧男去妻成摂津守妻語」の解説の「谷崎潤一郎の『蘆刈』も本伝承に取材する」という一節に導かれ、『吉野葛・蘆刈』(谷崎潤一郎著、岩波文庫)所収の『蘆刈(あしかり)』に辿り着いた次第です。
谷崎潤一郎の『蘆刈』には、正直言って、少々がっかりさせられました。私は『今昔物語集』の巻第三十・第五を谷崎がどう料理するのかということに興味を抱いたのだが、換骨奪胎の程度が激しく、時代背景も物語展開も説話とは大きく異なっていたからです。
だからと言って、谷崎に罪はありません。『今昔物語集』の趣を追い求めた私が悪かったのです。それどころか、さすが、谷崎です。昔の物語から刺激を受けて、独特のマゾヒズム文学作品を創り上げてしまったのですから。
解説に、こうあります。「(『蘆刈』は)『大和物語』百四十八段にもとづいている。これは睦みあっていたけれど、貧しくてたちゆかなくなった夫婦が別れ別れとなり、男はひどく零落して難波の浦にわび住いし、さる高貴な人の妻となった女と再会するが、蘆刈人とおちぶれたわが身を恥じて人の家に逃げ隠れてしまったという話である。女は男の身の上をあわれみ、自分の着ていた衣を脱いで手紙と一緒に男にやったというが、谷崎の『蘆刈』は一面においてこの説話の後日談となっていることに気づかされよう」。蘆刈説話は、『大和物語』にも『今昔物語集』にも存在していたことが分かります。
『今昔物語集(4)』の「巻第三十・第五 身貧男去妻成摂津守妻語」の解説の「谷崎潤一郎の『蘆刈』も本伝承に取材する」という一節に導かれ、『吉野葛・蘆刈』(谷崎潤一郎著、岩波文庫)所収の『蘆刈(あしかり)』に辿り着いた次第です。
谷崎潤一郎の『蘆刈』には、正直言って、少々がっかりさせられました。私は『今昔物語集』の巻第三十・第五を谷崎がどう料理するのかということに興味を抱いたのだが、換骨奪胎の程度が激しく、時代背景も物語展開も説話とは大きく異なっていたからです。
だからと言って、谷崎に罪はありません。『今昔物語集』の趣を追い求めた私が悪かったのです。それどころか、さすが、谷崎です。昔の物語から刺激を受けて、独特のマゾヒズム文学作品を創り上げてしまったのですから。
解説に、こうあります。「(『蘆刈』は)『大和物語』百四十八段にもとづいている。これは睦みあっていたけれど、貧しくてたちゆかなくなった夫婦が別れ別れとなり、男はひどく零落して難波の浦にわび住いし、さる高貴な人の妻となった女と再会するが、蘆刈人とおちぶれたわが身を恥じて人の家に逃げ隠れてしまったという話である。女は男の身の上をあわれみ、自分の着ていた衣を脱いで手紙と一緒に男にやったというが、谷崎の『蘆刈』は一面においてこの説話の後日談となっていることに気づかされよう」。蘆刈説話は、『大和物語』にも『今昔物語集』にも存在していたことが分かります。
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2022年3月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
歴史小説を書くための取材で奈良吉野へ行くというお話ですが、
そこに歌舞伎の舞台であるという要素が加わって、
さらに亡き母の面影を辿るという、3重の深さを持った作品です。
以前、吉野を旅したとき、多くの天皇がここにあこがれたことが、
何となくわかるような、不思議な、落ちついた、静かな仙境のような感じ。
谷崎の小説にこのタイトルがあることは知っていましたが、
なぜか今まで読んだことはありませんでしたが、
今回、実際に自分がこの地を旅をしたことをきっかけにして、
この本を読んでみようと思い立ったのも、
何か「流れ」のようなものがあったのかも知れません。
全体を覆う、どこか夢の中のような、
幻想的な空間の中で、物語は進んでゆきます。
読むたびに様々な印象を残す、何度も読める秀作です。
そこに歌舞伎の舞台であるという要素が加わって、
さらに亡き母の面影を辿るという、3重の深さを持った作品です。
以前、吉野を旅したとき、多くの天皇がここにあこがれたことが、
何となくわかるような、不思議な、落ちついた、静かな仙境のような感じ。
谷崎の小説にこのタイトルがあることは知っていましたが、
なぜか今まで読んだことはありませんでしたが、
今回、実際に自分がこの地を旅をしたことをきっかけにして、
この本を読んでみようと思い立ったのも、
何か「流れ」のようなものがあったのかも知れません。
全体を覆う、どこか夢の中のような、
幻想的な空間の中で、物語は進んでゆきます。
読むたびに様々な印象を残す、何度も読める秀作です。
2020年9月3日に日本でレビュー済み
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文学全集の中には無かったので、購入しました。エッセイなのですが、やはり、「良いな!」と思いました。原風景がイメージできる私たちの世代、京都は今失われていくものがあまりにも多くて、子や孫に伝え、
なんとか守っていくにはどうすればと考えました。
なんとか守っていくにはどうすればと考えました。
2020年4月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
白洲正子著「かくれ里」の中の一文「吉野の川上」を読書中、明治の末期に谷崎潤一郎氏も吉野に魅せられて,自身
吉野に入り。取材し「吉野葛」を書きあげたことを知りました。然しこの本は古い時代の本であり、令和の現在でも入手可能かどうか、アマゾンで調べましたところ入手できるとわかり、早速注文した次第です。今迄朦朧としていた
南北朝の歴史をより深く知ることが出来、大変喜んでいます。有難うございました。
吉野に入り。取材し「吉野葛」を書きあげたことを知りました。然しこの本は古い時代の本であり、令和の現在でも入手可能かどうか、アマゾンで調べましたところ入手できるとわかり、早速注文した次第です。今迄朦朧としていた
南北朝の歴史をより深く知ることが出来、大変喜んでいます。有難うございました。
2009年3月5日に日本でレビュー済み
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「吉野葛」「蘆刈」共に、非常に良くできた幻想小説的な作品でした。
「吉野葛」では、主人公が取材旅行に吉野の奥に旅をします。それは同時に、同行する津村の紙すく娘への求婚の旅でもあります。
前半は非常に抒情的な紀行文のような文章ですが、後半には津村の祖母の里を探す物語であり、母親の面影を持っているであろう娘への思慕の物語でもあります。
その間に登場する吉野の歴史の物語も含めて、非常に幻想的な雰囲気で話が進みます。
歴史を遡って行く旅、それは、吉野の奥深く遡って行く旅でもあります。
「蘆刈」も、水無瀬川の景色を抒情的な文章で綴るところから始まり、洲で見知らぬ男から興味深い話を聞かされる物語です。
男の語る物語が、これが又、現実とは思えないような幻想的なものです。お遊さんに惹かれて妹と結婚しますが、姉の思いを知る妹は主人公との関係を持たず、姉であるお遊さんと主人公の中を取り持ちます。
そうした微妙な関係の三人の物語で、どこまでが真実なのか解らない幻想的な物語です。
共に、母親又は特定の女性への限りない憧れがベースになった物語です。
両短編とも、短い文章の中にしっかりと内容が収まった秀作です。
「吉野葛」では、主人公が取材旅行に吉野の奥に旅をします。それは同時に、同行する津村の紙すく娘への求婚の旅でもあります。
前半は非常に抒情的な紀行文のような文章ですが、後半には津村の祖母の里を探す物語であり、母親の面影を持っているであろう娘への思慕の物語でもあります。
その間に登場する吉野の歴史の物語も含めて、非常に幻想的な雰囲気で話が進みます。
歴史を遡って行く旅、それは、吉野の奥深く遡って行く旅でもあります。
「蘆刈」も、水無瀬川の景色を抒情的な文章で綴るところから始まり、洲で見知らぬ男から興味深い話を聞かされる物語です。
男の語る物語が、これが又、現実とは思えないような幻想的なものです。お遊さんに惹かれて妹と結婚しますが、姉の思いを知る妹は主人公との関係を持たず、姉であるお遊さんと主人公の中を取り持ちます。
そうした微妙な関係の三人の物語で、どこまでが真実なのか解らない幻想的な物語です。
共に、母親又は特定の女性への限りない憧れがベースになった物語です。
両短編とも、短い文章の中にしっかりと内容が収まった秀作です。
2017年12月4日に日本でレビュー済み
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軍国主義、プロレタリア運動、文学が時代の流れに翻弄された時代にも、一貫して「美しい日本」を描き続けた稀有な作家谷崎潤一郎。
今、これだけの美しい日本語を操れる作家がいるでしょうか?ひと言ひと言、研ぎ澄まされた日本語を楽しみながら読む小説です。
今、これだけの美しい日本語を操れる作家がいるでしょうか?ひと言ひと言、研ぎ澄まされた日本語を楽しみながら読む小説です。
2017年6月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
私は谷崎作品をほとんど読んだことがない。代表的な作品は映画化されているから、それらを鑑賞して谷崎文学をわかったような気になっていた。しかしこの「蘆刈」は、半世紀以上前高校の英語の先生が自ら英訳したものを私たちのクラスで使った。そのとき「蘆刈」は入手できなかった。私達は訳読に随分苦労した。英語力の不足で意味のとれない個所だらけであった。しかしその舞台は私が住んでいた山崎の渡し場そのものであったので「蘆刈」とか「お遊さま」はずっと記憶に残っていた。その高校のクラス会でそのことが話題になった。しかも私の散歩道の淀川の右岸の堤防に「蘆刈」についての簡単な紹介の碑も立っていた。谷崎文学にそれほど強い関心があったわけではないが、なつかしさ故か「蘆刈」そのもを実際に読んでみたくなった。谷崎文学を読んだことのない者だから、余り期待はしていなかった。たとえ退屈に感じても小編だからと思って取り掛かったが、最後までゆっくりと読めた。ライトノベルに馴染んでいるわけではないが、やはり読ませる何かがある、これは古典であると言ってよいのではないか。大正昭和の作家でも再刊される際は注記がつくような時代である。序に読んだ「吉野葛」も十分享受した。古典は年を取ってから読め、と昔誰かに言われたような気がした。