なるほど結局、田部重治が正統派の「ロマン主義者」であることを『山と渓谷』を通読することで確認できた。理性よりも人間に「本来」備わっている「個人」の感情、非合理性を称揚し、「自然」とその「美」「偉大さ」「荘厳さ」に対する憧憬が随所に、饒舌にのべられている。W.ワーズワースを研究した文学者であれば、ある意味で当然の帰結かもしれない。
しかし、19世紀前半(1800~1850頃)に隆盛した欧州ロマン主義のそれとは異なり、20世紀初頭(1911~1931)に記された本書では、未だ国民国家形成に向かう民族主義 nationalism はさほど目立たないし、薄い。当然ながら、欧州「中世」への回帰思想もないし、産業資本主義への批判的視座もない。日本には近代啓蒙主義の理性信仰や普遍主義という思想的土壌がなかったために、「反動」しようがないのだ。その意味で、やはり日本ロマン主義は「亜流」であり「周回遅れ」に思える。だが、この行く道が、「敗北の文学」である太宰治の私小説や、戦後の三島由紀夫の耽美主義的右翼思想に行き着くというから、文学論・思想史として観点から見て、本作『山と渓谷』は面白い。
随筆というジャンルをほぼ「全く」といって良いほど読まない私にとって、「山」文学の本書は難読書の類であり、消化に時間を要した。ロマン主義を象徴する箇所を抜粋して、本書を卒業する。「地上」ではやはり、「理性と普遍主義」に絶望して「ロマン」に逃避するわけにはいかない。
「山に登るということは、絶対に山に寝ることでなければならない。山から出たばかりの水をのむことでなければならない。なるべく山の物を喰わなければならない。山の嵐をききながら、その間に焚火をしながら、そこに一夜を経る事でなければならない。そして山その物(ママ)と自分というものの存在が根柢においてしっくり融け合わなければならないと」 p.28
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新編山と渓谷 (岩波文庫 緑 142-1) 文庫 – 1993/8/18
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著者は北アルプスの麓の村の産.毎朝,家の前の流れで顔を洗い身を起こすたびに白雪に輝く山々を仰いで育った.「山が自分の一部であり,自分が山の一部というふうな心持になる」――数多くの読者を山に誘った我が国山岳文学の古典『山と渓谷』など,英文学者・登山家田部重治(一八八四―一九七二)の山の随筆・紀行文集から精選.
- 本の長さ323ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日1993/8/18
- 寸法10.5 x 1.3 x 14.8 cm
- ISBN-104003114213
- ISBN-13978-4003114216
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- 言語 : 日本語
- 文庫 : 323ページ
- ISBN-10 : 4003114213
- ISBN-13 : 978-4003114216
- 寸法 : 10.5 x 1.3 x 14.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 97,135位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 625位地理・地域研究 (本)
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- - 1,201位紀行文・旅行記
- カスタマーレビュー:
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2022年10月18日に日本でレビュー済み
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復刊した当時は無かった文章も入ってほぼ完璧である。
2022年7月26日に日本でレビュー済み
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東京に今よりも遥かに自然が多かった時代でも、
山奥に自然の素晴らしさを求めに行く気持ち。
時代を超えて変わらないことが分かりました。
特に「数馬の一夜」は名文で、繰り返し読みました。
山奥に自然の素晴らしさを求めに行く気持ち。
時代を超えて変わらないことが分かりました。
特に「数馬の一夜」は名文で、繰り返し読みました。
2020年3月30日に日本でレビュー済み
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あの当時、現代のように詳細な地図もなく書かれているような登山が無事できたのか 驚きです。
また富山に住んでいたこともあり非常に興味深くそして楽しく読むことができました。
また富山に住んでいたこともあり非常に興味深くそして楽しく読むことができました。
2013年8月20日に日本でレビュー済み
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山と渓谷社の復刻版にない読みたい一遍が収録されていて、期待どおりでした。
2015年1月11日に日本でレビュー済み
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期待以上に楽しかったです。嘉門次さんやら武田さんの名前が出たときには驚きました。武田さんはアーネスト・サトウのお子さんだったと思います。装備が十分でもなく、携行食なども今ほどではない時期の登山の様子がよくわかります。また自然の様子がスクリーンに映し出されるように表現されております。山登りをしない方でも十分に楽しめると思います。そして山や渓谷が好きになり、山に入ってみると、自然への見方もかわってくると思います。
2013年8月28日に日本でレビュー済み
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同じ表現が何度も出てくるけれど、作者の気持ちがよくわかります。古の登山が目に浮かぶような文章です。
2010年8月20日に日本でレビュー済み
著者は英文学者/登山家。
明治40年代から登山を始め、戦前くらいまでさかんに活躍したという。本書には、22篇の登山記が収められている。
何日かかけて縦走するという登り方が多い。小川谷から朝日岳、白馬岳を抜けて針ノ木峠へ。槍ヶ岳から日本海まで。あるいは秩父の山々をめぐったり。
いまだに地元の山人を雇って道案内に使っていた頃の記録で、読んでいて隔世の感がある。しかし同時に登山者が増えつつあった時期でもあり、日本の登山史の道程としても読める一冊だ。
風景、食べたもの、同行者などの描写がメイン。あとは、しばしば道に迷うところが読みどころ。
明治40年代から登山を始め、戦前くらいまでさかんに活躍したという。本書には、22篇の登山記が収められている。
何日かかけて縦走するという登り方が多い。小川谷から朝日岳、白馬岳を抜けて針ノ木峠へ。槍ヶ岳から日本海まで。あるいは秩父の山々をめぐったり。
いまだに地元の山人を雇って道案内に使っていた頃の記録で、読んでいて隔世の感がある。しかし同時に登山者が増えつつあった時期でもあり、日本の登山史の道程としても読める一冊だ。
風景、食べたもの、同行者などの描写がメイン。あとは、しばしば道に迷うところが読みどころ。