明治時代の「趣味家」、江戸文化研究家による談話・雑文集。昭和8年に刊行された単行本を原版にしている。幸田露伴の序、回想・趣味・文苑・雑抄・補遺に分けられた26篇に、内田魯庵（作家）・斎藤昌三（古書研究家）・山内神斧（画家）による回顧と年譜をふくむ。
収集した古書から井原西鶴を再発見して明治の文壇に紹介した功績にとどまらず、俳句や篆刻を楽しみ、玩具・写真術・映画・古版画と古い新しいを問わず興味を持ち、毎日書きためた原稿が天井につかえるほどあったくらいの記録魔であった。
関東大震災でその原稿を収集品ごと焼いてしまった後、ほぼ談話だけで構成された本だ。史実として正確さには欠けるものの、内容は実に多彩、珍しい話柄ばかり、江戸趣味のエッセンスを目の当たりに見る思いがした。寒月翁の肖像写真と、収集した玩具の写真は珍しい。
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