『影をなくした男』とは?
「幸運の金袋」と交換で、自分の影を売った男。
「祖国をなくした男」(146頁)
「三界に身の置きどころのない根無し草」(146頁)の男。
この物語は、居候していた友人宅の子供たちにせがまれるままにつくりあげた「お伽噺」。
子供向けだからか、挿画が多い。
カバーの画は、本文111頁にもありました。
「七里靴」をはいた主人公ペーター・シュレミールが国境をやすやすと越えている画。
「一歩あるけば七里を行くという魔法の靴」(108頁)
「ぼくは生まれついての影をもっている
自分の影をなくしたりはしなかった」(133頁)
「影とはなにか?」
「命が影として消え失せるのに」(134頁)
本書の記載から《作者シャミッソーの生い立ち》の年表を作ってみました。
1781年 著者シャミッソーが、フランスの貴族の息子として生まれる
1789年 フランス革命
1790年 シャミッソーの一家は貴族の特権を剥奪される
1802年 一家は「ドイツ人」になりはてた息子を残してフランスにもどる
1806年 プロシア軍士官としてナポレオン戦争に駆り出される
1813年 著者シャミッソーが、ドイツで『影をなくした男』の原作を書く(32歳)
1815年 世界一周旅行
1819年 ベルリン大学から名誉博士の称号を得て、帝室植物標本所所長に任ぜられる
1838年 生涯を閉じる(57歳)
1985年 本書岩波文庫版『影をなくした男』が日本で第1刷を発行
2021年 本書の第48刷が発行される
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影をなくした男 (岩波文庫 赤 417-1) 文庫 – 1985/3/18
A. von シャミッソー
(著),
池内 紀
(翻訳)
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「影をゆずってはいただけませんか?」乞われるままに引きかえの“幸運の金袋”を受けとると、影はたちまち地面からクルクルと巻きとられてしまった――。大金持にはなったものの、影がないばっかりに世間の冷たい仕打ちに苦しまねばならない青年の運命をメルヘンタッチで描いたドイツ・ロマン派の物語。
- 本の長さ160ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日1985/3/18
- 寸法0.63 x 10.5 x 14.8 cm
- ISBN-104003241711
- ISBN-13978-4003241714
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (1985/3/18)
- 発売日 : 1985/3/18
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 160ページ
- ISBN-10 : 4003241711
- ISBN-13 : 978-4003241714
- 寸法 : 0.63 x 10.5 x 14.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 169,022位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2023年6月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2024年2月17日に日本でレビュー済み
「自分の影を金で売ってしまって…」というパロディやオマージュ作品はいくつも見たことがあるけれど、今回、原典を初めて読んだ。
面白かった。
ただ、影を取り戻すわけでもなく、しかしアンハッピーエンドというわけでもなく、謎のスーパーアイテムを手に入れてハッピー(?)エンドを迎えるオチはしばらく意味がわからなかったのだが……
今でこそロマン派の寓意物語の古典と評価されているものの、元は子供向けの物語として着想されたと知って納得。確かに童話っぽいオチだ。
ところで寓意物語として読んだ場合、やはり「影」とは何かという話になると思うのだが、一般的には作者シャミッソーの経歴を踏まえて、「祖国=アイデンティティ」という解釈が主流らしいが、元が童話だと考えると、それはつまらない考え方な気がしないでもない。
影は影だ。人間なら誰でも持っているもの。
それをなくしたということは、周りの人(普通の人)とは異なる「異人」になってしまうというわけで。
金や地位を手に入れても、異人は社会から排されてしまう…という話じゃないのかな。
ただこれが面白いのは、最終的に主人公は魔法の靴を手に入れ、さらに「異人」を極めるもハッピーエンドを迎えた点だ。
「普通の人」でないと人間社会からは孤立してしまうが、周りの人など気にしなければ問題ないし、何より、自然はどんな人間も受け入れてくれる。幸せになれる。
魂(ヒューマニズム)さえ、残っていれば……
ロマン主義文学らしく幻想的な物語になっているんだけど、上手いのは、メタ的な語りを使うことでリアリティを保証してることだよね。
当時は既に人気の手法だったのかな、エドガー・アラン・ポーとかも使ってたけど。
面白かった。
ただ、影を取り戻すわけでもなく、しかしアンハッピーエンドというわけでもなく、謎のスーパーアイテムを手に入れてハッピー(?)エンドを迎えるオチはしばらく意味がわからなかったのだが……
今でこそロマン派の寓意物語の古典と評価されているものの、元は子供向けの物語として着想されたと知って納得。確かに童話っぽいオチだ。
ところで寓意物語として読んだ場合、やはり「影」とは何かという話になると思うのだが、一般的には作者シャミッソーの経歴を踏まえて、「祖国=アイデンティティ」という解釈が主流らしいが、元が童話だと考えると、それはつまらない考え方な気がしないでもない。
影は影だ。人間なら誰でも持っているもの。
それをなくしたということは、周りの人(普通の人)とは異なる「異人」になってしまうというわけで。
金や地位を手に入れても、異人は社会から排されてしまう…という話じゃないのかな。
ただこれが面白いのは、最終的に主人公は魔法の靴を手に入れ、さらに「異人」を極めるもハッピーエンドを迎えた点だ。
「普通の人」でないと人間社会からは孤立してしまうが、周りの人など気にしなければ問題ないし、何より、自然はどんな人間も受け入れてくれる。幸せになれる。
魂(ヒューマニズム)さえ、残っていれば……
ロマン主義文学らしく幻想的な物語になっているんだけど、上手いのは、メタ的な語りを使うことでリアリティを保証してることだよね。
当時は既に人気の手法だったのかな、エドガー・アラン・ポーとかも使ってたけど。
2023年8月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
大学の授業で使うために購入しました。すぐ届いたのでとても助かりました。また、内容も好みでお気に入りの作品です。
2021年4月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
冒頭から中盤まではおとぎ話や童話を読んでいるようでとてもおもしろく、
物語がどう動いていくんだろうかとわくわくしました。
長い話でもないのですが、第二部のように話が展開した終盤のほうは
少し退屈で冗長に感じてしまいました。
出てくるアイテムがとにかく魅力的で記憶に残りますが、
物語のほうは正直なんの話を読んでいたのか思い出せません。
物語がどう動いていくんだろうかとわくわくしました。
長い話でもないのですが、第二部のように話が展開した終盤のほうは
少し退屈で冗長に感じてしまいました。
出てくるアイテムがとにかく魅力的で記憶に残りますが、
物語のほうは正直なんの話を読んでいたのか思い出せません。
2019年10月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本の内容が素晴らしかった。関連の本も読んでみたい。
2023年6月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
子供のころ読んだことがあり、懐かしくなり購入。都合のいい筋の運びがあるが、まあ面白い。
2022年9月18日に日本でレビュー済み
カフカといえば「変身」「審判」「城」「失踪者」等の作品で実存主義文学の嚆矢とも、人間をむしばむ普遍的な不安を描破した現代文学の巨匠とも呼ばれる大作家です。
今回、シャミッソーの「影をなくした男」を読んで、カフカよりさらに100年前も前 (今から200年以上前) に、すでにカフカ的な作品が書かれていたことにたいへん驚きました。
訳者のあとがき「ペーター・シュレミールが生まれるまで」には、作者であるフランス系ドイツ人シャミッソーの数奇な運命から、「影」は「祖国」のことであり、本作は「祖国をなくした男」の物語だ、みたいなことが書かれていますが、読み終わってみて、もっと色々な読み方も可能な気がしました。
たとえば、主人公シュレミールは、美少女ミーナとの平凡だが幸福な結婚を断念して、世界中をいたずらに遍歴せざるを得なかったことから、「影」とは「庶民的な幸福」という寓意が込められているようにも思われます。
さらには「影」と引き換えに無限に金貨が湧き出る金袋を手に入れ、後にはその金袋を捨てて七里靴を手に入れたにもかかわらず、シュレミールはけっきょくは博物学者としての余生に救いを求めざるを得なかったことを考えると「影」の喪失は、人生において最終的に自分らしい生活を手に入れるためにどうしても断念せざるを得ない「何ものか」を寓意しているとも思えます。
また後半、七里靴を手に入れた後の世界探検は、ジュール・ヴェルヌばりのSF秘境冒険小説としても面白く読めました。
何はさておき、読んでいるあいだも読後も、読者に否応なく様々なことを考えさせずにはおかない、100年前のカフカ的傑作でした。
今回、シャミッソーの「影をなくした男」を読んで、カフカよりさらに100年前も前 (今から200年以上前) に、すでにカフカ的な作品が書かれていたことにたいへん驚きました。
訳者のあとがき「ペーター・シュレミールが生まれるまで」には、作者であるフランス系ドイツ人シャミッソーの数奇な運命から、「影」は「祖国」のことであり、本作は「祖国をなくした男」の物語だ、みたいなことが書かれていますが、読み終わってみて、もっと色々な読み方も可能な気がしました。
たとえば、主人公シュレミールは、美少女ミーナとの平凡だが幸福な結婚を断念して、世界中をいたずらに遍歴せざるを得なかったことから、「影」とは「庶民的な幸福」という寓意が込められているようにも思われます。
さらには「影」と引き換えに無限に金貨が湧き出る金袋を手に入れ、後にはその金袋を捨てて七里靴を手に入れたにもかかわらず、シュレミールはけっきょくは博物学者としての余生に救いを求めざるを得なかったことを考えると「影」の喪失は、人生において最終的に自分らしい生活を手に入れるためにどうしても断念せざるを得ない「何ものか」を寓意しているとも思えます。
また後半、七里靴を手に入れた後の世界探検は、ジュール・ヴェルヌばりのSF秘境冒険小説としても面白く読めました。
何はさておき、読んでいるあいだも読後も、読者に否応なく様々なことを考えさせずにはおかない、100年前のカフカ的傑作でした。
2017年9月17日に日本でレビュー済み
人間社会で生きている限り必要不可欠で、それ無しでは決して暮らしていけないもの、それが〔金〕。
光があるとき本体と対になるもの、そして決して切り離すことのできないもの、それが〔影〕。
金も影も、それがある時は不自由さを微塵も感じないのに、失った途端に不自由になり困ってしまう。
金で困るか、影で困るか。
それとも、金持ちのまま影を返してもらい、死後は自分の魂を悪魔にくれてやるか?
上記のことをとても真剣に悩み葛藤するのが、この物語の主人公、ペーター・シュレミールです。
物語を読み進めると、悪魔の真の目的は〔影〕ではなく〔魂〕を手に入れることだと分かります。
キリスト教の世界では、常に悪魔が人間の魂を狙っているのです。果たしてシュレミールは悪魔の誘惑を退けることができるのでしょうか。意外な結末が待っています。是非お読みになって確かめて下さい。
追加ですが……このお話の主人公について訳者はこう語っています。
「あのファウストと同様にペーター・シュレミールは人間存在にとっての永遠の問題を突きとめている。ただいささか大時代がかったゲーテの『ファウスト』とはちがって、このシュレミールはこのうえなく人間的である。涙もろくて心やさしいのだ。女に惚れっぽくてたよりない。たえず反省しつつ軽はずみである。人のやさしさにはより以上のやさしさでこたえないではいられない。訳者としての身びいきは差っ引いても、すこぶる人間的なこのシュレミールを、だれだって愛さずにはいられないのではなかろうか。」
訳者の言うように、お人好しで善人、良心のために財産をかえりみなかった過去があるなど、高潔さをも私は感じました。悪魔が誘惑したいクオリティを備えた彼を、応援しないわけにはいきません。特に恋人のために、自分の魂を悪魔に渡そうか逡巡するところなど、人間的です。
ところで、この物語は、アンデルセン、ホフマン、そしてドラえもんの作者にも影響を与えた作品らしいので、少しそのことに触れておきます。
アンデルセンは『影』という作品で、主人公が影と入れかわるお話を書いています。自分から離れてしまった影がテーマです。E.T.A.ホフマンは『大晦日の夜の冒険』で、影を鏡像に置きかえて怪奇小説を書いています。鏡に映る自分の姿を奪われたために、鏡に姿の映らなくなった男の話です。藤子・F・不二雄では『ドラえもん』の中に出てくる〝かげがり〟に影響が見られます。のび太君がお手伝いを影にやらさせてサボっているうちに、影が知恵をつけてしまい、影がのび太君の言うことを聞かなくなり逃げ出した挙句に、影と自分が入れかわりそうになる話が描かれています。ドラえもんの機転で救われました。また、ドラえもんの四次元ポケットは、『影をなくした男』に出てくる、灰色の服を着た謎の男に影響が見てとれます。この男は実は悪魔なのですが、小さなポケットから(大きすぎて到底そこに入っていたとは思えない)色々な品物、例えば絨毯とかテント一式、それに馬を三頭も引っ張りだして主人公の視線を釘付けにしました。(なお、『影をなくした男』から影響を受けたらしいという見方は、ネット上で様々な考察をされている方々の意見を参考にしましたことを断っておきます。)
他にも現代作家の中に(間接的にですが)村上春樹さんがいらっしゃいます。村上さんはアンデルセンの『影』を紹介され、読んですぐに感銘を受けたと仰っています。アンデルセンはシャミッソーに影響を受けたのですから間接的と言えますね。2016年にアンデルセン文学賞を受賞した時のスピーチで『影』について語ったそうですよ。
影を扱ったテーマは奥が深いですね。自分と切っても切り離せない影の存在について、村上さんのように思い巡らせるのもいいかもしれません。
光があるとき本体と対になるもの、そして決して切り離すことのできないもの、それが〔影〕。
金も影も、それがある時は不自由さを微塵も感じないのに、失った途端に不自由になり困ってしまう。
金で困るか、影で困るか。
それとも、金持ちのまま影を返してもらい、死後は自分の魂を悪魔にくれてやるか?
上記のことをとても真剣に悩み葛藤するのが、この物語の主人公、ペーター・シュレミールです。
物語を読み進めると、悪魔の真の目的は〔影〕ではなく〔魂〕を手に入れることだと分かります。
キリスト教の世界では、常に悪魔が人間の魂を狙っているのです。果たしてシュレミールは悪魔の誘惑を退けることができるのでしょうか。意外な結末が待っています。是非お読みになって確かめて下さい。
追加ですが……このお話の主人公について訳者はこう語っています。
「あのファウストと同様にペーター・シュレミールは人間存在にとっての永遠の問題を突きとめている。ただいささか大時代がかったゲーテの『ファウスト』とはちがって、このシュレミールはこのうえなく人間的である。涙もろくて心やさしいのだ。女に惚れっぽくてたよりない。たえず反省しつつ軽はずみである。人のやさしさにはより以上のやさしさでこたえないではいられない。訳者としての身びいきは差っ引いても、すこぶる人間的なこのシュレミールを、だれだって愛さずにはいられないのではなかろうか。」
訳者の言うように、お人好しで善人、良心のために財産をかえりみなかった過去があるなど、高潔さをも私は感じました。悪魔が誘惑したいクオリティを備えた彼を、応援しないわけにはいきません。特に恋人のために、自分の魂を悪魔に渡そうか逡巡するところなど、人間的です。
ところで、この物語は、アンデルセン、ホフマン、そしてドラえもんの作者にも影響を与えた作品らしいので、少しそのことに触れておきます。
アンデルセンは『影』という作品で、主人公が影と入れかわるお話を書いています。自分から離れてしまった影がテーマです。E.T.A.ホフマンは『大晦日の夜の冒険』で、影を鏡像に置きかえて怪奇小説を書いています。鏡に映る自分の姿を奪われたために、鏡に姿の映らなくなった男の話です。藤子・F・不二雄では『ドラえもん』の中に出てくる〝かげがり〟に影響が見られます。のび太君がお手伝いを影にやらさせてサボっているうちに、影が知恵をつけてしまい、影がのび太君の言うことを聞かなくなり逃げ出した挙句に、影と自分が入れかわりそうになる話が描かれています。ドラえもんの機転で救われました。また、ドラえもんの四次元ポケットは、『影をなくした男』に出てくる、灰色の服を着た謎の男に影響が見てとれます。この男は実は悪魔なのですが、小さなポケットから(大きすぎて到底そこに入っていたとは思えない)色々な品物、例えば絨毯とかテント一式、それに馬を三頭も引っ張りだして主人公の視線を釘付けにしました。(なお、『影をなくした男』から影響を受けたらしいという見方は、ネット上で様々な考察をされている方々の意見を参考にしましたことを断っておきます。)
他にも現代作家の中に(間接的にですが)村上春樹さんがいらっしゃいます。村上さんはアンデルセンの『影』を紹介され、読んですぐに感銘を受けたと仰っています。アンデルセンはシャミッソーに影響を受けたのですから間接的と言えますね。2016年にアンデルセン文学賞を受賞した時のスピーチで『影』について語ったそうですよ。
影を扱ったテーマは奥が深いですね。自分と切っても切り離せない影の存在について、村上さんのように思い巡らせるのもいいかもしれません。