140年前に出版されたこのフランスの小説は、近いところではアニメ「不思議の海のナディア」に、遠いところでは明治時代の小説「浮城物語」(矢野龍渓)や「海底軍艦」(押川春浪)らに大きな影響を与えています。日本の冒険モノ・軍艦モノの想像力を規定しているともいえる。当時最先端の技術や知識のちょっと先を見据え、しかも現実の事件や政治を織り込んだ半現実のSF世界。おもしろくないわけがない。
ところが、今回、初めて読んで分かったのは、ノーチラス号のネモ船長の狂気や復讐が「謎」のまま終わってしまうことと、ノーチラス号に乗り込むことになった博士とその助手、そして海の男の3人の「監禁」状態です。最新鋭の潜水艦を作りながら人間世界から隠れて生きる船長の理由は、いかにも「謎」としてほのめかされているのに結局明かされないし、その船に乗り込む3人の読者代表は、最後まで船から逃げられない捕虜でした。監禁している人間(ネモ船長)への共感がわいてきたり、逆に激しく抵抗したりという「拘禁症状」がしっかりでています。そんな話だったのか。
閉じ込められた世界で与えられた謎を解こうとすることしかできない3人が(やることがほかにないから)、とてもリアルな現代社会への批判のように見えてきます。今こそ読み返すべき古典。
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海底二万里 上 (岩波文庫 赤 569-4) 文庫 – 2007/8/17
- 本の長さ397ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2007/8/17
- ISBN-104003256948
- ISBN-13978-4003256947
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2007/8/17)
- 発売日 : 2007/8/17
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 397ページ
- ISBN-10 : 4003256948
- ISBN-13 : 978-4003256947
- Amazon 売れ筋ランキング: - 141,792位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2008年12月18日に日本でレビュー済み
同じ作者の書いた「十五少年漂流記」と「地底旅行」はハラハラドキドキするとても面白い冒険小説でした。
それらと同じ面白さを本書に期待したのですが、自分にはあまり合いませんでした。
上記二作を読んだのは結構昔のことなので細かい筋は覚えていないのですが、少なくとも「主人公たちが自身の力で困難を切り開いていく」物語ではありました。
ところが本書では主人公アロナックスたちは、ただ単に潜水艦ノーチラス号に乗りこんでネモ船長の操縦にまかせるままという受動的な立場に置かれているに過ぎません。確かに要所要所に物語が盛り上がる箇所はあるのですが、個人的にはいまいち盛り上がれない。主人公がただ単に「成り行き上ごたごたに巻き込まれているだけ」に過ぎないからでしょうか。
さらに過剰なほどの科学・生物学の知識の記述には閉口してしまいます。本書が刊行された当時においてはこうした最先端の科学の記述に読者は興奮したのでしょうが、様々な本が簡単に手に入る現代に生きる自分にとっては、「魚のことなら魚の図鑑を見る方がはるかに分かりやすい」と考えてしまいます。
本書は科学小説界においては価値あるものだとは思います。しかし本書がそこまで面白いかと言われれば、残念ながら自分はNOと答えるしかありません。
それらと同じ面白さを本書に期待したのですが、自分にはあまり合いませんでした。
上記二作を読んだのは結構昔のことなので細かい筋は覚えていないのですが、少なくとも「主人公たちが自身の力で困難を切り開いていく」物語ではありました。
ところが本書では主人公アロナックスたちは、ただ単に潜水艦ノーチラス号に乗りこんでネモ船長の操縦にまかせるままという受動的な立場に置かれているに過ぎません。確かに要所要所に物語が盛り上がる箇所はあるのですが、個人的にはいまいち盛り上がれない。主人公がただ単に「成り行き上ごたごたに巻き込まれているだけ」に過ぎないからでしょうか。
さらに過剰なほどの科学・生物学の知識の記述には閉口してしまいます。本書が刊行された当時においてはこうした最先端の科学の記述に読者は興奮したのでしょうが、様々な本が簡単に手に入る現代に生きる自分にとっては、「魚のことなら魚の図鑑を見る方がはるかに分かりやすい」と考えてしまいます。
本書は科学小説界においては価値あるものだとは思います。しかし本書がそこまで面白いかと言われれば、残念ながら自分はNOと答えるしかありません。