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悪魔の涎/追い求める男: 他八篇 (岩波文庫 赤 790-1) 文庫 – 1992/7/16
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夕暮れの公園で何気なく撮った一枚の写真から,現実と非現実の交錯する不可思議な世界が生まれる「悪魔の涎」.薬物への耽溺とジャズの即興演奏のなかに彼岸を垣間見るサックス奏者を描いた「追い求める男」.斬新な実験性と幻想的な作風でラテンアメリカ文学界に独自の位置を占めるコルサタル(一九一四―八四)の代表作十篇を収録.
- 本の長さ301ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日1992/7/16
- ISBN-104003279018
- ISBN-13978-4003279014
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (1992/7/16)
- 発売日 : 1992/7/16
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 301ページ
- ISBN-10 : 4003279018
- ISBN-13 : 978-4003279014
- Amazon 売れ筋ランキング: - 165,475位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 38位スペイン・ポルトガル文学研究
- - 60位スペイン文学
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2023年1月21日に日本でレビュー済み
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迅速に届きました。ありがとうございます。
2019年5月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
"ぼくの武器といえば、そこにある1枚の写真だけだ。それが今、ぼくに復讐している。"作品に触発された監督により映画「欲望」が製作された事でも知られる表題作を含め、洗練された短編集である本書は著者らしい、あくまで【日常の延長線上】として非日常に迷い込ませるのが素晴らしい。 個人的にも著者の本との出会いが”著者と読書が同時進行で永遠に物語る”「石蹴り遊び」が先にあって、大層驚かされた印象があったのだが、それより前に発刊された本書を読む事で本を読んでいる人間が”紙の裏表をぐるぐる円環する”短編集の姿を借りた試行錯誤の先にあの作品があったのかと腑に落ちた。
ラテンアメリカ文学好き、あるいはトラックにはねられて別の異世界デビューではなく、あくまで日常の延長線上での非日常を楽しみたい誰かにオススメ。
ラテンアメリカ文学好き、あるいはトラックにはねられて別の異世界デビューではなく、あくまで日常の延長線上での非日常を楽しみたい誰かにオススメ。
2019年4月17日に日本でレビュー済み
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何が起こっているのか、どうなってしまうのか、それがわからない怖さに引き込まれていきます。口からウサギを出す男の独白が描かれる『パリにいる若い女性に宛てた手紙』はその最たるもので、男が口からウサギを出す事でウサギは増えていく事になるのですが、それをどうにかするべきなのか、何もしないべきなのか、いずれにしても怖い結果しか見出す事はできません。
『南部高速道路』も車の大渋滞を描いているのですが、その様子は日本人の満州引き上げにも似ています。その場に留まる事を余儀なくされた人達が、あやふやな情報だけを頼りに何とか助け合いながら前に進める時を信じて待ち続けます。
『南部高速道路』も車の大渋滞を描いているのですが、その様子は日本人の満州引き上げにも似ています。その場に留まる事を余儀なくされた人達が、あやふやな情報だけを頼りに何とか助け合いながら前に進める時を信じて待ち続けます。
2011年6月29日に日本でレビュー済み
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どの作品においても,日常世界と日常が崩壊した世界が地続きで表現されており,軽いトリップ感があります。
個人的には,表題作よりも「南部高速道路」に感心しました。
高速道路の上で,大渋滞に巻き込まれた人々は,暇つぶしのため周りの車の運転手のところまで出向き会話をする。
どの運転手も名前も知らない初めて会う人ばかりなので,すべて記号(例えばプジョー404の技師,プジョー203の夫婦,ドーフィヌの若い娘,2HPの尼僧,シムカの若者,タナウスの男の子といった車の名前で記号化している)で表現されている。
最初は誰もが数時間の渋滞と思っていたが,その渋滞状態が信じられないくらいにあまりにも長く,水分や食料を調達しなければ命の危険にさらされるという状況になる。周りの車の運転手数人が一つの班となり,リーダーを決め,危険を乗り越えていこうと結束するが・・・。ここに至り,やはり本作品も日常がゆがみだしてきます。
ただ,「南部高速道路」がすごいのは,その後の展開です。
この「南部高速道路」は,池澤夏樹世界文学全集短編コレクションでも読むことができます。
個人的には,表題作よりも「南部高速道路」に感心しました。
高速道路の上で,大渋滞に巻き込まれた人々は,暇つぶしのため周りの車の運転手のところまで出向き会話をする。
どの運転手も名前も知らない初めて会う人ばかりなので,すべて記号(例えばプジョー404の技師,プジョー203の夫婦,ドーフィヌの若い娘,2HPの尼僧,シムカの若者,タナウスの男の子といった車の名前で記号化している)で表現されている。
最初は誰もが数時間の渋滞と思っていたが,その渋滞状態が信じられないくらいにあまりにも長く,水分や食料を調達しなければ命の危険にさらされるという状況になる。周りの車の運転手数人が一つの班となり,リーダーを決め,危険を乗り越えていこうと結束するが・・・。ここに至り,やはり本作品も日常がゆがみだしてきます。
ただ,「南部高速道路」がすごいのは,その後の展開です。
この「南部高速道路」は,池澤夏樹世界文学全集短編コレクションでも読むことができます。
2011年2月3日に日本でレビュー済み
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非現実的な現実、虚構、悪夢が混淆した不思議な短編集である。文体が写実的だけに余計に幻惑感が漂う。単なる怪談や奇妙な話に見えて、小説のあり方、特に記述の主体・その主体の視点の曖昧性に関心が払われている様である。
タイトル作にもなっている「悪魔の涎」でも、主人公ミシェルの一人称(及び独白)と三人称が切れ目なく続き、ミシェル自身が物語を如何に語るか迷っている様子さえ描かれる。ミシェルがアマチュア写真家であると言う設定が呆然とする結末に導く。もう一つのタイトル作「追い求める男」は、ヤク中の天才サックス奏者を通して、時間認識の脆さと共に、具象が持つ天才性、抽象が持つ日常性及び両者間の絶望的な隔絶を描いた秀作。創造力も深淵な謎である。語り手がジャズ評論家と言う設定も対比を鮮明にしている。中編と言って良い分量で本短編集の代表作だろう。「南部高速道路」は、想像を絶する渋滞に巻き込まれた人々の不条理感を描いたものだが、人名を一切挙げず、車名だけで物語を進行させる面白い趣向。それでいて結末の寂寥感は胸に染みる。この他、「続いている公園」はF.ブラウン風のアイデアが光るし、「パリにいる若い女性に宛てた手紙」は安部公房を想わせる設定。「ジョン・ハウエルへの指示」も登場人物間の思惑の違いから生じる不条理感を滑稽味を持って描いている。
各編の主人公や読み手の意識を揺るがす独特の味がある。小説というものを面白い角度で切った異色の短編集だと思った。
タイトル作にもなっている「悪魔の涎」でも、主人公ミシェルの一人称(及び独白)と三人称が切れ目なく続き、ミシェル自身が物語を如何に語るか迷っている様子さえ描かれる。ミシェルがアマチュア写真家であると言う設定が呆然とする結末に導く。もう一つのタイトル作「追い求める男」は、ヤク中の天才サックス奏者を通して、時間認識の脆さと共に、具象が持つ天才性、抽象が持つ日常性及び両者間の絶望的な隔絶を描いた秀作。創造力も深淵な謎である。語り手がジャズ評論家と言う設定も対比を鮮明にしている。中編と言って良い分量で本短編集の代表作だろう。「南部高速道路」は、想像を絶する渋滞に巻き込まれた人々の不条理感を描いたものだが、人名を一切挙げず、車名だけで物語を進行させる面白い趣向。それでいて結末の寂寥感は胸に染みる。この他、「続いている公園」はF.ブラウン風のアイデアが光るし、「パリにいる若い女性に宛てた手紙」は安部公房を想わせる設定。「ジョン・ハウエルへの指示」も登場人物間の思惑の違いから生じる不条理感を滑稽味を持って描いている。
各編の主人公や読み手の意識を揺るがす独特の味がある。小説というものを面白い角度で切った異色の短編集だと思った。
2008年10月2日に日本でレビュー済み
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コルタサルの作品は他のラテンアメリカの作家の小説と異なり、彼がシュールレアリズムに傾倒していたこと、パリでの生活が長かったことから、熱帯の湿気とは無縁のキリコやダリの絵画を見ているようなヨーロッパ的な洗練がある。
並行した時空間での出来事が段落変えも何もなく一つの段落で混沌と語られる「全ての火は火」、言語化できないものを垣間見ようとして崩壊していったジャズ・ミュージシャン(=チャーリー・パーカーがモデル)に対する「もの書き」のコンプレックスを自嘲気味に描いた「追い求める男」あたりが有名ではないかと思います。確かに、こういう作品では「書くこと自体」に対する方法論的実験を繰り返した彼のモダニストとしての技量が良く見えます。が、僕のオススメは「南部高速道路」。
この作品のラストの寂しさは凄い、という2ちゃんねるの書き込みを昔見た後に図書館で試しにこの小説を読んでから、僕は本格的にラテン文学の奥の深さを学びました。名訳者・木村氏の訳で、しかもこの値段でコルタサルが読めるというのは、幸せですね。絶版になる前に買いましょう。
並行した時空間での出来事が段落変えも何もなく一つの段落で混沌と語られる「全ての火は火」、言語化できないものを垣間見ようとして崩壊していったジャズ・ミュージシャン(=チャーリー・パーカーがモデル)に対する「もの書き」のコンプレックスを自嘲気味に描いた「追い求める男」あたりが有名ではないかと思います。確かに、こういう作品では「書くこと自体」に対する方法論的実験を繰り返した彼のモダニストとしての技量が良く見えます。が、僕のオススメは「南部高速道路」。
この作品のラストの寂しさは凄い、という2ちゃんねるの書き込みを昔見た後に図書館で試しにこの小説を読んでから、僕は本格的にラテン文学の奥の深さを学びました。名訳者・木村氏の訳で、しかもこの値段でコルタサルが読めるというのは、幸せですね。絶版になる前に買いましょう。
2011年11月29日に日本でレビュー済み
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ラテンアメリカ文学とか、ボルヘスとの比較とか、幻想的な作品を書くとか、そういう冠というか、先入観を与えられるのはどうなんでしょう。もっと一般性の高い作家だと思います。
現実から非現実へ入り込む入り口がうっすら切り取り線のように見える作品、のりしろのように双方が重複しているかと思うと、あっという間に引き離されるような鮮やかさを持った作品、これらが冒頭から続きます。
個人的にはこうした現実と非現実の境目を描くだけなら、そんなに非凡な作家とは思いません。本書の後半になると、外的な要因で幻想の世界に入り込むのではなく、現実の生活を続けることがそのままどこか違った手触りの世界に触れることにつながってゆく作品に傾向が変わってきます。それは幻想とも異なる、思考の先にあるエアポケットか澱みのような手触りで、こちらのほうがむしろコルタサルの本領発揮なのではないかと思います。そしてこの特性は特にラテンアメリカという文脈に即しているわけでもなく、あくまでこの作家の持ち味でしょう。
ラテンアメリカ文学に親しんでいるとか、いないとかにこだわらずに手に取ってよい短編集だと思います。
現実から非現実へ入り込む入り口がうっすら切り取り線のように見える作品、のりしろのように双方が重複しているかと思うと、あっという間に引き離されるような鮮やかさを持った作品、これらが冒頭から続きます。
個人的にはこうした現実と非現実の境目を描くだけなら、そんなに非凡な作家とは思いません。本書の後半になると、外的な要因で幻想の世界に入り込むのではなく、現実の生活を続けることがそのままどこか違った手触りの世界に触れることにつながってゆく作品に傾向が変わってきます。それは幻想とも異なる、思考の先にあるエアポケットか澱みのような手触りで、こちらのほうがむしろコルタサルの本領発揮なのではないかと思います。そしてこの特性は特にラテンアメリカという文脈に即しているわけでもなく、あくまでこの作家の持ち味でしょう。
ラテンアメリカ文学に親しんでいるとか、いないとかにこだわらずに手に取ってよい短編集だと思います。
2011年1月26日に日本でレビュー済み
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ラテンアメリカ文学というものを読んでみようと思うひとは
ボルヘスやコルタサルから入る場合が多いかと思う。
私はコルタサルの非現実感の方が今は好みです。
「占拠された屋敷」、「南部高速道路」、「正午の島」がいい。
ボルヘスやコルタサルから入る場合が多いかと思う。
私はコルタサルの非現実感の方が今は好みです。
「占拠された屋敷」、「南部高速道路」、「正午の島」がいい。