私は1948年刊行版(杉捷夫氏訳)で本作を読み、下記の様なレビューを書いたのだが、傷みが酷くなって本書を購入し直した。それによって、本作の魅力を一段と強く感じた。1948年版との主な相違点は以下である。
(1) 一番大きな点は"新仮名遣い"になって非常に読み易くなった事である。本作が一層身近になったと思う。
(2) 四編に加えて「肖像奇談」という習作が収録されている。
(3) 重要ではないが、「ヂドロ→ディドロ」と表記が変わった。
ディドロの真価を知る上で貴重な書だと思う。
<1948年版のレビュー>
「ダランベールとヂドロとの対話」、「ダランベールの夢」、「対話の続き」、「哲学者と元帥夫人との対話」の四編から成る対話集。ヂドロは唯物論者であった由で、当時の宗教界からは危険視されていたらしい。また、18世紀における生物学の進歩に伴い、「生物と物質の間」が関心の的であったようだ。本作もこの線に沿って書かれている。
「ダランベールとヂドロとの対話」は、まさしくこの問題を扱っている。物質(無機物)が如何にして生物(有機物)になり得て、それが感情を持つようになり、やがて思考する様になるかを考察している。ダランベールは実在の知人。ザックバランな調子の会話でユーモアさえ醸し出している。卵を物質の塊と捉えて(この仮定は間違っているが)、それが生命に移行する源泉を"運動"とし、物質と感性を同一視している。現代でも解明されていない「生物と無生物の間」の問題を18世紀に考察していた哲学者が居たとは面白い。グールドの「断続平衡説」に近い論を開示している点も興味深い。「ダランベールの夢」は、ダランベールの哲学的寝言を妻と医師が分析すると言う風変わりな体裁。前編の思索を様々な事例を引いて拡げたもので、全容を把握するのは困難だが、分子レベルの同化、遺伝子修復・発生の概念を持ち出している所が凄い。中枢神経と末梢神経から成る神経網についても考察している。「対話の続き」は文字通り前編の続きで、道徳によって快楽が抑圧される社会通念に反駁したもの。「哲学者と元帥夫人との対話」は信仰心・善悪に対する考察だが、キリスト教信者の狂信の危険性を指摘する大胆さには驚かされる。
進化論や遺伝子工学の遥か以前の考察としては、議論の土台となる生物学的知見が(直観だとしても)余りにも先進的なのに驚嘆した。基本的には現代でも通用する論考であり、18世紀の西欧哲学に関して啓蒙される所が大きかった。
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ダランベールの夢 他四篇 (岩波文庫 青 624-2) 文庫 – 1958/6/5
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- 本の長さ218ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日1958/6/5
- ISBN-10400336242X
- ISBN-13978-4003362426
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (1958/6/5)
- 発売日 : 1958/6/5
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 218ページ
- ISBN-10 : 400336242X
- ISBN-13 : 978-4003362426
- Amazon 売れ筋ランキング: - 138,075位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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