●本書はまちがいなく「漱石のすべての著作の中で、読まれることの最も少ない本」(解説P429)である。私も、これまで読むのをずっとためらってきた。漱石本人が「失敗の亡骸(なきがら)」というくらいだから(
私の個人主義 (講談社学術文庫 271)
)どうせ面白くないんだろう――と思ってきた。
●ところが、実際に読んでみると、なるほど「漱石自身の文学的価値観」(P454)というものが直截的によく出ていて漱石ファンにとってはなかなか興味深い。だが、通読には相当な「辛抱」(P444)が要ったことも事実である。上巻だけ買って挫折した読者もきっと多いにちがいない。
●しかし、下巻の最後にある亀井俊介氏の「解説」は、通読の苦痛を補って余る素晴らしさだった。そのことをお知らせするために、本書のレビューを下巻に書く。これは、私が知るかぎり漱石文学のもっとも優れた紹介文のひとつと言って良いだろう。
●亀井氏の言うとおり、この「文学論」は実にでこぼこしていて「とっつきにくい」(P470)。しかし、それは漱石がひとりロンドンで全身全霊を賭して悩み考え抜いた記念碑なのである。気負い、混乱、なにかをがっちり握りたいという焦り、本書に垣間見るそうした漱石の若々しさと真面目さを私は愛さずにはいられない。
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文学論 下 (岩波文庫 緑 11-18) 文庫 – 2007/4/17
夏目 漱石
(著)
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- 本の長さ484ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2007/4/17
- ISBN-104003600150
- ISBN-13978-4003600153
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2007/4/17)
- 発売日 : 2007/4/17
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 484ページ
- ISBN-10 : 4003600150
- ISBN-13 : 978-4003600153
- Amazon 売れ筋ランキング: - 389,382位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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(1867-1916)1867(慶応3)年、江戸牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)に生れる。
帝国大学英文科卒。松山中学、五高等で英語を教え、英国に留学した。留学中は極度の神経症に悩まされたという。帰国後、一高、東大で教鞭をとる。1905(明治38)年、『吾輩は猫である』を発表し大評判となる。
翌年には『坊っちゃん』『草枕』など次々と話題作を発表。1907年、東大を辞し、新聞社に入社して創作に専念。『三四郎』『それから』『行人』『こころ』等、日本文学史に輝く数々の傑作を著した。最後の大作『明暗』執筆中に胃潰瘍が悪化し永眠。享年50。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2019年6月5日に日本でレビュー済み
編注解担当の亀井俊介氏みずからも満足されておられない(らしい。あとがきにその言い訳が書き連ねてあるが、はなはだ見苦しい)、漱石が縦横に引用する英文原作の翻訳は、出来がすこぶる悪い。漱石の的確な引用に感心して、対訳形式になっている翻訳につい目を及ぼしてしまった時、せっかくの興が削がれることしばしば、なのである。(以下は亀井氏編の上下本「文学論」へのレビューとして投稿する。)
とは言ぇ、、
漱石のこんな授業なら受けてみたかった。列席していた学生さんたちを実に羨ましく思う。
この「文学論」は強面(こわもて)で知られる。しかし、そんな宣伝の仕方は、もう止めた方がいいと思う。
想像するに、教室は毎回笑いに包まれていたのではなかろうか。最初漱石は学生たちの抵抗を受けたそうだ。前任のヘルン先生に人気があったからだと言う。漱石もそんな輩を嫌ったのだろう。
教室というものには毎度ことなったアトモスフィアが生じる。教員も学生もそれをすぐに察知する。気が合わないと、教員は焦る。学生たちはそのてんてこ舞いを面白がる。そんなことで一向に授業にはならない。困った教員は学生に媚びる。ますますつまらない学生の方は、選択科目ならサボる、必修科目なら教室で眠りこけるか私語にふけるようになる。そんなところに違いないが、、
漱石の文学論も最初は、高度に過ぎて学生さんもさぞかし困っただろう。漱石は漱石で、どうだ付いて来れまいが、とでも、してやったり顔だったに違いない。
だが漱石には、学生のことなんてそっちのけで、自ずと熱が入る。自分が面白くなって来る。そうすると、学生も興に入ってくる。漱石の博覧強記に茫然としながらも、その分析の一言隻語を逃すまいと必死でノートを埋め始める。
そんなことに想像を逞しくしながら読み進めているところへ調子が良くなる度ごとに邪魔してくるのが、亀井俊介氏の翻訳である。対訳形式になっているので、ついつい原文も一緒に読んでしまう。すると、しばしば亀井訳にげんなりするのである。漱石の名講義に比べて、何て下手くそな翻訳なのだろう!こんな翻訳、正直いって要らないよ!!
さらに、注解もひどいね〜
例えば、361頁に、「覆瓿(ふくほう)」の難語がある。これには注を付けている。こんな言葉、漢和辞典を調べる手間さえ惜しまなければ、極言すると誰にでも分かるものだ。ところが、続けて漱石は「迹(あと)を坊間に絶えてるもの多き」と言う。さてと、、これは難しいねぇ。しかるに、亀井氏はこちらには注を省く。多分わからなかったんでしょうなぁ。こんなレベルでは、そこらの一般読者と同じではないか!恐らく「跡形もなくなる」という謂なのだと思いますが、、氏の想定する「多くの人」にはそう簡単ではないと思うけどね〜
とは言ぇ、、
漱石のこんな授業なら受けてみたかった。列席していた学生さんたちを実に羨ましく思う。
この「文学論」は強面(こわもて)で知られる。しかし、そんな宣伝の仕方は、もう止めた方がいいと思う。
想像するに、教室は毎回笑いに包まれていたのではなかろうか。最初漱石は学生たちの抵抗を受けたそうだ。前任のヘルン先生に人気があったからだと言う。漱石もそんな輩を嫌ったのだろう。
教室というものには毎度ことなったアトモスフィアが生じる。教員も学生もそれをすぐに察知する。気が合わないと、教員は焦る。学生たちはそのてんてこ舞いを面白がる。そんなことで一向に授業にはならない。困った教員は学生に媚びる。ますますつまらない学生の方は、選択科目ならサボる、必修科目なら教室で眠りこけるか私語にふけるようになる。そんなところに違いないが、、
漱石の文学論も最初は、高度に過ぎて学生さんもさぞかし困っただろう。漱石は漱石で、どうだ付いて来れまいが、とでも、してやったり顔だったに違いない。
だが漱石には、学生のことなんてそっちのけで、自ずと熱が入る。自分が面白くなって来る。そうすると、学生も興に入ってくる。漱石の博覧強記に茫然としながらも、その分析の一言隻語を逃すまいと必死でノートを埋め始める。
そんなことに想像を逞しくしながら読み進めているところへ調子が良くなる度ごとに邪魔してくるのが、亀井俊介氏の翻訳である。対訳形式になっているので、ついつい原文も一緒に読んでしまう。すると、しばしば亀井訳にげんなりするのである。漱石の名講義に比べて、何て下手くそな翻訳なのだろう!こんな翻訳、正直いって要らないよ!!
さらに、注解もひどいね〜
例えば、361頁に、「覆瓿(ふくほう)」の難語がある。これには注を付けている。こんな言葉、漢和辞典を調べる手間さえ惜しまなければ、極言すると誰にでも分かるものだ。ところが、続けて漱石は「迹(あと)を坊間に絶えてるもの多き」と言う。さてと、、これは難しいねぇ。しかるに、亀井氏はこちらには注を省く。多分わからなかったんでしょうなぁ。こんなレベルでは、そこらの一般読者と同じではないか!恐らく「跡形もなくなる」という謂なのだと思いますが、、氏の想定する「多くの人」にはそう簡単ではないと思うけどね〜