ブルーノ・タウトは、日本美術や建築を学ぶ方達にとっては既にお馴染みであろうが、僅か4年弱の滞在期間に精力的に活動し、桂離宮に代表されるような「日本美」を発見した人物である。
だが、彼は決して諸手を挙げて日本礼賛をした訳ではなく、時には痛烈な批判を以って日本を見つめていた事を忘れてはならない。
建築家として、一人の外国人として…彼が見出した「日本の美」とは一体どのような世界だったのであろうか。
それを教えてくれるのが本書である。
本書は、タウトが日本滞在中に行なった公演や執筆、更には旅日記を一冊に纏めたものである。
具体的には、第一章「日本建築の基礎」と第二章「日本建築の世界的奇跡」に於いて、日本建築の特異性や精神性を論じ、続く第三章では伊勢神宮を取り上げる。
更に、第四章〜第五章は、彼が飛騨から日本海側を巡って東北へと旅し、その後に再び冬の秋田を訪れた時の紀行文であり、そして、最終章は「永遠なるものー桂離宮」で幕を閉じるのだ。
中でも興味深かったのは、第四章「飛騨から裏日本へ」である。
これは正しく「タウト版・奥の細道」とも言え、彼が目にした光景や出逢った人々、そして建築や文化等に付いて書き綴った日記なのだ。
タウトが来日したのは1933年である事から、当時の旅が決して楽ではなかった事は見当が付くが、実際には想像以上の苦労があったようで、好奇の目に晒されて不快な思いをした事、食生活に音をあげた事、折角訪れた地で落胆した事等を赤裸々に語っている。
だが、同時に美しい眺めや素晴らしい作品を目にした時の感動についても極めて饒舌であり、彼が旅で得たものを共有出来る…と言っても過言ではない程の臨場感に満ち溢れていた。
また、タウトが「いかもの」という表現を連発しているのも面白い。
タウトがどのような部分を「いかもの」と評しているのか具体的な記述は無いのだが、旅館や公共施設に対してこの表現を使っている事から、恐らく当時では最新式、若しくは豪華さを極めた立派な建物を指していたのであろう。
だが、タウトにとっては「いかもの」なのだ。
そして、彼が「いかもの」を嫌悪感を以って眺めていた事を思うと、忘れ去られていく「日本美」に対する警告のようでもあり、非常に感慨深かった。
タウトは言う。
「桂離宮は見るものは無いが、そこに思惟がある」ーと。
彼が日光東照宮を嫌い、桂離宮にこそ「日本美」があると評価したのは有名な話だが、成程、過剰に装飾された東照宮は「見るのに忙しく、考える時間は無い」が、桂離宮のような素朴な世界には「日本の精神」が宿っているという意味なのであろう。
勿論、桂離宮よりも東照宮を評価する方達は大いに反論したい所であろうが、賛否は別として、タウトが「日本美」を如何に考え、何を求めていたのかという事は良く理解出来ると思う。
様々な苦労の末に見出した日本の姿。
時には故郷に思いを馳せながら、比べてみた日本の景色。
そして、日本人自身が気付かずにいる日本の美。
恐らく彼にとって、当時の日本はカルチャー・ショックもあったであろうし、計り知れない苦難もあったであろう。
だが、こうした境遇の中だからこそ、彼は冷静、且つ鋭い眼差しを以って「日本美」を発見する事が出来たのではなかろうか。
「タウトが見出した、タウトの日本美」が、この一冊に凝縮されているのだ。
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日本美の再発見 増補改訳版 (岩波新書) 新書 – 1962/2/20
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桂離宮をはじめ、伊勢神宮、飛騨白川の農家および秋田の民家などの美は、ドイツの建築家タウトによって「再発見」された。彼は、ナチスを逃れて滞在した日本で、はからずもそれらの日本建築に「最大の単純の中の最大の芸術」の典型を見いだしたのであった。日本建築に接して驚嘆し、それを通して日本文化の深奥に遊んだ魂の記録。
- 本の長さ182ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日1962/2/20
- ISBN-104004000106
- ISBN-13978-4004000105
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- 発売日 : 1962/2/20
- 言語 : 日本語
- 新書 : 182ページ
- ISBN-10 : 4004000106
- ISBN-13 : 978-4004000105
- Amazon 売れ筋ランキング: - 129,867位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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2013年8月27日に日本でレビュー済み
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久し振りにブルーノタウト氏の著書を読んでみて改めて、「うん、そう思う。」の世界だった。
建築という枠を離れて多くの日本人に読んで貰いたい一冊。
建築という枠を離れて多くの日本人に読んで貰いたい一冊。
2021年6月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
1939年(昭和14年)に本書は発刊されたようです。
80年以上経った今でも知見に溢れ、その功績に敬意を持っています。
という前提ながら、思うところは、やや偏っているかなと・・・・。
日本建築の基礎として、桂離宮への賛美の一方、日光東照宮・陽明門の批判(ひどい)が記されています。
「最大の単純の中の最大の芸術」として、桂離宮、伊勢神宮の建築に「美」を見出した一方、発見しきれなかった、見たくなかったのかなと思うところも多々あります。
「日本人は、自分が辛いからといって子供や動物をいじめたりしない」(タウト談)
ナチスから逃れ日本に来た境遇ゆえか、古き良き日本を美化しすぎていて・・・・。
シンプルに美しいだけでなく、複雑で泥臭いのも日本の良さです。陽明門や北斎漫画、はたまた縄文文化まで。近代建築も今となれば別の側面で奥深いものです。
岡本太郎氏と対談するとどうなるのかなと思いました。(笑)
80年以上経った今でも知見に溢れ、その功績に敬意を持っています。
という前提ながら、思うところは、やや偏っているかなと・・・・。
日本建築の基礎として、桂離宮への賛美の一方、日光東照宮・陽明門の批判(ひどい)が記されています。
「最大の単純の中の最大の芸術」として、桂離宮、伊勢神宮の建築に「美」を見出した一方、発見しきれなかった、見たくなかったのかなと思うところも多々あります。
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ナチスから逃れ日本に来た境遇ゆえか、古き良き日本を美化しすぎていて・・・・。
シンプルに美しいだけでなく、複雑で泥臭いのも日本の良さです。陽明門や北斎漫画、はたまた縄文文化まで。近代建築も今となれば別の側面で奥深いものです。
岡本太郎氏と対談するとどうなるのかなと思いました。(笑)
2018年5月8日に日本でレビュー済み
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作者は私の住む岐阜県飛騨地方にも足を踏み入れており、その見聞録は興味深い。
2015年2月22日に日本でレビュー済み
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題名を見て購入しましたが、余り感動しませんでした。
お薦めしません。
お薦めしません。
2013年12月30日に日本でレビュー済み
この本の初版は昭和14年である。
古い本であるが、いま読んでもなんら遜色はない。
ドイツの建築家ブルーノ・タウトは日本滞在中に、
桂離宮をはじめ、伊勢神宮、白川郷、日本海側から秋田の民家など、全国の日本建築を見て回り、
日本建築が世界の建築とくらべ、極めて高い文化的価値があるとの評価を行った。
なかでも桂離宮を「涙が出るほど美しい」と絶賛している。
「桂離宮は、およそ文化を有する世界に冠絶した唯一の奇蹟である。」(26)
そして、世界的な奇蹟とまで評した桂離宮の源流は、
まだ中国の影響を受けなかった日本古来の伝統的な文化に由来しているという。
「原始日本の文化は、伊勢神宮においてその極致に達した。」(17)
「伊勢神宮は絶対に日本的なものであり、日本においてさえこれ以上日本的なものはどこにも存しないのである。」(17)
またタウトは、桂離宮を「天皇趣味」と絶賛するかたわら、日光東照宮を「将軍趣味」として酷評している。
「桂離宮の造営と時期を同じくして、徳川氏は日光に、あの野蛮なまでに浮華な社廟(東照宮)を建築した。」(168)
「日光では、ただ見るばかりで、考えるものはひともない。
ところが桂離宮では、思惟がなければなに一つ見ることができないのである。」(37)
本書を読むと、タウトが深く日本を愛していたことが分かる。
日本を愛した外国人の手によって、日本の建築文化は高く再評価されたのである。
古い本であるが、いま読んでもなんら遜色はない。
ドイツの建築家ブルーノ・タウトは日本滞在中に、
桂離宮をはじめ、伊勢神宮、白川郷、日本海側から秋田の民家など、全国の日本建築を見て回り、
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なかでも桂離宮を「涙が出るほど美しい」と絶賛している。
「桂離宮は、およそ文化を有する世界に冠絶した唯一の奇蹟である。」(26)
そして、世界的な奇蹟とまで評した桂離宮の源流は、
まだ中国の影響を受けなかった日本古来の伝統的な文化に由来しているという。
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またタウトは、桂離宮を「天皇趣味」と絶賛するかたわら、日光東照宮を「将軍趣味」として酷評している。
「桂離宮の造営と時期を同じくして、徳川氏は日光に、あの野蛮なまでに浮華な社廟(東照宮)を建築した。」(168)
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2014年3月18日に日本でレビュー済み
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さすが、よくぞ見つけたね。と思いました。
交通の不便な中を、飛び回り、日本の良いところを見つけていただいた。
一読に値する1冊です。
交通の不便な中を、飛び回り、日本の良いところを見つけていただいた。
一読に値する1冊です。
2017年1月11日に日本でレビュー済み
タウトの桂離宮讃美はよく知られているが、誤解されているとまではいわないが、一知半解の気はまぬがれない。タウト以前の日本の論者も桂離宮を評価していた事は確かだが、それはせいぜい、桂離宮の簡素さがモダニズムに通じているという表面の類似にすぎない。たしかにタウトもその様な指摘をしているが、彼は、桂離宮が「文化を有する世界に冠絶した唯一の奇跡」とまで絶賛する。それは、桂離宮には、パルテノンやゴシック大聖堂や伊勢神宮より「永遠の美」が示されているからだ。(26頁)そして、「桂離宮における同一の精神をもって創造せよ。(中略)桂離宮に示された原理こそ、絶対に現代的であり、また今日のいかなる建築にも完全に妥当するのである」(26頁)とまで言う時、タウトが世界の建築すべてに通じる美の規範を桂離宮に見いだしていた事がわかる。これは、日本特有の美ではなく。世界の建築すべてに当てはまる美である。その意味で、この書が「日本美の再発見」と訳者によって題されたのは、誤解を生む原因になったかもしれない。タウトは、ローカルな事柄から普遍的な事柄を論じたのだから。訳文がこなれているので、本当に惜しい。この題名がなければ、☆4つだったのに。残念!!