前の書評で最低の星1つだったので、本当だろうかと思って読んでみた。しかし、本書を読むと、最初に「考古学とはどういう学問」かが、ちゃんと書いてある。
“考古学研究者の任務は、時代と社会環境の産物であるわれわれ人類、そのわれわれの住む人類社会の形成過程を調査し復元することにある”
だから、考古学の使命は歴史学の使命とおおむね重複する。ただ、依拠する資料に違いがあるのみである。歴史学では通常、文献記録に立脚するが、考古学は人間活動の一切の痕跡である考古学的記録に立脚している。
あらゆる歴史は思想の歴史である。思想や意図は明白な行動や言葉に表現されなければならない。したがって、考古学的記録は、思想の表現体とも言える。チャイルドはこう語る。
“考古学的記録は、それが製作者や使用者の思想や生活様式を物語る場合にだけ価値をもつ”
さらに、考古学的記録として意味のあるのは、遺物が一定の状況のなかで発見された時だと言う。考古学的記録が骨董品や美術品と違うのはこの点である。チャイルドはこう語る。
“考古学的記録は意味のある共存関係をもって発見され型式群からなっている”
“人間行動の途方もない多様さは、このような型式を通してはじめて、科学的な扱いをうけることができる”
以上で、学としての考古学がはっきり分かった。しかし、本書の特徴は、やはり、具体的な考古学の方法について、図解入りで、具体的に分かりやすく紹介してある点だ。本書を読むと、痕跡に過ぎない遺物や遺構から、古代人の生活や文化を推量していく楽しさが随所に散りばめられている。私が評者なら、最高の星5つである。
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