私が、今や古めかしいともいえるこの本を読もうとしたのは、直接的には、最近のテレビ番組でケララの農業事情を見た時に、加藤さんがケララのことを書いておられたな、と思い出したからなのですが、同時に、その当時、加藤さんが、これらの国の社会主義をどのように見ていたかを、改めて今の時点で確かめてみたいと思ったからでした。
1950年代から60年代にかけて、社会主義は将来の希望を託す可能性をもってかなりの人々のこころの中に存在していました。しかし、現実の社会主義国はいくつかの小さくない問題を抱えていました。そんな時代、加藤さんは、いくつかの困難、それは外貨持ち出し制限や航空路の不備などでしたが、そんななかでも加藤さんはこれらの国を旅する機会を得ました。アジア・アフリカ作家会議の仕事のためでした。
これらの国または地域は、当時、社会主義の政権のもとにあり、低開発国として発展途上にあると同時にいろいろな違いも多く、加藤さんは、そうしたところに鋭く視線を向けます。
共産党政権の出来方は、これら三ヵ国(州)には違いがありました。ウズベック共和国は、ロシア革命により社会主義国になり、この時点で40年の歴史がありました。クロアチアは、ユーゴスラビアの一員として、第2次大戦下の対ナチスの抵抗を通じ社会主義国となり15年を経ていました。ケララ州が選挙による共産政権を世界で最初に実現したのが2年前のことでした。
加藤さんは、それらの地域を、実際に目で見て、現地の人々や作家会議関係者などとの会話を通して、経済発展の実態、衛生と教育を中心とした人々の生活、そして伝統的文化が社会主義のなかでどう扱われているか、などにつき統計データや見聞した事実を前にして考えます。
それらの結果には、加藤さんらしいユニークな視点、考察の仕方が随所に見られ大変魅力的です。わが国の、あるいは世界のこれからを考える時、加藤さんがこの本で示された視点、観点は学び取り活用する価値があるように感じました。
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ウズベック・クロアチア・ケララ紀行: 社会主義の三つの顔 (岩波新書 青版 69) 新書 – 2002/6/12
加藤 周一
(著)
社会主義による工業化をおし進めたソ連邦のウズベック共和国.非中央集権的な社会主義への道を歩んだユーゴスラビヤのクロアチア.議会主義によって平和革命をなしとげたインドの共産州ケララ.それぞれ独自な型の社会主義を建設したこれら三つの地域を,実際に踏査し,鋭い文明批評を加えたユニークで示唆に富む旅行記.
- 本の長さ212ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2002/6/12
- ISBN-104004150698
- ISBN-13978-4004150695
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2002/6/12)
- 発売日 : 2002/6/12
- 言語 : 日本語
- 新書 : 212ページ
- ISBN-10 : 4004150698
- ISBN-13 : 978-4004150695
- Amazon 売れ筋ランキング: - 625,616位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,342位日本文学(日記・書簡)
- - 2,573位岩波新書
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2015年3月12日に日本でレビュー済み
2009年12月30日に日本でレビュー済み
復刊されていたので慌てて購入して一読。別の評者も指摘されていましたが、45年前の著作とは思えない鋭い分析。この著作が並みの旅行記と違うところは、きちんと数字を示して状況を分析していること、謙虚な仕方ではあるが現地の人々とちゃんと議論をしていること。
羊の歌を学生時代に読んだきりでほんとに久しぶりに加藤周一さんの著作を読んだ次第ですが、やはり確固とした姿勢・原則を持った人の言うことは違います。
その後のユーゴやウズベックの事態を加藤さんがどのように考えていたのか、知りたくなりましたね。
羊の歌を学生時代に読んだきりでほんとに久しぶりに加藤周一さんの著作を読んだ次第ですが、やはり確固とした姿勢・原則を持った人の言うことは違います。
その後のユーゴやウズベックの事態を加藤さんがどのように考えていたのか、知りたくなりましたね。