無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
地球持続の技術 (岩波新書 新赤版 647) 新書 – 1999/12/20
- ISBN-104004306477
- ISBN-13978-4004306474
- 出版社岩波書店
- 発売日1999/12/20
- 言語日本語
- 本の長さ215ページ
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
商品の説明
メディア掲載レビューほか
環境保全対策の方向性を示す議論のなかには、非現実的なものも目につきます。
典型的なものが、江戸時代の循環型社会を理想とするような言い方です。自動車メーカーは、技術革新を通じていかに環境問題を克服するか、日々苦闘しています。そんな立場から見ると、時代をさかのぼる議論には違和感を覚えます。
その点、小宮山宏氏は、この本のなかで、現実的に達成可能な技術革新を積み上げながら、2050年に持続可能な社会を達成する「ビジョン2050」プロジェクトを提唱し、極めて論理的にあるべき環境対策のシナリオを示してくれます。
たとえば、二酸化炭素(CO2)の排出を減らすため、2050年には「いまに比べエネルギー効率を3倍、自然エネルギーを2倍にすべき」との目標を掲げます。
エネルギー効率を3倍に上げることは、いまのガソリンエンジンでは簡単なことではありません。ただ、世界の自動車メーカーが、その実用化を競っている燃料電池車は、まさに「エネルギー効率3倍」が目標になっています。
一方の自動車にとっての自然エネルギー活用は、バイオマス(生物資源)がカギを握っているでしょう。バイオマスはいまブーム気味に期待が膨らんでいます。なかには、自動車燃料はすべてバイオマス由来のエタノールなどで代替すべきとの意見もあります。そういう楽観論者からは、「自然エネルギー2倍」は少なすぎる目標かもしれません。
ただ、自動車燃料の多くをトウモロコシなどの作物に依存した場合、今度は食糧問題が深刻化します。そう考えると、一定割合のバイオマス由来の燃料を化石燃料に混ぜるという形になるはずで、「自然エネルギー2倍」は、現実的な目標だと思います。
CO2排出問題は、窒素酸化物(NOx)など、従来型の公害対策とはまったく異なります。NOxは技術革新によって限りなくゼロに近づけることが可能ですが、CO2の排出はエネルギーの消費そのものです。安易に理想論をかざすのでなく、いまの文明社会の現実を踏まえた議論が必要です。この本はその一つの考え方を示してくれます。
(日経エコロジー 2003/08/01 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
-- 日経BP企画
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (1999/12/20)
- 発売日 : 1999/12/20
- 言語 : 日本語
- 新書 : 215ページ
- ISBN-10 : 4004306477
- ISBN-13 : 978-4004306474
- Amazon 売れ筋ランキング: - 241,727位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
カスタマーレビュー
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
「日々のくらし」「ものづくり」といった読者層を意識した表現へのこだわりや、一般に馴染み
の薄い省エネルギーの理論値といった概念を比喩化するセンスによる。
狭い専門に閉じこもりがちな研究者や、現実から目を反らすエコロジストが多い中、地球環境
問題を解くカギはわれわれの技術が握っているのだという自負心と徹底したリアリズムには少
なからず期待感を覚える。
余談であるが、著者は日本トップレベルの研究者集団を統率する東京大学の総長として、任期
中に中長期的な戦略計画を策定している。舞台は変われども、本書の思想に通底するものがある
ように感じる。
復刻してはどうでしょうか。
素晴らしい内容です。大きなテーマを、大胆な近似(エネルギーを消費する活動を分類し、それらのエネルギー消費量を1、10、100、…とオーダーで設定)を行って枝葉を切り落として捉え、本質的な攻めどころを炙り出しています。
1999年にリリースされた本なので、東日本大震災も、欧州での風力発電の大きな伸びも予見出来ていません。方向性や数字感のズレもあります。しかし、CO2削減の必要性とその具体策を示している点や、原発の安全性に疑問を呈し、そこに期待していない点は先見の明と言えると思います。
筆者には是非、ビジョン2050の現代版のリバイズをして欲しいです。日本でも太陽光発電が系統を不安定にするほど増え、またCO2削減に対する大きな変化の中にある昨今の情勢を踏まえて。
筆者が理事長を勤める三菱総研が最近リリースした「2050年エネルギービジョン」は、総花的で数字感不足で、筆者自身が20年前に著したこの新書の方が説得力があるというのは皮肉なことです。
自分が御用学者を辞めることのほうがよほど地球持続に貢献する。
星ゼロでもいいくらいだ。
1999年が初版であるが、今こそ読むべき本である。というか、初版当時に読んでいれば、この8年近くの間、もっと違う行動ができたかもしれない。世の中で「環境問題」とか「地球温暖化」と言うけれど、これに対して我々が何が出来るのか、何をする必要があるのかについては、断片的であったり、結論的(するべきことのみが決まっている)であったりして、その行動が何をどう改善しているのか(改善する可能性があるのか)については、一般的にはあまり具体的に語られていないように思う(ゴミの捨て方だって、きちんと分別しているようで、実際にはどのあとの処理についてのきちんとした知識は無いのだ)。そういった点をこの本は細かく丁寧に解説し、何をすることが何を改善してゆくことになるのかを示してくれている。
きちんとした理解無しに、いわゆる「環境的な行動」をとることは逆に環境悪化に繋がる可能性もあるのだということを示しつつ、独りよがりにならず、皆が知恵を出し合って現状についての理解やとるべき行動についての情報共有や議論を進めることが重要であると語る本書は、地球のことを考える第一歩として読むべきものであると思う。小学生とかにきちんと読ませたい。いや、本当に勉強になりました。
基本的物理理論により一般向けに分かりやすく解説した本です。
身近な事例を使っての説明が多く、わが身を振り返り、考えさせられる部分が多々あります。
特に、人間によるエネルギー消費が分野別にどうなっているかを解説した部分では
素材産業に比べ組立て産業のエネルギー消費が意外に少ないことや、
全エネルギー消費に占める自家用車の割合がかなり高く、物理的には非常に無駄が多いことなど、
結構目から鱗が落ちます。
また、現状のエネルギー効率によって、リサイクルや省エネが無駄であるという論にも組せず、
理論的限界を見据えて、追求すべき技術課題を的確に示している点など、
長期的ビジョンに立った、目指すべき方向性を見事に示してくれます。
後はこのビジョンに沿った技術革新によって、2050年には経済活動がどうなるのか、
経済学者による検証に期待したいと思います。
行動には明確なビジョンが必要である。
環境問題の理解とその対策を考えるには、データに基づいた判断、科学的な視点が欠かせない。その上で、50年後を見据えた大きなビジョンが必要となる。
本書は2050年に向けたビジョンを与えてくれる。環境問題の核心を掴みたい人にとって格好の入門書である。科学者、技術者に読んで欲しい。研究や技術開発には大きなビジョンが必要であり、科学者の先輩から明確なメッセージを受け取ることができる。科学と関係ない職業の人にもお勧めだ。著者は、できる限り専門用語を使わずに説明するのが得意である。分量もコンパクトで、何をどうすべきかの議論を受け取れる。各論を寄せ集めた環境問題の入門書とは明確に異なる。まずは多くの人に読んで、議論の原点として、著者の提唱する「ビジョン2050」を一考して欲しい。
この本でおもに扱われているのは2番目の、エネルギーをいまよりもっと効率よく活かす技術だ。いまの人間活動には、まだまだエネルギーを効率よく使う余地が多くあるという。たとえば自動車。二酸化炭素排出の大きな要因となっている自動車ではあるが、理論的にいえばなんと燃料いっさいなしで走ることができるのだそうだ!(タイヤ・道路間の摩擦で生まれる熱を車の発進時に使えば、燃料は要らなくなるという)。
人間活動を各作業ごとに区分けして比で表すとすると、燃焼、還元は1000、吸熱、発熱反応は100、蒸発、凝縮、膨張は10、融解、凝固、加熱、冷却、分離は1、輸送、形成は0になるという(熱燃焼を100とする)。この数値を知っておけば、自分を含めた社会がしている行為がどのくらいのエネルギーを使っているかを考えることもできる。実体の掴みづらいエネルギーというものを数値として計算できるようになるので、たとえば「リサイクルはエネルギーの無駄づかい」といった話も誤解であることがよく理解できるようになる。
エネルギー問題の基本的な考え方がしっかりと身につく本だ。知っているようで知らなかったことが多いと気付かされる。数字の話もけっこう多く出てくるけれど、どれも無駄な情報はない。逆にこれらの基本的数値を把握しておけば、環境の時代を生きていく上でなにかと優位に立つことができるだろう。とくに、これから素材や製品の技術開発を目指すような方や、環境問題をビジネスチャンスとお考えの方には格好の入門書になると思う。