国際協力における世界最大の主体のひとつに国連がある。この場合の国際協力とは途上国の開発のみを指すものではなく、核兵器拡散防止や地球レベルでの環境保護、人権抑圧国への勧告など広義の国際間協力を指す。国連は時にそのような協力の企画者、或いは組織者ともなり、また単に世界190か国が話し合いのために集まる場を提供するということでもその崇高な目的を遂げようとする。その国連が、昨年設立60周年を迎えた。
本書はそのような契機を捉えて出版されたことは間違いないが、もうひとつの大事な要素は本書のタイトルでもわかるように米国と国連との対峙である。米国は国連を敵視或いは無視し、一方で国連は米国を厄介者扱いしている、というような世間の風評の真偽を、歴史的に考察したものである。新書としてはいささか専門的過ぎる表現もあり、初学者向きではないような気もするものの、60周年を契機に一度じっくりと国連というものを考えてみることは有意義であろうし、またその際の座標軸に米国を据えるのはユニークな試みだと思う。
著者の結論を私なりにまとめると以下の3点である。
1.米国と国連が常に仲が悪いような一般的な言い方は正確ではなく、時代によって両者(米国と国連)はその関係を変化させて来た。
2.そうは言うものの、米国には国際連盟の時代から超国家的な存在を疎ましく思うような考えが広くあり、多国間主義と平等主義を唱える国連とは今も相容れない思想がある。
3.かと言って、米国抜きの国連を考えるのは現実的ではなく、いかに米国を取り込みながら発展させていくかを考える方が国連にとっては生産的である。
本書を通してのカラーは概略上記3点に絞られるが、それ以外の歴史的な事実を知るだけでも大いに意味がある。例えば、国際連盟時代にも米国は単独行動を取った歴史があること、日本が提出した人種差別禁止案に米国は反対したこと、国連創設時に拒否権を考えたのはソ連であり、英米はそれに強く反対したことなどなど。時代と共に国は変わる。あたかも正義感と血気溢れる青年が、時代と共に既得権益に汲々とする老練な政治家になってしまうように。本書における米国の姿は、私にはそんな風に映った。
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国連とアメリカ (岩波新書 新赤版 937) 新書 – 2005/3/18
最上 敏樹
(著)
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- 本の長さ248ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2005/3/18
- ISBN-104004309379
- ISBN-13978-4004309376
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2005/3/18)
- 発売日 : 2005/3/18
- 言語 : 日本語
- 新書 : 248ページ
- ISBN-10 : 4004309379
- ISBN-13 : 978-4004309376
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- - 2,111位岩波新書
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2006年6月10日に日本でレビュー済み
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国連とアメリカとの関係は、今後の国際秩序を考える上で落とせない問題である。著者は本書で、国際連盟と国連の歴史を振り返り、アメリカがそれにどう関わってきたかを論じている。著者は、アメリカのなかに、国際協調の伝統とともに、自国例外主義の伝統があることを指摘し、90年代後半から後者が表面化した、と論じている。その上で著者はアメリカに、多国間主義に復帰するよう呼びかけている。
国際法・国際機構論の権威による著作だけに、国際連盟や国連の歴史について学ぶべき点があるが、私には著者の国際法至上主義、空想的主権平等主義、そして感情的なアメリカ批判が気になった。国際法学者として当然だが、著者は国際法の妥当性を自明の前提として、国家はそれを忠実に遵守すべきだ、とする。しかし、国際社会では、大国が気に入らない法を、国際世論の力で押し付けるのは元来無理である。現実的な国際法は大国が納得するものでなければならない。著者にはこうした視点が欠けている。
確かに、近年のアメリカの行動にはあまりに身勝手な面があり、アメリカが多国間主義に復帰するよう米国内外の世論を盛り上げることは重要だろう。しかし、著者が理想とする多国間主義は、国連総会型の一国一票方式であるようだ。しかし中国もブルネイも一票ずつの主権平等主義は空想的である。
著者は、アメリカの多国間主義への反発を、「せいぜい、革命に怒り、うろたえ、拙速に反革命に訴える国王のような姿である」と評し、アメリカは「平等を生きられぬ国」「合法性を生きられぬ国」ではないか、と書いているが、私にはこれは論理を尽くした学問的批判だとは思えない。単独行動主義に関する著者の概念整理は十分ではないが、そのことが著者の批判が漠然として感情的な形をとった理由かもしれない。
読んで損する本ではないが、国際政治の現実を踏まえぬ机上の空論ではないか。
国際法・国際機構論の権威による著作だけに、国際連盟や国連の歴史について学ぶべき点があるが、私には著者の国際法至上主義、空想的主権平等主義、そして感情的なアメリカ批判が気になった。国際法学者として当然だが、著者は国際法の妥当性を自明の前提として、国家はそれを忠実に遵守すべきだ、とする。しかし、国際社会では、大国が気に入らない法を、国際世論の力で押し付けるのは元来無理である。現実的な国際法は大国が納得するものでなければならない。著者にはこうした視点が欠けている。
確かに、近年のアメリカの行動にはあまりに身勝手な面があり、アメリカが多国間主義に復帰するよう米国内外の世論を盛り上げることは重要だろう。しかし、著者が理想とする多国間主義は、国連総会型の一国一票方式であるようだ。しかし中国もブルネイも一票ずつの主権平等主義は空想的である。
著者は、アメリカの多国間主義への反発を、「せいぜい、革命に怒り、うろたえ、拙速に反革命に訴える国王のような姿である」と評し、アメリカは「平等を生きられぬ国」「合法性を生きられぬ国」ではないか、と書いているが、私にはこれは論理を尽くした学問的批判だとは思えない。単独行動主義に関する著者の概念整理は十分ではないが、そのことが著者の批判が漠然として感情的な形をとった理由かもしれない。
読んで損する本ではないが、国際政治の現実を踏まえぬ机上の空論ではないか。
2010年3月20日に日本でレビュー済み
対立と支配のどちらかしか選択肢がないのだろうか。
外交活動をしていないと、なかなかアメリカが国連にどれだけ寄与してきたかはわからない。
多くの有用な参考文献を示しているので、それぞれによく読むと分ってくるのかもしれない。
2003年から2005年までにかけての事態は、かなり細かく理解できた。
国際社会は、いろんな視点でみないといけないことが分った。
外交活動をしていないと、なかなかアメリカが国連にどれだけ寄与してきたかはわからない。
多くの有用な参考文献を示しているので、それぞれによく読むと分ってくるのかもしれない。
2003年から2005年までにかけての事態は、かなり細かく理解できた。
国際社会は、いろんな視点でみないといけないことが分った。
2006年2月27日に日本でレビュー済み
国連とアメリカとの関係を国連設立当初まで遡って分析しており、ブッシュ政権以後の事象を近視眼的にとらえてアメリカの単独行動主義を裁断する書とはまったく異なる内容。このあとも、10年、20年先にもこの書の中で示された切り口で「国連とアメリカ」を考えることが可能だと思う。そのような視点をこのような分かりやすい、ハンディな形で提供してくれるのは、とてもありがたい。
著者の目指す多国間主義を目指すべき方向のものだと個人的にも思う一方で、読み進むにつれて、「違法」という概念について考えさせられたのも事実。これまでの諸国間の平和に向けた取組の結晶とも言える、「国際法」からのアプローチを是としても、世界国家がなく、したがって法を強制する執行機関もない下で、「国際的な違法」の概念と人々の素朴な感情との間に齟齬が生じたときに、どのような処方箋があり得るか。国際的に適法な行為を貫くことと、自国民がそれを正当性あるものとして受け入れるかは別。国内政治の観点からのリスクをとりつつ、冷静な目で自国の行動を客観視し、ともすれば興奮して感情に流される世論を説得するリーダーシップが問われている、といえば簡単だが、世の中、そうはうまくいかない。しかも、アメリカのように、唯一の超大国として君臨する国の国民にとって、少なくとも自己の安全を(少なくとも見ため上は)犠牲にして多国間主義に殉じるなど、現実感がない。著者は、国際世論を形成する諸国民の個々の力にも期待するが、その歩みを着実なものとするにはどうすればいいのだろうか。その意味で、読む側にも、考え、行動することを突きつける本だ。
立花隆氏の著作の中に「ある本に書いてあることが理解できない場合、それは分かるように書かなかった側に殆どの責任がある」という意味のことが書いてあったが、この著者はその点での配意もすばらしい。テーマは深く、難しく、読後すぐに自己の考えをまとめ、述べるなど自分ではとても無理であるが、心に、くさびは残してくれた。
著者の目指す多国間主義を目指すべき方向のものだと個人的にも思う一方で、読み進むにつれて、「違法」という概念について考えさせられたのも事実。これまでの諸国間の平和に向けた取組の結晶とも言える、「国際法」からのアプローチを是としても、世界国家がなく、したがって法を強制する執行機関もない下で、「国際的な違法」の概念と人々の素朴な感情との間に齟齬が生じたときに、どのような処方箋があり得るか。国際的に適法な行為を貫くことと、自国民がそれを正当性あるものとして受け入れるかは別。国内政治の観点からのリスクをとりつつ、冷静な目で自国の行動を客観視し、ともすれば興奮して感情に流される世論を説得するリーダーシップが問われている、といえば簡単だが、世の中、そうはうまくいかない。しかも、アメリカのように、唯一の超大国として君臨する国の国民にとって、少なくとも自己の安全を(少なくとも見ため上は)犠牲にして多国間主義に殉じるなど、現実感がない。著者は、国際世論を形成する諸国民の個々の力にも期待するが、その歩みを着実なものとするにはどうすればいいのだろうか。その意味で、読む側にも、考え、行動することを突きつける本だ。
立花隆氏の著作の中に「ある本に書いてあることが理解できない場合、それは分かるように書かなかった側に殆どの責任がある」という意味のことが書いてあったが、この著者はその点での配意もすばらしい。テーマは深く、難しく、読後すぐに自己の考えをまとめ、述べるなど自分ではとても無理であるが、心に、くさびは残してくれた。
2005年6月9日に日本でレビュー済み
都合の良いときだけ国連を利用し、都合が悪くなると無視、あるいは分担金を出さないぞ、と恫喝し挙げ句の果てには国際機関から脱退までしてしまう、そんな子供のような振る舞いをする超大国米国。
何故が米国をそうさせるのか?
著者は時を遡り国際連盟&国際連合の設立、そしてあちこちで多発した紛争……それらを例に、その時々の米国政府がある時は国連を利用し、またある時は反対に国連を無視して自国の政策を突き進めたか?を一つ一つ論証していきます。
その中で当初は国際協調の理念を持っていた米国が如何なる理由で単独行動主義へと舵を切っていったかが事実と共に述べられております。
今の米国と国連の関係を理解するに最良の一冊。
新書ですが情報量は専門書並。読み応え&学ぶべき所が多々あります。
何故が米国をそうさせるのか?
著者は時を遡り国際連盟&国際連合の設立、そしてあちこちで多発した紛争……それらを例に、その時々の米国政府がある時は国連を利用し、またある時は反対に国連を無視して自国の政策を突き進めたか?を一つ一つ論証していきます。
その中で当初は国際協調の理念を持っていた米国が如何なる理由で単独行動主義へと舵を切っていったかが事実と共に述べられております。
今の米国と国連の関係を理解するに最良の一冊。
新書ですが情報量は専門書並。読み応え&学ぶべき所が多々あります。
2005年3月31日に日本でレビュー済み
がっかりした。
昨年アメリカの国連政策を実証的に分析した、河辺一郎『国連政策』(日本経済評論社)が出されたが、これを目から鱗が落ちる思いで読んだばかりだった。加えて、原著はやや古いが、ベニスの『国連を支配するアメリカ』(文理閣)の翻訳も最上の新著の直前に出されている。これらの本をふまえて最上は書いたに違いないだけに、本書に期待したのだが、期待はずれだった。実証的でないばかりか、見方の独自性も弱く、議論の密度も薄い。日本での議論に資する面も少ない。日本から見たアメリカと国連という観点から最上と河辺を比べると、最上の最大の長所は、河辺の本が充実しているからこそ読むのに時間がかかるのに対して、常識的な内容ゆえに楽に読めることではないか。大学新入生は最上を、上級生はさらに河辺を読むことを勧める。
それにしても最上はこれらの本を読んでいないのだろうか。そう思って本書巻末の文献リストを見ると、河辺の名もベニスの名もない。ベニスはともかくも、最上は河辺と仲が悪いのか。また、いくら最近の編集者の質が落ちているとは言っても、自分が手がけている本と同じテーマの新刊ぐらいには目を通さないのだろうか。編集者が読んでいれば、著者にそのことを尋ねるだろうから。
その内容よりも、学会の内輪話や出版業界の内実への興味の方が募る本だ。これを元平和学会会長が書いて岩波が出すとは、情けない。
昨年アメリカの国連政策を実証的に分析した、河辺一郎『国連政策』(日本経済評論社)が出されたが、これを目から鱗が落ちる思いで読んだばかりだった。加えて、原著はやや古いが、ベニスの『国連を支配するアメリカ』(文理閣)の翻訳も最上の新著の直前に出されている。これらの本をふまえて最上は書いたに違いないだけに、本書に期待したのだが、期待はずれだった。実証的でないばかりか、見方の独自性も弱く、議論の密度も薄い。日本での議論に資する面も少ない。日本から見たアメリカと国連という観点から最上と河辺を比べると、最上の最大の長所は、河辺の本が充実しているからこそ読むのに時間がかかるのに対して、常識的な内容ゆえに楽に読めることではないか。大学新入生は最上を、上級生はさらに河辺を読むことを勧める。
それにしても最上はこれらの本を読んでいないのだろうか。そう思って本書巻末の文献リストを見ると、河辺の名もベニスの名もない。ベニスはともかくも、最上は河辺と仲が悪いのか。また、いくら最近の編集者の質が落ちているとは言っても、自分が手がけている本と同じテーマの新刊ぐらいには目を通さないのだろうか。編集者が読んでいれば、著者にそのことを尋ねるだろうから。
その内容よりも、学会の内輪話や出版業界の内実への興味の方が募る本だ。これを元平和学会会長が書いて岩波が出すとは、情けない。
2005年5月15日に日本でレビュー済み
本書は、国際法的視点からイラク戦争やその他のアメリカの「戦争」の法的正当性を疑うことから始まります。そして、アメリカは自ら主導して作った国連体制下で、なぜ多国間主義ではなく単独行動主義に傾斜していこうとしているのかを、国際連盟設立時から歴史をさかのぼってみていっています。また、著者の専攻は国際機構論・国際法ですが、国際政治とアメリカ政治の視点で見ていこうとしています。
まず、ウィルソン大統領が目指し挫折した国際連盟創設期や、サンフランシスコ会議での国連憲章採択に至るまでの国連創設期において、いかにアメリカが国内の単独主義の反対勢力や国際政治の中で多国間主義を追求しようとしてきたのかということを説明します。その後、第三世界勢力の誕生の中で変化してきた国連システム、そしてその国連から離反していったアメリカについて、総会と安保理との確執・朝鮮戦争・スエズ危機・キューバ危機・ニカラグア事件の例を用いながら見ていきます。その後、湾岸戦争でいったん国連システムの下に入ったかと思わせつつも、ソマリア派兵失敗を契機として、アフガニスタン戦争・イラク戦争と国連から離反していくアメリカが描かれています。本書において鮮やかに描かれているのは、国連から離反していくプロセスにおいて、アメリカがいかに多国間枠組みを軽視し、国際法の法的正当性を踏みにじっていったという過程です。
また、現在日本で話題になっている、集団的自衛権がどのように生まれたのかについての記述もあり、アメリカと国連について歴史を通して多国間主義の観点から考えるのにはお勧めの一冊だと思います。
まず、ウィルソン大統領が目指し挫折した国際連盟創設期や、サンフランシスコ会議での国連憲章採択に至るまでの国連創設期において、いかにアメリカが国内の単独主義の反対勢力や国際政治の中で多国間主義を追求しようとしてきたのかということを説明します。その後、第三世界勢力の誕生の中で変化してきた国連システム、そしてその国連から離反していったアメリカについて、総会と安保理との確執・朝鮮戦争・スエズ危機・キューバ危機・ニカラグア事件の例を用いながら見ていきます。その後、湾岸戦争でいったん国連システムの下に入ったかと思わせつつも、ソマリア派兵失敗を契機として、アフガニスタン戦争・イラク戦争と国連から離反していくアメリカが描かれています。本書において鮮やかに描かれているのは、国連から離反していくプロセスにおいて、アメリカがいかに多国間枠組みを軽視し、国際法の法的正当性を踏みにじっていったという過程です。
また、現在日本で話題になっている、集団的自衛権がどのように生まれたのかについての記述もあり、アメリカと国連について歴史を通して多国間主義の観点から考えるのにはお勧めの一冊だと思います。
2007年5月13日に日本でレビュー済み
前著の『人道介入』もそうであったが、問題点を的確に捉え、読みやすく書くという点では、良書であろう。物書きの一人としては見習いたい。クリントン政権までは、どちらかといえば、国連とは米国の道具のように言われていたが、ブッシュ政権では一転して米政権は国連からも暴走し始めた。その背景、その法的問題等などについて分かりやすく書いてあります。