2005年の本。なので、最新の中国事情ではない。
しかし、中国経済の構造的な矛盾に切り込んでいる点で、現在の中国理解にも多くの示唆を与えるはずだ。
著者のいう矛盾とは、要するに「計画経済時代の体制を温存したまま、市場開放を進めている」こと。
すなわち、官僚主導で上位下達式、民主化運動や政府批判に対しては抑圧的な体制のもとで、地方政府のガバナンスは骨抜き。
省長や市長は身内の経営する私物化された「国営企業」を優遇し、民間企業は冷遇される(近年中国で独禁法が制定された背景事情)。インフラ整備は省長や市長の業績になるため、借入金に依存した大規模プロジェクトが陸続と進行し、地方政府の財政は悪化。
一方、強制収用で土地を失った「失地農民」は「民工」となって都市部へ流入するが、待っていたのは劣悪な環境での低賃金労働…(なお、中国では土地は国有で、個々の人民は「土地使用権」を持つが、この使用権の内容は明確ではなく、ために地方政府が強制収用を行いやすかったようだ。近年物権法が制定された狙いは、この点を明確にするため。)。
といったように、一貫して「市場経済と政治体制の矛盾」を過剰なまでに危険視する論調なので、多少割り引いて読んだほうがいいが、少なくとも現代中国のガバナンス問題について、印象論ではなく、構造的な理解が得られる本。
私自身、本書を読んでから、中国関係の新聞記事、雑誌記事を読むときの深さが全く変わったのを感じる。
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中国激流: 13億のゆくえ (岩波新書 新赤版 959) 新書 – 2005/7/20
興梠 一郎
(著)
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- ISBN-10400430959X
- ISBN-13978-4004309598
- 出版社岩波書店
- 発売日2005/7/20
- 言語日本語
- 本の長さ242ページ
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2005/7/20)
- 発売日 : 2005/7/20
- 言語 : 日本語
- 新書 : 242ページ
- ISBN-10 : 400430959X
- ISBN-13 : 978-4004309598
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2012年8月4日に日本でレビュー済み
2007年2月24日に日本でレビュー済み
この本はとても良い本だ。空前のスケールで経済成長を続ける中国の内側には、以前大きな混沌があることが良く判った。興梠さんの本は初めてだが、中国ものでは今後欠かせない著者となった。
興梠さんの魅力は、丹念に事実を並べられる中国への精通度、多数の現象から大きな動きを描き出せる中国への深い理解力だ。読者から見ると、本当に頼もしい中国の専門家だ。その眼差しには、恐怖心もなく、軽蔑心もない。淡々としているがどこか優しげでもある。今後の中国の課題も押さえられているので、今後についても提示してくれている。そしてなにより新鮮だったのは、生活者のレベルでの語り口であることだ。この為、共産圏という異質さ由来の難解さはなく、非常に読みやすい。
興梠さんのような中国通が日本にいることはとても喜ばしいことだと思う。この本は多くの人に広く読まれるべきだと思う。
興梠さんの魅力は、丹念に事実を並べられる中国への精通度、多数の現象から大きな動きを描き出せる中国への深い理解力だ。読者から見ると、本当に頼もしい中国の専門家だ。その眼差しには、恐怖心もなく、軽蔑心もない。淡々としているがどこか優しげでもある。今後の中国の課題も押さえられているので、今後についても提示してくれている。そしてなにより新鮮だったのは、生活者のレベルでの語り口であることだ。この為、共産圏という異質さ由来の難解さはなく、非常に読みやすい。
興梠さんのような中国通が日本にいることはとても喜ばしいことだと思う。この本は多くの人に広く読まれるべきだと思う。
2006年2月24日に日本でレビュー済み
よく中国を訪問しますが、実情を率直に取材されています。
中国の現代の問題は、都市と地方の格差などさまざまな面で矛盾と軋轢が深まっています。これを克服するために政治権力をもちいている訳ですが、かえって官僚の汚職などが多発し、悪循環を起こしているのが現状です。
資本主義的な政治システムを作っていくことは必要なことですが、経済格差の是正などを考えると、問題は簡単には解決するものではありません。
内容が多少難しくて敬遠されがちですが、隣の国の実情を知っておくことは必要です。
中国の現代の問題は、都市と地方の格差などさまざまな面で矛盾と軋轢が深まっています。これを克服するために政治権力をもちいている訳ですが、かえって官僚の汚職などが多発し、悪循環を起こしているのが現状です。
資本主義的な政治システムを作っていくことは必要なことですが、経済格差の是正などを考えると、問題は簡単には解決するものではありません。
内容が多少難しくて敬遠されがちですが、隣の国の実情を知っておくことは必要です。
2005年7月29日に日本でレビュー済み
気鋭の中国研究者が、激動する中国社会を多面的に活写。とても具体的でリアルな話が満載で面白いです。
いま中国では「ラテンアメリカ化のリスク」というイシューが話題を呼んでいるという。「(経済は)一定のレベルまで発展すると臨界点に達する。その臨界点を克服すれば、欧米のように全体的に豊かになれる。だが、失敗すれば、ラテンアメリカのように貧富の差が拡大し不安定になる」
いわば、国として「のるかそるか」というところに来ているのが今の中国。
「反日暴動」など表面的な事象の下で、中国という巨大な国が、呻きながら、軋みながら、強烈な社会変動を起こしていることを本書は実によく伝えている。
いま中国では「ラテンアメリカ化のリスク」というイシューが話題を呼んでいるという。「(経済は)一定のレベルまで発展すると臨界点に達する。その臨界点を克服すれば、欧米のように全体的に豊かになれる。だが、失敗すれば、ラテンアメリカのように貧富の差が拡大し不安定になる」
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「反日暴動」など表面的な事象の下で、中国という巨大な国が、呻きながら、軋みながら、強烈な社会変動を起こしていることを本書は実によく伝えている。
2005年7月31日に日本でレビュー済み
中国で大規模な反日デモが起きて以来、「現代中国 グローバル化のなかで」の続編を切望しておりましたが、ついに出ました。
ゴードン・チャンの「やがて中国の崩壊が始まる」や何清漣の「中国現代化の落とし穴」などと合わせて読むと、日本で新聞やテレビだけを見ていては見えてこない現代中国のリアルな苦しみが立体的に浮かび上がって来ると思います。
日本人はもちろん、日本語を読める中国人にも是非読んで欲しい一冊。
ゴードン・チャンの「やがて中国の崩壊が始まる」や何清漣の「中国現代化の落とし穴」などと合わせて読むと、日本で新聞やテレビだけを見ていては見えてこない現代中国のリアルな苦しみが立体的に浮かび上がって来ると思います。
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