岡仁詩氏といえば、いわずと知れた同志社大学ラグビー部の顔である。その岡さんの半生をまとめたのが本書です。
タイトルにもあるとおり、岡さんを源流とした多数の水脈が京都・関西を中心に日本ラグビー界の隅々にまで行き渡っていることが判ります。それは関東を源に発するものとは質を異にし、それは岡さんのパーソナリティと京都という風土が大きく影響していることが良くわかります。
それら影響を受けた面々を見てみると、あらためてその凄い陣容に驚きます。宮地克実氏(元三洋電機ラグビー部監督)から往年の名ウィング坂田好弘氏、日本代表のロックを支えた林敏之、大八木淳史両氏、前日本代表監督萩本光威氏、ご存知平尾誠二氏等等。日本ラグビー界に大きな影響を与えた方々のオンパレード。
私も学生時代に同志社大学と対戦する身でありながら、当時のスターティングメンバーの凄さと憧れの感情は禁じえないものでした。ゴア木村(プロップ)、大八木を筆頭とした破壊力のあるフロントファイブに浦野、武藤という運動量豊富なバックロー陣から供給されたボールが、SH児玉からSO松尾、CTB平尾へ球が展開されたときの心躍る感じは忘れられないものがありました。これらの才能溢れるメンバーが、それこそ自由奔放にグラウンドを駆け巡り獲得するトライは、何か必然的なものを感じたものです。
岡氏への影響を与えた人物として星名奏氏の半生も語られています。私は星名氏のことを伝聞(先輩やOBから)でしか聞いたことがなく伝説上の人でありましたが、ここにこれだけ詳しく語られているのは非常に嬉しく、「こんな人だったのか」と感慨にふけってしまいました。このことも本書の大きな価値であるとも思います。
本書は、岡氏の半生を綴ることで関西ラグビー界の復権と日本ラグビー界発展の一つの考え方を提示していると思います。
ラグビーファンの方は必見の一冊です!
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
ラグビー・ロマン: 岡仁詩とリベラル水脈 (岩波新書 新赤版 1037) 新書 – 2006/9/20
後藤 正治
(著)
- 本の長さ231ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2006/9/20
- ISBN-104004310377
- ISBN-13978-4004310372
この著者の人気タイトル
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2006/9/20)
- 発売日 : 2006/9/20
- 言語 : 日本語
- 新書 : 231ページ
- ISBN-10 : 4004310377
- ISBN-13 : 978-4004310372
- Amazon 売れ筋ランキング: - 296,439位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
カスタマーレビュー
星5つ中4.9つ
5つのうち4.9つ
12グローバルレーティング
評価はどのように計算されますか?
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2007年2月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2007年2月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ラグビー指導における「教育関係者」の果たす、また果たしてきた役割を再確認する時期に来ている。営利主義、成果主義がはびこるこの社会において、ラグビーの世界にも何を勘違いしているのか、これらの諸悪が忍び寄っている。
それらを完全に払拭し、社会を正常化すらする力を岡先生のこの書はもっている。
ラグビー関係者だけでなく、「教育」に携わる方々にもぜひ読んでもらいたい一冊である。
それらを完全に払拭し、社会を正常化すらする力を岡先生のこの書はもっている。
ラグビー関係者だけでなく、「教育」に携わる方々にもぜひ読んでもらいたい一冊である。
2006年11月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
泣き虫先生こと伏見工業・山口、土佐犬のような風貌の三洋電機・宮地、ラグビー界のインテリジェンス・平尾。一時代を築いた名将達。日本代表SOにしてワールドの頭脳・松尾、荒武者にして誰もが知る名ロック・大八木、誰よりも好きだった「壊し屋」・林。胸を躍らせてその身体の動き、まなざしを食い入るように見つめた名選手達。これらの人たちはみんな岡仁詩からパスを受けたんだなあとしみじみ感じ入る。カリスマ・明治の北島と比肩するほどの指導力は、しかし、深く静かに人々の心に染み渡る。「サムシング・ディファレント」「自由」という言葉に象徴されるこの人物は人に自らの考えを強いず、常に選手達に考えさせ決定させる。「自由」のリスクを引き受け、「自由」の素晴らしさを表現させる。それは時に愚直で血反吐を吐く思いも経験し、時にトリッキーで下手すれば周囲の失笑を買いかねないが、今のラグビーを観ていて、いまひとつ熱くなれないのは、悪い意味でシステマティックでリスクを取らない「お上品」なゲームが多いからか? 面白いラグビーとは、野球やサッカー以上に泥臭く、汗臭い中で、必死に考え、様々な障害を潜り抜けようとする「あがき」にあると思えて仕方ない。そういう意味で、岡仁詩のこの評伝は熱く滾る思いを思い出させ、現在のスポーツ、ひいては社会全般にはびこる「お上品さ」を打ちのめす力が秘められている。折にふれ紹介されるエピソードも心を打つ。三洋の宮地が岡を訪れた話は特に印象に残っている。
2006年10月5日に日本でレビュー済み
ラグビーにそれ程興味もない私が、何ともいえないタイトルがつけられた本書を手に取ったのは、著者の作品のファンだからという理由しかないのだが、素晴らしい指導者であると同時にラグビーというスポーツの枠を超えた魅力を持つ人物を、それに見合う力量(鏡のようにその人物の魅力を素直に描くという意味での力量)を持つ作家が描いた素晴らしい評伝という感想しか思いつかなかった。
リベラルという言葉は本来、規則や習慣にとらわれず、自由に各人の個性に基づいた思想や行動を求めること、といった意味を持つ言葉のはずである。
しかし、それが政治の世界で使われるとなんだか胡散臭く感じられたり、単に反権力的な意味だけで使われていたりすることも多いので、個人的には使い方が難しい言葉の一つではないかと思っていたのだが、星名と岡が同志社大ラグビー部に根付かせたものは、間違いなく本来の意味でのリベラルな思想であった。
そう考えると本書はやはりこのタイトルしかないのだろう。
リベラルな思想も、それを部員達に無理強いした段階で、思想と指導方法が矛盾してしまうし、無理強いしなくとも肝心の選手達が自主性を持たなかったりその意味をはき違えたりしたらチームは崩壊してしまう。指導者にとっては最も忍耐を強いる指導法だと思うのだが、その忍耐を顔に出してしまえば部員はついてこなくなるかもしれない。その困難なことを成し遂げた彼らは理論と人間的魅力の両方が備わった人物だったに違いない。
本書の帯にはアマチュアスポーツの精神の原点と書かれている。そして、著者は試合の“勝負”に限っては彼らの思想の限界にも触れている。しかし、その限界を乗り越えたとき、それは究極のプロ精神になるのではなかろうか。どんな競技でもいい、そんなチームをいつの日か見てみたいものである。
リベラルという言葉は本来、規則や習慣にとらわれず、自由に各人の個性に基づいた思想や行動を求めること、といった意味を持つ言葉のはずである。
しかし、それが政治の世界で使われるとなんだか胡散臭く感じられたり、単に反権力的な意味だけで使われていたりすることも多いので、個人的には使い方が難しい言葉の一つではないかと思っていたのだが、星名と岡が同志社大ラグビー部に根付かせたものは、間違いなく本来の意味でのリベラルな思想であった。
そう考えると本書はやはりこのタイトルしかないのだろう。
リベラルな思想も、それを部員達に無理強いした段階で、思想と指導方法が矛盾してしまうし、無理強いしなくとも肝心の選手達が自主性を持たなかったりその意味をはき違えたりしたらチームは崩壊してしまう。指導者にとっては最も忍耐を強いる指導法だと思うのだが、その忍耐を顔に出してしまえば部員はついてこなくなるかもしれない。その困難なことを成し遂げた彼らは理論と人間的魅力の両方が備わった人物だったに違いない。
本書の帯にはアマチュアスポーツの精神の原点と書かれている。そして、著者は試合の“勝負”に限っては彼らの思想の限界にも触れている。しかし、その限界を乗り越えたとき、それは究極のプロ精神になるのではなかろうか。どんな競技でもいい、そんなチームをいつの日か見てみたいものである。
2006年9月25日に日本でレビュー済み
清宮でもなく、春口でもなく、岡仁詩。
そこに著者のラグビーへの想いを見る。
商業主義との融合・勝利至上主義から来るトライ後のくだらないパフォーマンス。それに対し、ラグビーを楽苦美あるいは楽苦備と書くことが多い岡。著者は岡に光を当てることによって、鮮やかに前者を浮かび上がらせる。もう25年も前の退場事件にかなりの枚数を割いているのも、「指導力」の春口のコメントを意識してのものだろう。
この名著が低迷し、迷走する日本ラグビーに対する一助になることを切に願う。
しかし、この本、関西ではそこそこ売れるかもしれないが、関東では見向きもされないであろう。にもかかわらず、出版した岩波書店と後藤正治に大きな拍手を送りたい。
そこに著者のラグビーへの想いを見る。
商業主義との融合・勝利至上主義から来るトライ後のくだらないパフォーマンス。それに対し、ラグビーを楽苦美あるいは楽苦備と書くことが多い岡。著者は岡に光を当てることによって、鮮やかに前者を浮かび上がらせる。もう25年も前の退場事件にかなりの枚数を割いているのも、「指導力」の春口のコメントを意識してのものだろう。
この名著が低迷し、迷走する日本ラグビーに対する一助になることを切に願う。
しかし、この本、関西ではそこそこ売れるかもしれないが、関東では見向きもされないであろう。にもかかわらず、出版した岩波書店と後藤正治に大きな拍手を送りたい。
2006年11月13日に日本でレビュー済み
同志社の伝統や、岡の名前は知ってはいたが、ここで明らかにされる、新しいものを取り入れるこころや、自主性を尊重する姿勢は、予想を越えるものだった。
少し前のタテの明治・ヨコの早稲田、といったような型にはめる方が、目前の勝利には近づけるだろう。
その道をとらず、キャプテン・レギュラーの選出から、戦術・練習まで、学生自身に任せ続ける。その姿勢には、ため息が出るほどだ。
近年のラグビーは、タテorヨコといった単純なものではなく、トータルなラグビーでないと勝てないようになっているが、どのチームも似た方向に収斂してしまっているようだ。
勝ち続けることで成長する、というものもあろうが、あらためて岡イズムに魅力を感じる。
今、ラグビーやスポーツに限らず、企業ではグローバルな競争が進み、社員にも成果主義が当たり前になってきている。
その瞬間々々の競争力を最大にしようとし続けることが、果たして、人、社会全体として豊かになる道につながるのだろうか?
そんなことも考えさせられる。
少し前のタテの明治・ヨコの早稲田、といったような型にはめる方が、目前の勝利には近づけるだろう。
その道をとらず、キャプテン・レギュラーの選出から、戦術・練習まで、学生自身に任せ続ける。その姿勢には、ため息が出るほどだ。
近年のラグビーは、タテorヨコといった単純なものではなく、トータルなラグビーでないと勝てないようになっているが、どのチームも似た方向に収斂してしまっているようだ。
勝ち続けることで成長する、というものもあろうが、あらためて岡イズムに魅力を感じる。
今、ラグビーやスポーツに限らず、企業ではグローバルな競争が進み、社員にも成果主義が当たり前になってきている。
その瞬間々々の競争力を最大にしようとし続けることが、果たして、人、社会全体として豊かになる道につながるのだろうか?
そんなことも考えさせられる。
2007年5月24日に日本でレビュー済み
先日、亡くなった「強豪同志社ラグビー部」を作り上げた岡仁詩とその周辺の人物にスポットをあてている。
自主性を重んじた岡の指導。
それが、見ていて面白い同志社ラグビーを作り上げたのだ。
だがその裏に、岡が密かに心に秘めた思いがあるということが、この本を読んで分かった。
自主性を重んじた岡の指導。
それが、見ていて面白い同志社ラグビーを作り上げたのだ。
だがその裏に、岡が密かに心に秘めた思いがあるということが、この本を読んで分かった。
2006年9月29日に日本でレビュー済み
本書にも出てくるが、退場事件の翌年のインタビューには、心底泣かされたことをはっきりと思い出す。若かった私は、これぞ究極のダンディズム・ハードボイルドの具現化と思ったものである。早稲田大西、明治北島に比べ、能力・実績のわりにいまひとつスポットライトが当たらない人であるが、これを機に見直されてしかるべき人物だと思う。日本代表監督問題で協会は大揺れだが、こういう重鎮の意見も参考にしてほしい。近鉄西本監督・阪急上田監督と同じにおいがする。私はこういう人は好きだなぁ。