「第1章:『聞く』力」「第2章:戯曲を読む」「第3章:稽古場から」「第4章:『時代と記憶』に向き合う」「第5章:世界の演劇人と出会う」「第6章:俳優とはなんだろう」「第7章:演出家になるまで」。
第7章から読むとわかりやすいかもしれない。著者が両親の死後、初めて父母の結婚の関係を知り、父が演劇に関心をもっていたこともあって、その方面に自然と興味が向い、その後ベェートーヴェンのピアノ・ソナタやドストエフスキーにのめり込み、さらに大学に入って教授に能舞台や演劇を紹介してもらったことが詳しく書かれている。要するに、著者はいつも若い俳優に自分を知れと言ってきたのに、自身は意外と自分を知ろうとしなかったので、その作業をこの章で行っているのである。
そのことを踏まえて、著者が演出家になった契機が偶然だったこと、演出の方法論は意識していないで、戯曲を読んで「えっ、これ、どうやって芝居にしたらいいのだろう」という想いがわくと、それに挑んでいくと語っている。著者による自身の過去の回顧を知ると、なぜ演劇では「聞く」ということが大事なのか、言葉の力に重きをおくのか、ひゃくもあるそれぞれの感情の裏付けを与えて声にだす練習が大事なのか、演劇教育が文化として根づかなければならないのか、などの他章で力説されたことの含意がなんとなくわかってくる。
海外での演出家、俳優との交流から得られた演劇観は、すばらしいと思う。また、戦争の惨禍が忘れられてはならないという考え方には共感がもてた。巻末に「『ロマンス』の演出日誌」がある。臨場感がある。

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演出家の仕事 (岩波新書 新赤版 1105) 新書 – 2007/11/20
栗山 民也
(著)
- ISBN-104004311055
- ISBN-13978-4004311058
- 出版社岩波書店
- 発売日2007/11/20
- 言語日本語
- 本の長さ228ページ
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2007/11/20)
- 発売日 : 2007/11/20
- 言語 : 日本語
- 新書 : 228ページ
- ISBN-10 : 4004311055
- ISBN-13 : 978-4004311058
- Amazon 売れ筋ランキング: - 89,639位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 334位演劇 (本)
- - 486位岩波新書
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上位レビュー、対象国: 日本
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2012年1月13日に日本でレビュー済み
以前、栗山さんが演出をなさる舞台に役者として参加する機会を頂きました。
演劇経験もことさら無い私は、もちろん演出家がどんなお仕事をするのかもあまりわからないまま、参加したのですが、
大変分かりやすく、1つ1つ丁寧な指導をなさる方だな、という印象を受けました。
説明をなさるときも、自らすすんで動きをやって見せて下さり、「役者さんみたい・・・」とポ〜としてしまうくらい素晴らしい演技(の説明)をなさいました。
有名どころの役者さんが栗山さんの周りを我先にと囲むほど、豊富な知識と演劇への情熱にあふれているお方でした。
稽古中も、その後も栗山さんのお言葉一つ一つに開眼させられることが多く、遠くらか聞き耳を立てていると、
「こっちおいで、一緒に話そう」と気軽に誘ってくださいました。
千秋楽を迎えた後にご著書は拝読いたしましたが、おそばでは聞けなかったことも詳しく、丁寧に分かりやすく書かれており、手にしてから数年がたちますが、いまだに演技に迷いが生じると、読み返してはハッとさせられます。
栗山さんは演出家としても大変素晴らしいお方ですが、なによりも、そのお人柄が素晴らしいのだと思います。
演劇にかかわると関わらざるとを問わず、「演出家って(演劇って)こんなもんなんだ〜」と思っていただけると思いますので、一読することをお勧めいたします!
そして是非、機会がありましたら、栗山演出マジックを直にご覧になってください!
演劇経験もことさら無い私は、もちろん演出家がどんなお仕事をするのかもあまりわからないまま、参加したのですが、
大変分かりやすく、1つ1つ丁寧な指導をなさる方だな、という印象を受けました。
説明をなさるときも、自らすすんで動きをやって見せて下さり、「役者さんみたい・・・」とポ〜としてしまうくらい素晴らしい演技(の説明)をなさいました。
有名どころの役者さんが栗山さんの周りを我先にと囲むほど、豊富な知識と演劇への情熱にあふれているお方でした。
稽古中も、その後も栗山さんのお言葉一つ一つに開眼させられることが多く、遠くらか聞き耳を立てていると、
「こっちおいで、一緒に話そう」と気軽に誘ってくださいました。
千秋楽を迎えた後にご著書は拝読いたしましたが、おそばでは聞けなかったことも詳しく、丁寧に分かりやすく書かれており、手にしてから数年がたちますが、いまだに演技に迷いが生じると、読み返してはハッとさせられます。
栗山さんは演出家としても大変素晴らしいお方ですが、なによりも、そのお人柄が素晴らしいのだと思います。
演劇にかかわると関わらざるとを問わず、「演出家って(演劇って)こんなもんなんだ〜」と思っていただけると思いますので、一読することをお勧めいたします!
そして是非、機会がありましたら、栗山演出マジックを直にご覧になってください!
2012年2月19日に日本でレビュー済み
本書は、演出の意図や作業プロセスを総合的に解説したマニュアルではなく、
個人の体験を軸にした演出家の信条告白の書であり、その意味で『ある演出
家の仕事』と題してもいいかもしれない。
主に井上ひさし作品の演出で知られる栗山民也に対しては、舞台をきれいに
まとめる演出家だという印象を抱いていた。この新書を読んでこの印象が裏
づけられたように思う。
ひとりひとりの声に耳を傾け(第1章「『聞く』力」)、戯曲の世界にただ
ひたすら深く分け入り(第2章「戯曲を読む」)、しかるのちに雑多な要素
を拾いあげ、総合してまとめあげる(第3章「稽古場から」)。分析と総合、
正反対のヴェクトルの作業をこなせるのは栗山が限りなく誠実であるからに
他ならない。歴史に想いを馳せ(第4章「『時代と記憶』に向き合う」)、
海外の演出家との出会いを回想し(第5章「世界の演劇人と出会う」)、
俳優育成システム作りに情熱を傾ける(第6章「俳優とはなんだろう」)。
栗山の誠実な態度はいつも変わらない。だからこそ栗山は、特定の劇団や
仲間、演出方法に束縛されることなく、ときには国境を越えてすばらしい
舞台を作りあげることができるのだ。
その一方で本書を読んで、栗山の舞台に感じていた物足りなさの原因の一端
も理解できたように思う。栗山の公刊した(現在まで唯一の)本書には、批
判がほとんど見当たらない。日本の演出家や劇作家の文章に悪口や批判はつ
きものだ。毒は読者にとっては愉快ではないかもしれないが、強烈な個性が
生み出すインパクトの代償でもあろう。それは、細部を大事にしながら総合
を試み、洗練された統一美を生み出す栗山の舞台に対し、どこかしら物足り
なさを覚えることがあることと無縁ではないと思う。
個人の体験を軸にした演出家の信条告白の書であり、その意味で『ある演出
家の仕事』と題してもいいかもしれない。
主に井上ひさし作品の演出で知られる栗山民也に対しては、舞台をきれいに
まとめる演出家だという印象を抱いていた。この新書を読んでこの印象が裏
づけられたように思う。
ひとりひとりの声に耳を傾け(第1章「『聞く』力」)、戯曲の世界にただ
ひたすら深く分け入り(第2章「戯曲を読む」)、しかるのちに雑多な要素
を拾いあげ、総合してまとめあげる(第3章「稽古場から」)。分析と総合、
正反対のヴェクトルの作業をこなせるのは栗山が限りなく誠実であるからに
他ならない。歴史に想いを馳せ(第4章「『時代と記憶』に向き合う」)、
海外の演出家との出会いを回想し(第5章「世界の演劇人と出会う」)、
俳優育成システム作りに情熱を傾ける(第6章「俳優とはなんだろう」)。
栗山の誠実な態度はいつも変わらない。だからこそ栗山は、特定の劇団や
仲間、演出方法に束縛されることなく、ときには国境を越えてすばらしい
舞台を作りあげることができるのだ。
その一方で本書を読んで、栗山の舞台に感じていた物足りなさの原因の一端
も理解できたように思う。栗山の公刊した(現在まで唯一の)本書には、批
判がほとんど見当たらない。日本の演出家や劇作家の文章に悪口や批判はつ
きものだ。毒は読者にとっては愉快ではないかもしれないが、強烈な個性が
生み出すインパクトの代償でもあろう。それは、細部を大事にしながら総合
を試み、洗練された統一美を生み出す栗山の舞台に対し、どこかしら物足り
なさを覚えることがあることと無縁ではないと思う。
2008年2月10日に日本でレビュー済み
私は演劇については全くの門外漢で、芸事(芸術?)といえば普段は音楽しか触れていない。しかし立読みついでに買った本書は非常によい買い物だった。演劇という世界もまた不思議なものだと思った。演技をするとき俳優がなぜ「他人のふりをして、他人のせりふを口にする」のか、勿論それは歌を歌うときでも同じなのだ。なぜ他人が作った歌をうたって幸せになり、あるいは聴く人の心を打つことが出来るのか、芸事というものが持つその不思議さに筆者は演劇の分野から文章で肉薄しようとしているように見受けられる。
文中、第二次世界大戦中にユダヤ人強制収容所で劇団が作られていたという挿話が語られるが人間というものはつくづく奥深いものだと思わされました。感謝。
文中、第二次世界大戦中にユダヤ人強制収容所で劇団が作られていたという挿話が語られるが人間というものはつくづく奥深いものだと思わされました。感謝。
2013年8月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
23日が到着予定だったのに、25日になっても到着せず、問い合わせたところ、担当者不在で、翌日電話しますとのことでした、翌日待てど暮らせど、電話がないので連絡したら、電話をしろという指示は受けてない、という言い訳から始まり、なんと誤発送で別の人のところに送ってしまったので、いつ送れるか約束できないとの対応でした、
電話での感じでは終始誠意を感じることができなかったので、キャンセルし、返金処理をお願いしましたが、連絡して数時間たちますが、いまだこちらには返金処理が反映されていません
こんな悪質な業者は知りません、まったくお勧めしません
電話での感じでは終始誠意を感じることができなかったので、キャンセルし、返金処理をお願いしましたが、連絡して数時間たちますが、いまだこちらには返金処理が反映されていません
こんな悪質な業者は知りません、まったくお勧めしません
2007年12月29日に日本でレビュー済み
実際の舞台では観客は俳優の演技しか見ることはできません。俳優は演出家が動かしているのですが、さて演出家本人はそれをどういう創作活動と考えているのか。脚本との関係はどうなのか。著者の豊富で多彩な経験を背景に、とても分かりやすく、そして力強く演出の仕事の意味を伝えています。舞台を見る目が膨らむ作品です。
2012年4月14日に日本でレビュー済み
マリーアントワネットの演出は最低でした。ドイツ版のCDを聞くと最高の音楽なのに、よくあれだけ最低の舞台にしたものです。