ここ最近は一般の人のエコに対する興味が盛り上がってきたことから「森林」を見直す場面も多い。
ただそういった場面で言われる「森林」のイメージと実際の森林がだいぶかけ離れたものなのではないかとこの本を読んで思った。
先日ひょんなことから米原大垣間の東海道本線を在来線で乗る機会があった。
いつもなら新幹線で通り過ぎるような車窓の風景であったが電車のスピードが遅かったためだろうか
山肌がむき出しになっていたり背は高いが胴体が細い杉の木が密集しているような山がたくさんあった。
おそらくその山々もこの本で書かれている所のパッと見たところ緑が茂っているように見えるが
実際に山の中に入ってみると暗く寒々しい感じのする無機物さみたいなものを感じさせるのだろう。
生まれてから都市部で育ってきた人間なので森に触れるという機会はなかった。
小学校の頃に林間学習が組まれていたこともあったが山奥にいっていくつかの
施設で体験学習をするだけのパッケージ化されたプログラムに過ぎなかった。
そうした身からすると地方の、そして近くに山がある人でもあまり山のことは知らないという
この本に書かれた実態はそれだけで十分驚きに値するものだった。
山の仕事をして食える時代にはまだ農村にも技術を伝えることの出来る人材と伝えてもらう若い人材もいたが
高度経済成長期を経て若い人は都会に出ていき、また無計画な杉の植林、外材への依存、建築による<均一性>の要請等によって
わざわざ国産材として林業を成り立たせていくことに将来性を感じなくなっていった。
近頃は山の方でも動物がエサを求めて人里まで下りてくるというニュースが珍しげもなく報道される。
なんらかの影響により生態系が変化したことによる特定種の増殖や天敵の不在により増殖することもあるので一概には言えないが
そうしたニュースというのは我々人間に対する警告の一種かもしれない。
工業化が進んでいたのは戦前も戦後も同じだが戦前は今よりも圧倒的に子供の数が多かったから都会に出稼ぎに行っても
村落の共同体は維持できるような状態であったと思う。
しかし戦後高度経済成長を経て第一次、二次産業よりも高付加価値な第三次産業への移行による人口の流出等によって
田舎はおじさんおばさんとかだらけになってしまい、今ちょうどそういった人々が高齢者となっているのが現状である。
以前ほど力もなく、おまけに周りの人でも足りないとなるとだんだんと森は手入れされてない「不気味な森」になってしまった。
ケルト時代のヨーロッパの森を切り開いていったこと、そして多神教的な世界から一神教的世界への変化を
分析心理学では西洋的自我の強さに例えることがあるがまさに今の日本の森の姿というのはいつのまにか
不気味なものとなってしまった「無意識からの警告」といってもいいのではないか。
確かに「豊かになる」ことは大切かも知れない、実際にそうしたことによって今の日本があるのであり
私自身今こうやって書き込んでいけるのもそうした先人の壮絶な努力によるものだ。
しかし森林にはただ木材として金を生む場の機能しかないわけではない。
本書の第一章では他の章とはとは違って教育的観点からの森の必要性を訴えたものだが
まさしく森林はそうした「場所」としての意味もあるのであり、そうした「場所」の意味はちょっと前まで人が森林と
関わりあっていかなければ生きていけなかった時代には当然のものだった。
私たちがどういった未来を形づくっていくかという問題に必ずこの森の問題は絡んでくるだろう。一読勧めたい。
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森の力: 育む、癒す、地域をつくる (岩波新書 新赤版 1153) 新書 – 2008/10/21
浜田 久美子
(著)
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- 本の長さ223ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2008/10/21
- ISBN-104004311535
- ISBN-13978-4004311539
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2008/10/21)
- 発売日 : 2008/10/21
- 言語 : 日本語
- 新書 : 223ページ
- ISBN-10 : 4004311535
- ISBN-13 : 978-4004311539
- Amazon 売れ筋ランキング: - 793,963位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2021年12月19日に日本でレビュー済み
全体を通じて著者が取材した方々を“ヨイショ”しすぎている印象が否めませんでした。取材先を“推したい”という著者の気持ちが強すぎるのか、その企業を褒める美辞麗句が並び、少し恣意的に感じられる情報の扱い方も見られたのが残念でした。
例えば、国産材で住宅を建てる建設業者が紹介されているのですが、木造住宅の魅力として「取り壊した後も部材を再利用できる」ことをあげる一方で、ハウスメーカーが建てる家は「大量のゴミとなる」と著者は書いています。しかし実際は、この本が出版された頃にはすでにリサイクル法が施行され、ハウスメーカーが建てた家であってもそれなりの部材が再利用されるためのルール作りがされていたはずです。
すこし注意深く読まなくてはいけない本かもしれないという印象を受けました。紹介されている方々が魅力的なだけに、そのあたりのことが残念に思えました。
例えば、国産材で住宅を建てる建設業者が紹介されているのですが、木造住宅の魅力として「取り壊した後も部材を再利用できる」ことをあげる一方で、ハウスメーカーが建てる家は「大量のゴミとなる」と著者は書いています。しかし実際は、この本が出版された頃にはすでにリサイクル法が施行され、ハウスメーカーが建てた家であってもそれなりの部材が再利用されるためのルール作りがされていたはずです。
すこし注意深く読まなくてはいけない本かもしれないという印象を受けました。紹介されている方々が魅力的なだけに、そのあたりのことが残念に思えました。
2010年10月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書は森林を木材や水資源、CO2の吸収源といった側面だけではない効果を端的に表現していて、目をひらかれた思いがした。都市部にすむ方々にもぜひ読んでいただいて、森の力をもらいに森に出かけてほしいと思った。
2009年11月12日に日本でレビュー済み
おわりに、最初の取材を始めてから
この本が出来上がるまでに
丸2年かかったと記されてる。
読後感じたことは、
筆者はどの章も丁寧に取材され、そして読みやすく
読者に現場の人たちを理解していただきたいという
強い思いが伝わってくる。
人工林は自然が生み出したものではない。
人の手を加えて作り出したものは、
最後の最後まで人の手が必要である。
木を見て森を見ず、こういう諺があるが、
これが今までの林業の現状である。
森を健全に導くことは、
住みよい世界を作ることだ。
良書であると思う。
この本が出来上がるまでに
丸2年かかったと記されてる。
読後感じたことは、
筆者はどの章も丁寧に取材され、そして読みやすく
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人の手を加えて作り出したものは、
最後の最後まで人の手が必要である。
木を見て森を見ず、こういう諺があるが、
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森を健全に導くことは、
住みよい世界を作ることだ。
良書であると思う。
2008年11月24日に日本でレビュー済み
本書は森にさまざまな働きかけをした人たちが、どのように森から働きかけられ、それを受け取っているかに焦点を当てて書かれている。
「育つ」…デンマークで始まった「森の幼稚園」は五感のゆりかごで、感情を深くする体に。
高校生百人が、森の名人百人に出会いレポートー「森の聞き書き甲子園」というチャンス。
「つながる」…長野県信濃町・わが町で豊かに暮らし続けたいー森林セラピーで地域作りを。
みんなで「森の健康診断」作戦、人工林の健康の指標と森林ボランティア。
「生み出す」…森の恵みを生かすビジネスをー森林バイオマスの可能性、成立には現実の壁。
森のプロを育てたいー「林業トレーナー」の挑戦、どこまで実践ができるか。
「引き継ぐ」…街と山をつなぐ大工たちー地域の材を使いたい。地元に密着した地場の活性化
種を蒔く人たちー木を知る建築士を育てる。木の建築を否定したのでは困る。
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