自身の仮説を学会に拒絶されるという挫折を味わいながらも、結果的に大逆転の末、世界の常識を覆してしまうというドラマを、ポケットサイズで追体験できる。このような偉業を成し遂げたのが日本人というのがまた誇らしいではないか。
平易な文と無駄のない論理展開のおかげで、この分野に馴染みのない読者もスラスラと読むことができると思う。確か途中にかなり純粋な海洋学のセクションがあった気がするが、どうかそこで読むのをやめないで欲しい(難しければ読み飛ばしててもよい)。なんとか最後まで読みきれば、魚を見る目が変わること請け合いである。
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イワシと気候変動: 漁業の未来を考える (岩波新書 新赤版 1192) 新書 – 2009/6/19
川崎 健
(著)
- 本の長さ211ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2009/6/19
- ISBN-104004311926
- ISBN-13978-4004311928
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2009/6/19)
- 発売日 : 2009/6/19
- 言語 : 日本語
- 新書 : 211ページ
- ISBN-10 : 4004311926
- ISBN-13 : 978-4004311928
- Amazon 売れ筋ランキング: - 412,582位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,868位岩波新書
- カスタマーレビュー:
著者について
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カスタマーレビュー
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2010年12月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
イワシはなぜ消えてしまったのか。
「乱獲のせい」とつい考えてしまうだろう。それがこれまでの常識であったから。
だが本書では最新の知見をもとにそんな常識を覆す。
イワシ(イワシに限らず多くの魚種でも)の現象の原因はレジームシフトであったのだ。
レジームシフト。
数十年スケールのグローバルな海洋生物の変動現象である。
その背後には海水温の変化など大規模な地球環境の変化がある。
多彩なデータをもとに海洋生物の変動を海洋生物が住む環境と関係づけていく過程はまさに実証科学の成果と言えるだろう。
また現在の環境からだけでなく文献資料や堆積物などから歴史的な海洋生物の増加・現象を跡づけていくことは学際的なアプローチの良き例と言えるだろう。
それまで常識と思われていた学説を疑い得ないデータをもとに否定し、新たな学説を構築した著者達の功績はすばらしいものがある。
同じ魚種でも地域によって変動が逆になっていたり、連動していたり、環境の変動とともに主要な魚種が入れ替わったり、地球環境やそこに住む生物たちのふるまいは驚くほどダイナミックである。個人的には大量に産卵する海洋生物という特質が環境によって一気に増加したり、一気に減少したりする現象に関係しているという説明は面白かった。海の世界は陸の世界とは全く違う世界だと感じさせられた。同様に海洋生物で人間の乱獲が原因で滅亡した種はいないと言うことも海洋という世界の深さを感じさせる。
しかし、レジームシフトというダイナミックな地球環境が海洋生物の増減の原因であるならば、人間が乱獲してもすぐに生物量が回復するのであろうか。やはりそうではない。乱獲という行為は生物量の回復を妨げるのだ。回復基調のある時期には漁獲を抑え、回復を妨げてはいけない。実際に回復期に乱獲され、回復が中途半端に終わってしまった例が示されている。
地球は偉大であるが、やはり人間は慢心せず、謙虚に振る舞うべきなのであろう。
「乱獲のせい」とつい考えてしまうだろう。それがこれまでの常識であったから。
だが本書では最新の知見をもとにそんな常識を覆す。
イワシ(イワシに限らず多くの魚種でも)の現象の原因はレジームシフトであったのだ。
レジームシフト。
数十年スケールのグローバルな海洋生物の変動現象である。
その背後には海水温の変化など大規模な地球環境の変化がある。
多彩なデータをもとに海洋生物の変動を海洋生物が住む環境と関係づけていく過程はまさに実証科学の成果と言えるだろう。
また現在の環境からだけでなく文献資料や堆積物などから歴史的な海洋生物の増加・現象を跡づけていくことは学際的なアプローチの良き例と言えるだろう。
それまで常識と思われていた学説を疑い得ないデータをもとに否定し、新たな学説を構築した著者達の功績はすばらしいものがある。
同じ魚種でも地域によって変動が逆になっていたり、連動していたり、環境の変動とともに主要な魚種が入れ替わったり、地球環境やそこに住む生物たちのふるまいは驚くほどダイナミックである。個人的には大量に産卵する海洋生物という特質が環境によって一気に増加したり、一気に減少したりする現象に関係しているという説明は面白かった。海の世界は陸の世界とは全く違う世界だと感じさせられた。同様に海洋生物で人間の乱獲が原因で滅亡した種はいないと言うことも海洋という世界の深さを感じさせる。
しかし、レジームシフトというダイナミックな地球環境が海洋生物の増減の原因であるならば、人間が乱獲してもすぐに生物量が回復するのであろうか。やはりそうではない。乱獲という行為は生物量の回復を妨げるのだ。回復基調のある時期には漁獲を抑え、回復を妨げてはいけない。実際に回復期に乱獲され、回復が中途半端に終わってしまった例が示されている。
地球は偉大であるが、やはり人間は慢心せず、謙虚に振る舞うべきなのであろう。
2009年7月25日に日本でレビュー済み
本書は、水産資源学を専門とし
現在は日本科学者会議代表幹事である著者が
レジームシフト論について論じる著作です
海水温と大気の数十年単位の変動により
水産資源の増減を説明するレジーム・シフト論。
同論の提唱者である著者は、
自説の根拠・傍証となる国内外の論文や
資源変動に関する他説を参照・批判し、
自説の妥当性を論じたうえで、資源管理の必要性と
国際協調を前提としない資源管理体制の問題点を指摘します。
バイオマス、NAO、生物学的増幅―など、
専門的な概念や詳細なデータが多様されいるので、
最後まで読み通すことができるか、かなり不安でしたが、
文章や説明が平易なことに加え
図やグラフが多用されイメージしやすかったので
レジーム・シフト論の内容や、その論拠等を
大まかに理解することができました(・・・たぶん)。
暖水プールの移動と海洋生態の移動
北太平洋と北大西洋の間にある気候変動の連動性
―など、門外漢であっても興味深い記述は多くありましたが、
今日の重要な争点であるITQについての批判は
第一人者の発言だけあり、とりわけ印象深かったです。
資源学や気候変動の到達点を、平易に紹介する本書
漁業や環境問題に関心がある方に限らず
一人でも多くの方に読んでいただきたい著作です。
現在は日本科学者会議代表幹事である著者が
レジームシフト論について論じる著作です
海水温と大気の数十年単位の変動により
水産資源の増減を説明するレジーム・シフト論。
同論の提唱者である著者は、
自説の根拠・傍証となる国内外の論文や
資源変動に関する他説を参照・批判し、
自説の妥当性を論じたうえで、資源管理の必要性と
国際協調を前提としない資源管理体制の問題点を指摘します。
バイオマス、NAO、生物学的増幅―など、
専門的な概念や詳細なデータが多様されいるので、
最後まで読み通すことができるか、かなり不安でしたが、
文章や説明が平易なことに加え
図やグラフが多用されイメージしやすかったので
レジーム・シフト論の内容や、その論拠等を
大まかに理解することができました(・・・たぶん)。
暖水プールの移動と海洋生態の移動
北太平洋と北大西洋の間にある気候変動の連動性
―など、門外漢であっても興味深い記述は多くありましたが、
今日の重要な争点であるITQについての批判は
第一人者の発言だけあり、とりわけ印象深かったです。
資源学や気候変動の到達点を、平易に紹介する本書
漁業や環境問題に関心がある方に限らず
一人でも多くの方に読んでいただきたい著作です。
2010年3月22日に日本でレビュー済み
30歳くらいまで、鰯の天麩羅は大嫌いだった。
鰯が貴重になってきて、鰯の天麩羅が好きになってしまった。
日本の経済を支えてきたのは、鰯かもしれないと思うと、
漁業の未来だけでなく、日本の未来を憂える。
鰯がなんとか大量であり続けるようにするにはどうしたらいいかを考えさせられた。
鰯が貴重になってきて、鰯の天麩羅が好きになってしまった。
日本の経済を支えてきたのは、鰯かもしれないと思うと、
漁業の未来だけでなく、日本の未来を憂える。
鰯がなんとか大量であり続けるようにするにはどうしたらいいかを考えさせられた。
2009年10月21日に日本でレビュー済み
日本の漁業を巡る問題には以前から関心を持っていて、レジーム・シフトも理解しているつもりだったのだが、これまでの理解が実に表層的なものだったことを思い知った。つまりレジームシフトを、単に海洋での魚種交代の意味にしか理解していなかったのである。
しかし実はレジーム・シフトとは、単に漁業資源管理の問題ではなかった。著者自身の定義のように、大気・海洋・生物、各々が互いに影響し合った結果として、地球環境システム全体の有り様(相)が、数十年単位で変動(あるいは振動と言うべきか)することを意味していたのである。レジーム・シフト理論の本当のインパクトは、ある一定の定常状態を基本の姿と想定する静的な地球環境観を否定し、絶え間ない変化・変動こそを常態と考える、動的な地球環境観を提示したことにある。本書中で繰り返し語られているMSY理論への批判も、EEZ(排他的経済水域)の設定を市場原理主義の拡大と関係づけて批判していく斬新な視点も、そのベースは同じ、この動的な地球環境観を出発点としている。
「MSY=定常理論」とする本書のMSY批判は現在のMSY理論の進歩をフォローしておらず、時代錯誤と思われる向きもあろうが、その点は差し引くとしても、本書が提示する動的な自然観・地球環境観が、実に魅力的で知的刺激に満ちていることは間違いない。出来るだけ多くの人に読んで欲しいと思う本である。
なお、レジーム・シフト理論の本質理解から少し離れて、日本の漁業資源管理の現状についての知識を得るためには、『 イワシはどこへ消えたのか―魚の危機とレジーム・シフト (中公新書) 』を読むと良い。本書とあわせて読むことで、日本の漁業の現状と未来とに関する理解が、いっそう深まることだろう。
しかし実はレジーム・シフトとは、単に漁業資源管理の問題ではなかった。著者自身の定義のように、大気・海洋・生物、各々が互いに影響し合った結果として、地球環境システム全体の有り様(相)が、数十年単位で変動(あるいは振動と言うべきか)することを意味していたのである。レジーム・シフト理論の本当のインパクトは、ある一定の定常状態を基本の姿と想定する静的な地球環境観を否定し、絶え間ない変化・変動こそを常態と考える、動的な地球環境観を提示したことにある。本書中で繰り返し語られているMSY理論への批判も、EEZ(排他的経済水域)の設定を市場原理主義の拡大と関係づけて批判していく斬新な視点も、そのベースは同じ、この動的な地球環境観を出発点としている。
「MSY=定常理論」とする本書のMSY批判は現在のMSY理論の進歩をフォローしておらず、時代錯誤と思われる向きもあろうが、その点は差し引くとしても、本書が提示する動的な自然観・地球環境観が、実に魅力的で知的刺激に満ちていることは間違いない。出来るだけ多くの人に読んで欲しいと思う本である。
なお、レジーム・シフト理論の本質理解から少し離れて、日本の漁業資源管理の現状についての知識を得るためには、『 イワシはどこへ消えたのか―魚の危機とレジーム・シフト (中公新書) 』を読むと良い。本書とあわせて読むことで、日本の漁業の現状と未来とに関する理解が、いっそう深まることだろう。
2009年12月24日に日本でレビュー済み
1928年中国に生まれた農学博士・日本科学者会議代表幹事が、2009年に刊行した本。漁業科学を専攻する著者は、海洋生物資源の自然変動問題と漁業による乱獲問題を統一的に理解できないかと考え、太平洋のマイワシ漁獲量変動から、平衡理論(MSY理論)を批判するレジーム・シフトの概念に1983年にたどりついた。それによれば、世界の大気循環と海流の循環と海洋生態系は、一つのシステムとして、数十年の時間スケールで調和のとれた変動をしている。つまり、同じ分類群の個体数変動のグローバルな同期性、個体数変動とグローバルな気候変動との強い結び付き、魚種交代のグローバルな同期性という傾向が明らかになってきたのである(このレジーム・シフトは20世紀には1946〜47年、1976〜77年に生じている)。したがって、生物資源の利用はこうした海洋生態系を破壊しない限度内で許されるべきであり、資源が低水準のときには禁漁にして回復をじっと待つというあり方が望ましく(漁業者の生活保障とセットで)、密度依存理論を一般化した平衡理論に基づく乱獲批判は修正される必要がある。こうした生態系管理のためにも、EEZに固執する一国主義ではなく、それを超えた国際協力が必要であると著者は主張する。本書では多くのグラフを提示し、気候変動のメカニズムや海洋管理の歴史、漁業の現状などについても平易に解説しながら、上記のような主張を展開している。
2009年7月10日に日本でレビュー済み
海洋資源について、生物学的・地理的・環境学的・政治的・マスコミ的に考えさせてくれる本です。
レジーム・シフトという海洋の温度の変化とイワシやサバといった漁獲量の変化の関連を丹念に述べ、「乱獲」だけが海洋資源の増減の原因ではないことを明らかにしてくれます。
特に陸上の生物では絶滅種が多いのに、水中の生物はなかなか絶滅しないという理由については「なるほど」と思いました。そしてそれこそが、世間の圧力に曝されながら科学的な考え方を捨てない筆者の主張の根底に繋がるものだと思いました。
最初は話が色々と飛んでいるように感じましたが、しっかりとした構成のもとに論理が進められ、「平衡理論」を打破しています。
レジーム・シフトという海洋の温度の変化とイワシやサバといった漁獲量の変化の関連を丹念に述べ、「乱獲」だけが海洋資源の増減の原因ではないことを明らかにしてくれます。
特に陸上の生物では絶滅種が多いのに、水中の生物はなかなか絶滅しないという理由については「なるほど」と思いました。そしてそれこそが、世間の圧力に曝されながら科学的な考え方を捨てない筆者の主張の根底に繋がるものだと思いました。
最初は話が色々と飛んでいるように感じましたが、しっかりとした構成のもとに論理が進められ、「平衡理論」を打破しています。