標題通りですが、なにせ14年前の著作なので、私的には、あまり新しい知見はありませんでした。
でも労働問題をあつかう上での我が国の特殊性(例えば、特定の職に就くのではなく、会社にどの職に就くか、かなりの裁量権を委ねて労働契約を結ぶ。)をしっかり論考されております。したがって、労働問題に興味がある一般の方々には良書になると思います。
私も複雑な労働問題を過不足なく、どちらかと言えば、浅く広く、分かり易くまとめてくれているので、とても使いかってが良いです。
結論から言えば、正社員は優遇(終身雇用、年功序列その他諸々。)され、非正規だと極めて不利益なのですが、従来は専業主婦と学生が大部分を占め、あまり問題化しなかった。それがバブルがはじけて就職氷河期を迎えて風向きが変わった。一般、本来なら正社員の資格で採用される者も非正規になるケースが多発、常態化している。採用する側も終身雇用と年功序列のシステムを維持しづらくなっている。
この最悪の雇用状態をどう打開しようか?
本書にもそれに関する記述がありますが、著者は、別の最新の著作、或いは自身のブログで分析、論考されておられるようですので、この場での講評は控えます。
派遣とか、フリーランスとか、古典的な労働法規から見たら想定外のものが増えております。労働状況は、本書執筆時より、はるかに悪化していると思われます。
期待値を込めて星5です。
ここまでの拝読、深謝します。
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新しい労働社会: 雇用システムの再構築へ (岩波新書 新赤版 1194) 新書 – 2009/7/22
濱口 桂一郎
(著)
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- ISBN-104004311942
- ISBN-13978-4004311942
- 出版社岩波書店
- 発売日2009/7/22
- 言語日本語
- 寸法10.5 x 1 x 17.5 cm
- 本の長さ208ページ
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2009/7/22)
- 発売日 : 2009/7/22
- 言語 : 日本語
- 新書 : 208ページ
- ISBN-10 : 4004311942
- ISBN-13 : 978-4004311942
- 寸法 : 10.5 x 1 x 17.5 cm
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2023年8月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2022年6月12日に日本でレビュー済み
現代日本の労働問題について総合的に語った約10年前の新書、210ページ。
日本型雇用システムの本質をメンバーシップ型の雇用契約にあるとして、最も重要な特徴とされる「長期雇用制度」「年功賃金制度」「企業別組合」といった「三種の神器」もその本質から導き出された帰結と指摘する。そして1990年代以降、非正規雇用の増加と背中合わせの正社員の過重労働といった事態には、従来型の雇用契約と現実に大きなひずみによるものであり、両者の綻びを個別に捉えるだけではなく包括的な改善の方向性を示すことが本書の指針である。
著者が現代日本の労働問題の是正のために主に参照するのは海外、それもとくに欧州の政府による雇用問題への取り組みである。そこから得られる最終的な解は、やはりというか先に挙げた「メンバーシップ型」の雇用のあり方の変革なのだが、そこに至るために急進的な策を推奨するわけではなく、既得権をもつ大企業正社員にも受け入れられ、かつ、現に苦境にあることの多い非正規労働者を救うためにも社会のセーフティネットの整備が先決だとする。セーフティネットが用意されていなければ、従来型の正社員がフラットな職能給に移行することに同意することも困難だからだ。そしてもうひとつ、今後の方向転換のために重要な役割を果たすことになると著者が重視するのが、日本独特の企業別の労働組合が非正規労働者も成員として含めることによる、組織の改変である。
序文で自らが「過度に保守的にならず、過度に急進的にならず、現実的で漸進的な改革の方向を示そうとした」と宣言する通り、著者の雇用問題への姿勢は過去の政府の決定への分析も含めて是々非々であり、報道主導の扇動的なキャンペーンやポピュリズム的な政治のあり方に警鐘を鳴らすこともしばしばである。労働問題への取り組みとしての法律の改正にしても、世論に迎合しただけの現実と乖離した表面的な対策については懐疑を隠さない。
昨今取り上げられることの多い「ジョブ型」という言葉を定着させたと帯で謳われている本書だが、「メンバーシップ型」については強く印象に残っても「ジョブ型」という語彙そのものはどこで登場したかもわからない程度だった。本書が、日本の雇用システムが「メンバーシップ型」からフラットな職能給(ジョブ型)に漸進的に移行することを説いていることは間違いないのだが、誤った、または恣意的な受け取り方によっては、単にさらなる非正規労働者の増加させる正当化の手段として「ジョブ型」という言葉が著者の意図しない方向に一人歩きするのではないかと危惧させる側面もある。行き届いたセーフティネットの拡大とセットでなければ、雇用システムの変革はありえないことについては本書が強調するところだ。
私自身も全体の方針としては、従来型の正社員増加への回帰ではなく、多くの非正規労働者がその働き方によって大きな不安なく生涯を全うできるような形でセーフティネットを充実させた社会が望ましいと思える。そして何より、日本の従来型雇用システムを海外との比較から「メンバーシップ型」と定義して区分するくだりに、日本社会の重要な特徴の一部について非常に納得させてくれる著書だった。
日本型雇用システムの本質をメンバーシップ型の雇用契約にあるとして、最も重要な特徴とされる「長期雇用制度」「年功賃金制度」「企業別組合」といった「三種の神器」もその本質から導き出された帰結と指摘する。そして1990年代以降、非正規雇用の増加と背中合わせの正社員の過重労働といった事態には、従来型の雇用契約と現実に大きなひずみによるものであり、両者の綻びを個別に捉えるだけではなく包括的な改善の方向性を示すことが本書の指針である。
著者が現代日本の労働問題の是正のために主に参照するのは海外、それもとくに欧州の政府による雇用問題への取り組みである。そこから得られる最終的な解は、やはりというか先に挙げた「メンバーシップ型」の雇用のあり方の変革なのだが、そこに至るために急進的な策を推奨するわけではなく、既得権をもつ大企業正社員にも受け入れられ、かつ、現に苦境にあることの多い非正規労働者を救うためにも社会のセーフティネットの整備が先決だとする。セーフティネットが用意されていなければ、従来型の正社員がフラットな職能給に移行することに同意することも困難だからだ。そしてもうひとつ、今後の方向転換のために重要な役割を果たすことになると著者が重視するのが、日本独特の企業別の労働組合が非正規労働者も成員として含めることによる、組織の改変である。
序文で自らが「過度に保守的にならず、過度に急進的にならず、現実的で漸進的な改革の方向を示そうとした」と宣言する通り、著者の雇用問題への姿勢は過去の政府の決定への分析も含めて是々非々であり、報道主導の扇動的なキャンペーンやポピュリズム的な政治のあり方に警鐘を鳴らすこともしばしばである。労働問題への取り組みとしての法律の改正にしても、世論に迎合しただけの現実と乖離した表面的な対策については懐疑を隠さない。
昨今取り上げられることの多い「ジョブ型」という言葉を定着させたと帯で謳われている本書だが、「メンバーシップ型」については強く印象に残っても「ジョブ型」という語彙そのものはどこで登場したかもわからない程度だった。本書が、日本の雇用システムが「メンバーシップ型」からフラットな職能給(ジョブ型)に漸進的に移行することを説いていることは間違いないのだが、誤った、または恣意的な受け取り方によっては、単にさらなる非正規労働者の増加させる正当化の手段として「ジョブ型」という言葉が著者の意図しない方向に一人歩きするのではないかと危惧させる側面もある。行き届いたセーフティネットの拡大とセットでなければ、雇用システムの変革はありえないことについては本書が強調するところだ。
私自身も全体の方針としては、従来型の正社員増加への回帰ではなく、多くの非正規労働者がその働き方によって大きな不安なく生涯を全うできるような形でセーフティネットを充実させた社会が望ましいと思える。そして何より、日本の従来型雇用システムを海外との比較から「メンバーシップ型」と定義して区分するくだりに、日本社会の重要な特徴の一部について非常に納得させてくれる著書だった。
2016年5月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
年功序列、終身(長期)雇用、企業別組合が、日本型雇用制度の三種の神器といわれていることは、誰でも知っている。
この日本型雇用システムの本質は、職務に基づいて採用し、評価する、職務給制度ではなく、職務遂行能力を資格化した「職能給制度」にあると喝破している。
この本質をベースに、今まで、バラバラに頭に入っていた色々な事象が、根は一つなのだということが理解できる。
取り扱っている社会事象は非常に幅広く、かつ一つ一つの事象についての考察はとても深い。
そういった意味で、レベルとしては啓蒙書の域を凌駕しているが、説明は平易。 名著です。
以下、いくつかのテーマをご紹介します。
・非正規雇用は、高度経済成長期には、主婦のパートと学生アルバイト。 1990年代半ば以降、企業がリストラで採用を控えた為、正規社員になれなかった若者が増加。 いわゆるフリーター。 彼らが今中年にさしかかっており、生活が安定せず、社会問題となっている。
・日本型賃金システムは、若者の間は低賃金に甘んじ、会社に預金をし、それを家庭をもって中高年となった時期に高賃金を受け取って回収する仕組み。 長期間、同じ会社に勤務して公正がはかられるシステム。
・高度経済成長期では、女性は結婚で退社する前提。 勤務年数が短いため、補助的な業務を担当。 男女雇用均等法の施行後、この仕組みを法の精神に逆らわぬように置き換えたのが、「一般職」制度。
海外では、クラーク(事務的な提携作業を担当)とマネージャー(判断業務を担当)の区別はありますが、いづれも、男性も女性もいます。 一般職の業務はクラークの業務に近似しますが、構成員が女性だけというのは、非常に奇異に感じられました。
本書を読み、その生い立ちが理解できたと同時に、女性は生涯働く時代となった今、時代遅れの制度であることも理解できました。
未来の日本のため、変えていかなくてはなりませんが、そう容易ではないということも同時に理解できました。
このように、取り扱うテーマは非常に幅広く、かつ掘り下げは非常に深い名著です。
日本型の雇用制度の本質を理解されたいかたに、お勧めの一冊です。
この日本型雇用システムの本質は、職務に基づいて採用し、評価する、職務給制度ではなく、職務遂行能力を資格化した「職能給制度」にあると喝破している。
この本質をベースに、今まで、バラバラに頭に入っていた色々な事象が、根は一つなのだということが理解できる。
取り扱っている社会事象は非常に幅広く、かつ一つ一つの事象についての考察はとても深い。
そういった意味で、レベルとしては啓蒙書の域を凌駕しているが、説明は平易。 名著です。
以下、いくつかのテーマをご紹介します。
・非正規雇用は、高度経済成長期には、主婦のパートと学生アルバイト。 1990年代半ば以降、企業がリストラで採用を控えた為、正規社員になれなかった若者が増加。 いわゆるフリーター。 彼らが今中年にさしかかっており、生活が安定せず、社会問題となっている。
・日本型賃金システムは、若者の間は低賃金に甘んじ、会社に預金をし、それを家庭をもって中高年となった時期に高賃金を受け取って回収する仕組み。 長期間、同じ会社に勤務して公正がはかられるシステム。
・高度経済成長期では、女性は結婚で退社する前提。 勤務年数が短いため、補助的な業務を担当。 男女雇用均等法の施行後、この仕組みを法の精神に逆らわぬように置き換えたのが、「一般職」制度。
海外では、クラーク(事務的な提携作業を担当)とマネージャー(判断業務を担当)の区別はありますが、いづれも、男性も女性もいます。 一般職の業務はクラークの業務に近似しますが、構成員が女性だけというのは、非常に奇異に感じられました。
本書を読み、その生い立ちが理解できたと同時に、女性は生涯働く時代となった今、時代遅れの制度であることも理解できました。
未来の日本のため、変えていかなくてはなりませんが、そう容易ではないということも同時に理解できました。
このように、取り扱うテーマは非常に幅広く、かつ掘り下げは非常に深い名著です。
日本型の雇用制度の本質を理解されたいかたに、お勧めの一冊です。
2015年12月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
大変素晴らしい内容だと思いました。
今までの自分を振り返ってみて、働く事の意味が分かりました。
今までの自分を振り返ってみて、働く事の意味が分かりました。
2010年12月12日に日本でレビュー済み
労働法の観点から日本の長期停滞とともに見直しを迫られている労働システムについて批判的建設的に考察した新書。
なまの現場の視点ではなく、法律的、制度的な視点から述べられているので机上の空論といった感じがしないでもない。
「名ばかり管理職」や「偽装請負」など、テクニカルタームについての予備知識が十分にないと読みづらい。
内容のレベルから、一般の労働者ではなく、労働法や労働政策の研究者が対象といえる。
なまの現場の視点ではなく、法律的、制度的な視点から述べられているので机上の空論といった感じがしないでもない。
「名ばかり管理職」や「偽装請負」など、テクニカルタームについての予備知識が十分にないと読みづらい。
内容のレベルから、一般の労働者ではなく、労働法や労働政策の研究者が対象といえる。
2013年10月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この本は読んでおいた方が良い。
特に第4章の「職場からの産業民主主義の再構築」は必読。
非正規雇用社員が正規雇用社員には守ってもらえない中、いかに資本と闘い、「権利のための闘争」をするか、鼓舞するように書いてある。
僭越ではあるが、マルクスの代わりに言おう。
全国の労働者よ、団結せよ!
特に第4章の「職場からの産業民主主義の再構築」は必読。
非正規雇用社員が正規雇用社員には守ってもらえない中、いかに資本と闘い、「権利のための闘争」をするか、鼓舞するように書いてある。
僭越ではあるが、マルクスの代わりに言おう。
全国の労働者よ、団結せよ!
2009年9月30日に日本でレビュー済み
労働問題のみならず生活のあり方も含めて、議論されていくべき論点と方向性をコンパクトにまとめた良書であると思います。
評者は、本書を戦後の労働運動のあり方をめぐってなされた「内包化・外延化」論争の現代版と位置づけます。企業別労組の枠を乗り越える「地域ぐるみ」の運動を展開した高野実に対して、大河内一男はそれを「外延化」と批判し、「経営の中に入り込む」ことによる企業別組合の補強(内包化)を主張しました。その後、日本の労働運動の主流は企業別組合によって占められる一方、地域の運動は○○ユニオンとして引き継がれました。
本書やブログなどの主張を読むと、濱口氏は「外で騒いでいるだけ」のユニオンより、企業別組合によって職場の民主主義が再構築されることを現実的だと考えているようです。つまり、外延化よりも内包化であると。確かに、企業別組合の変化、職場における民主主義の実現は重要課題です。しかし、「民主主義は工場の門前で立ちすくむ」と言われて久しいなか、主流の労働組合が自ら率先して民主的な組合運営、職場の民主化を進めていくと考えているのだとしたら、濱口氏を「リアリスト」だと評価することはできません。実際、今これほど労働問題への関心が高まっているのはユニオンが「騒いだ」からこそであり、主流の組合は腰が重いのが現状です。また、民主的な組合運営の模索を長年行ってきたのもユニオンなのであり、そうした活動を軽視して「新しい労働社会」を展望することはできないと考えます。
高野は、(民族意識のもと)内包化と外延化を分けて考える大河内の議論を批判しましたが、それは企業別とユニオンを分けて考える議論への批判にも通じ、敷衍すれば「ワーク」(職場)と「ライフ」(地域)が分かれてしまっている日本社会の現状ともつながるでしょう。濱口氏の「ワークライフバランス」に関する鋭い議論と労働運動へのバランスを欠いた視点の微妙なズレが気になったので、星を一つ減らしました。「民族意識」は「新しい労働社会」のメンバーシップの問題とも関連しますが、その議論は省略します。
評者は、本書を戦後の労働運動のあり方をめぐってなされた「内包化・外延化」論争の現代版と位置づけます。企業別労組の枠を乗り越える「地域ぐるみ」の運動を展開した高野実に対して、大河内一男はそれを「外延化」と批判し、「経営の中に入り込む」ことによる企業別組合の補強(内包化)を主張しました。その後、日本の労働運動の主流は企業別組合によって占められる一方、地域の運動は○○ユニオンとして引き継がれました。
本書やブログなどの主張を読むと、濱口氏は「外で騒いでいるだけ」のユニオンより、企業別組合によって職場の民主主義が再構築されることを現実的だと考えているようです。つまり、外延化よりも内包化であると。確かに、企業別組合の変化、職場における民主主義の実現は重要課題です。しかし、「民主主義は工場の門前で立ちすくむ」と言われて久しいなか、主流の労働組合が自ら率先して民主的な組合運営、職場の民主化を進めていくと考えているのだとしたら、濱口氏を「リアリスト」だと評価することはできません。実際、今これほど労働問題への関心が高まっているのはユニオンが「騒いだ」からこそであり、主流の組合は腰が重いのが現状です。また、民主的な組合運営の模索を長年行ってきたのもユニオンなのであり、そうした活動を軽視して「新しい労働社会」を展望することはできないと考えます。
高野は、(民族意識のもと)内包化と外延化を分けて考える大河内の議論を批判しましたが、それは企業別とユニオンを分けて考える議論への批判にも通じ、敷衍すれば「ワーク」(職場)と「ライフ」(地域)が分かれてしまっている日本社会の現状ともつながるでしょう。濱口氏の「ワークライフバランス」に関する鋭い議論と労働運動へのバランスを欠いた視点の微妙なズレが気になったので、星を一つ減らしました。「民族意識」は「新しい労働社会」のメンバーシップの問題とも関連しますが、その議論は省略します。
2010年5月30日に日本でレビュー済み
新しい労働社会を構築するための最重要論点が抜けている。それは「利害の対立する社会集団間の利害をどう調整するのか」「誰がコストを負担するのか(本当に負担に同意するのか)」の二点である。著者の経歴を拝見すると案の定、民間での経験がない。雇用問題は基本的に集団間での利害調整という政治によって大枠が決定することをご存じないようだ。
また、現実的に雇用のあり方を決定するのは労働者自身のスタンスの影響も大きい。OECDの労働コスト調査によれば、日本の労働者の純所得(手取り)の比率は約7割と高く、欧州諸国よりも高水準である。ドイツやスウェーデンより10%以上高く、日本の労働者は所得税や社会保険料負担が少ない分を自分の財布にしまっているのだ(しかも間接税も欧州より低い)。日本の社会的弱者に社会保障給付が少ないのは当たり前ではないか!
日本の場合、連合の非正規雇用労働者への支援がほぼ口先だけであるところからも分かるように、労働者は一枚板ではない。著者は、雇用のセーフティネット強化は社会保険料引き上げ、もしくは税負担増加によってしか成立し得ないことを明言すべきだ。ついでに言えば、欧州より日本の法人税の方が高率であることも書いていないのは問題だろう。
ステークホルダー民主主義があたかも理想であるかのように書かれているが、欧州政治を冷静に見ている者は、成長率の低さや高失業率、度重なる社会保障制度改革など、問題がそう簡単でないことを知っている。当書では新しい成長分野へ労働者を移動させるためにどういった雇用政策が必要なのか、北欧と大陸国の雇用制度の違いはどこにあるのかについても言及がない。残念である。
また、現実的に雇用のあり方を決定するのは労働者自身のスタンスの影響も大きい。OECDの労働コスト調査によれば、日本の労働者の純所得(手取り)の比率は約7割と高く、欧州諸国よりも高水準である。ドイツやスウェーデンより10%以上高く、日本の労働者は所得税や社会保険料負担が少ない分を自分の財布にしまっているのだ(しかも間接税も欧州より低い)。日本の社会的弱者に社会保障給付が少ないのは当たり前ではないか!
日本の場合、連合の非正規雇用労働者への支援がほぼ口先だけであるところからも分かるように、労働者は一枚板ではない。著者は、雇用のセーフティネット強化は社会保険料引き上げ、もしくは税負担増加によってしか成立し得ないことを明言すべきだ。ついでに言えば、欧州より日本の法人税の方が高率であることも書いていないのは問題だろう。
ステークホルダー民主主義があたかも理想であるかのように書かれているが、欧州政治を冷静に見ている者は、成長率の低さや高失業率、度重なる社会保障制度改革など、問題がそう簡単でないことを知っている。当書では新しい成長分野へ労働者を移動させるためにどういった雇用政策が必要なのか、北欧と大陸国の雇用制度の違いはどこにあるのかについても言及がない。残念である。