小生は5年程前に現役を引退した。生産、営業、企画(技術・製品担当)の各部門での経験に本書の内容を照らして見ると、納得できることばかりだ。大学教授や経営評論家にありがちな空理空論ではない。地に足が着いた議論である。だが、若い世代からは「また始まった」と酒席で言われそうな気もする。最近の事は知らないが、小生が引退した頃までには、「選択と集中」の名の下で、パワーポイントの企画書の体裁が物を言い、四半期ごとに開発計画の進捗を報告せねばならず、報告の為の試作や試験を行うようになってしまった。予算の超過や流用が半ば黙認され、こんな物が「工業製品」になるかと言われつつも、「開発~生産~営業」の非公式ネットワークで物が作れた時代でないと著者の主張は非現実的に思える。他の読者の皆さんが属する企業はどうだろうか。
さて、本書の内容だが、基本的には産業史・工業技術史のエピソードを著者の視点で分析し、その意義と教訓を探り出して行く手法だ。
冒頭の「鉄の道をゆく」では、1960年頃の釜石製鉄所での著者の学生時代の実習体験(欧州で開発途上のLD転炉が釜石で実用化される現場)を背景に、英国⇒米国⇒日本⇒中国と鉄鋼産業の覇権の推移を述べ、「Sカーブ(①どのような技術も、生産量の推移はS字状のカーブを描く ②どのような技術も、生産量は30年でピークを打つ)」図示し、自分たちがピークに達する前に、新しい「Sカーブの乗り換え」が必要だと説く。
以下、「たたらの里をゆく」、「津波の跡をゆく」、「ミクロの世界をのぞきにゆく」、「技術の系譜をたどる」、「道なき道をゆく」と続き、「考えを作るー思考展開法と何か」で終わる。
著者は、「深夜、寝床の中で突然、頭が勝手に動き始めて目が覚める。(中略)。・・・・机に向かい、頭に中で渦巻いていることを紙に書き留めていく・・・」と書いている(本書、「はじめに」)。小生も現役時代を思い出してしまった。
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技術の街道をゆく (岩波新書) 新書 – 2018/1/20
畑村 洋太郎
(著)
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「現地」を触れ、「現物」に触れ、「現場」の人と議論する。この「3現」をモットーに半世紀、著者は全国のさまざまな技術の現場を訪ね歩いてきた。技術力は高いにもかかわらず、苦境に立たされる日本の技術。活路を見出し、生き残る道をさぐる、ハタムラ版「街道をゆく」である。
- 本の長さ192ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2018/1/20
- ISBN-104004317029
- ISBN-13978-4004317029
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- 出版社 : 岩波書店 (2018/1/20)
- 発売日 : 2018/1/20
- 言語 : 日本語
- 新書 : 192ページ
- ISBN-10 : 4004317029
- ISBN-13 : 978-4004317029
- Amazon 売れ筋ランキング: - 638,327位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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1941年東京生まれ。東京大学工学部機械工学科修士課程修了。東京大学大学院工学系研究科教授、工学院大学グローバルエンジニアリング学部特別専任教授 を歴任。東京大学名誉教授。工学博士。専門は失敗学、創造的設計論、知能化加工学、ナノ・マイクロ加工学。2001年より畑村創造工学研究所を主 宰。’02年にNPO法人「失敗学会」を、’07年に「危険学プロジェクト」を立ち上げる(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『失敗学実践講義 文庫増補版』(ISBN-10:4062766132)が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2018年1月30日に日本でレビュー済み
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2018年4月11日に日本でレビュー済み
ダム造りと酒井田柿右衛門の磁器づくりの共通項を探ったり、銑鉄→転炉→鋼材という一貫生産と鑪製鉄の技術を比較したり。筆者が出掛けてルポしていく。発想が興味深い。津波関連でも田老町の津波堤の話が出てくるが、知識と行動との間に聯関ができるかどうかはなかなかに難しいのが興味深い。あと、筆者が強調したいのが時間軸の概念。作業は直列つなぎで進めるような気分になるが、時間軸を考慮すれば並列つなぎで進めた方がいい。ただ、最終章の発想法の項目は本書のトーンにはそぐわない。再々筆者自身が書いているように、別の本を読めばいい。
2018年3月10日に日本でレビュー済み
「失敗学」の提唱で知られる著者が、司馬遼太郎にならい、訪れた土地土地で思ったこと、考えたことを まとめたものです。
技術の解説というよりは随筆・随想に近く、何かを学び取るには物足りなさもありますが、寺田寅彦の平成版といったところでしょうか。
技術の解説というよりは随筆・随想に近く、何かを学び取るには物足りなさもありますが、寺田寅彦の平成版といったところでしょうか。