本書は、シリーズ『旅とトポスの精神史』の一冊として岩波書店より1985年8月に刊行された単行本『パリ感覚』の岩波文庫版（2006年5月刊）である。当該単行本で語られているパリとフランスは1983年から1985年にかけて著者が長期滞在（ジュネーブ大学での教職の90数日を含む）した当時のパリとフランスであり、この文庫版で語られているパリもフランスも1983－1985年当時のそれである。
それでもなお本書が今日的に刺激的なのは、テーマが60年代の大きな文化的転換の時期から80年代中葉にかけてのフランス文化とそのような知の変容の「記憶の場としてのパリ」だからだろう。そうしたフランス文化とパリと半世紀もの間にわたり濃密な付き合いを続けてきた著者ならではの考察とエスプリが本書の随所に光っている。
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