本書は、歴史人類学の手法を用いて、18世紀フランスの人々の精神世界の一端を明らかにしようとするものである。
「農民は民話をとおして告げ口をする――マザー・グースの意味」は、様々な民話を取り上げ、物語全体の構造やモチーフの組み合わせに注目し、他の物語と比較することで、フランス民話の一般的要素を明らかにする。
「労働者の反乱――サン・セヴラン街の猫の大虐殺」は、1730年代後半にパリの印刷工場で徒弟奉公していた労働者の体験記にある、猫の虐殺にまつわる事件を取り上げ、そこから当時の民衆の精神世界を明らかにする。つまり、なぜこのような事件が起きたのか。なぜ猫が選ばれたのか。なぜ猫の殺害が笑いを引き起こしたのか。これらの問題について、当時の祝祭儀式、職人文化、猫のもつ象徴性から考察する。
「作家の身上書類を整理する一警部――フランス文壇の分析」は、警察による1748年から53年までの出版業に関する調査書類を取り上げ、そこから啓蒙の絶頂期における<知識人>のプロフィールと、彼らに対する当時の認識を明らかにする。
「読者がルソーに応える――ロマンティックな多感性の形成」は、ラ・ロシェル(フランス西部の都市)の商人の身上書類を取り上げ、そこから18世紀フランスにおける「読書の歴史」を試みる。
本書は、従来の歴史学では無視されてきた史料を用い、人類学・民俗学に依拠しつつ、「下からの」文化史を描いている。「赤頭巾」を取り上げ、その歴史的背景を明らかにすることで精神分析を批判しているところは、非常に説得力があり、興味深かった。文章も平易で、読みやすく、かつ楽しんで読むことができる。一読を勧めたい。
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猫の大虐殺 (岩波現代文庫 学術 185) 文庫 – 2007/10/16
- 本の長さ360ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2007/10/16
- ISBN-104006001851
- ISBN-13978-4006001858
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2007/10/16)
- 発売日 : 2007/10/16
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 360ページ
- ISBN-10 : 4006001851
- ISBN-13 : 978-4006001858
- Amazon 売れ筋ランキング: - 660,819位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 275位フランス史
- - 909位岩波現代文庫
- - 1,744位ヨーロッパ史一般の本
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トップレビュー
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2014年6月16日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
アメリカ人学者ダーントンは十七世紀フランスの印刷所をつぶさに調べ、ある印刷所の詳細な記録によりつつ、労働条件の悪さに頭にきた職人たちは、オーナーの親方の代わりに、親方夫人などがかわいがる猫からはじまって、町中の猫を始末するという「シャリヴァリ」をやってのけた。ダーントンはこれはフランス革命の前哨戦とも見なせる、といくらかあいまいな結論に至る。細部のエピソードが面白い。またダーントンの親仏嫌独の態度もおもしろい。この著者のアメリカ人は、ちょっとナイーヴすぎるかも。
2015年4月16日に日本でレビュー済み
歴史について考えるとき、今の常識やモラルで過去をさばく
ような愚はおかさなくても、日常的な行為については、無意識に
現在と地続きであるかのように前提してしまいがちだ。
読書という行為や作者というものへの捉え方が現在とは
まったく異なるような時代もあったのだとわかる。
猫の虐殺に係る印刷工たちの「世界観」は、話としては
わかっても実感としては今ではとても受け入れがたいもの
だろう。
本書はオリジナルから4章を抜粋したもの。
4つめのルソーがいかに読まれたかの分析は読書論としても
秀逸で面白い。
ような愚はおかさなくても、日常的な行為については、無意識に
現在と地続きであるかのように前提してしまいがちだ。
読書という行為や作者というものへの捉え方が現在とは
まったく異なるような時代もあったのだとわかる。
猫の虐殺に係る印刷工たちの「世界観」は、話としては
わかっても実感としては今ではとても受け入れがたいもの
だろう。
本書はオリジナルから4章を抜粋したもの。
4つめのルソーがいかに読まれたかの分析は読書論としても
秀逸で面白い。
2007年12月12日に日本でレビュー済み
中世フランスの社会事情を、史料を使って読み解く。
のだが、この読み方がどうにも個性的で大胆で、どこか推理小説じみてさえいる。
実証学のイメージの強い歴史学とは、ずいぶん趣が異なるが、読み物としてはけっこうおもしろい。
この本にはいくつかの論文がおさめられているが、やはりオススメは表題「猫の大虐殺」だろうか。
なんとも興味をそそられる題名である。
中世のフランスで、いったいなぜ、猫が大虐殺されたのか?
さて、それを著者はなんと読む?
フランスも中世も過去の常識もそれぞれがわからなすぎて、だからこそのおもしろさがある。
感覚的にタイムスリップできる(そしてとまどいを実感できる)本。
のだが、この読み方がどうにも個性的で大胆で、どこか推理小説じみてさえいる。
実証学のイメージの強い歴史学とは、ずいぶん趣が異なるが、読み物としてはけっこうおもしろい。
この本にはいくつかの論文がおさめられているが、やはりオススメは表題「猫の大虐殺」だろうか。
なんとも興味をそそられる題名である。
中世のフランスで、いったいなぜ、猫が大虐殺されたのか?
さて、それを著者はなんと読む?
フランスも中世も過去の常識もそれぞれがわからなすぎて、だからこそのおもしろさがある。
感覚的にタイムスリップできる(そしてとまどいを実感できる)本。
2003年5月22日に日本でレビュー済み
民族学の方法を歴史学に持ち込もうという歴史家の研究書。マザー・グースやルソーが大衆にどんな風に読まれ,また彼らはどんな日常を送っていたのか。限られた貴重な史料から解き明かされます。