道浦母都子という作家は、恥かしながら初めて知った。学生運動華やかな時代に、ロマンと挫折の体験を、短歌という形でしっかりと残してくれた作者に感謝する。同時代に不完全燃焼の青春を送った者として、若干の後ろめたさを感じながら読んだ。臨場感をもってあの時代のことが甦った。他の方々も載せておられるので、それ以外で心に残った歌を書き留めておく。
「スクラムを解けば見知らぬ他人にて街に散りゆく反戦の声」
「リーダーの飲み代に消えしこともある知りつつカンパの声はり上ぐる」
「署から署へ移されて乗る護送車の窓に師走の街映りいつ」
「ビラ一枚タテカンひとつ無きままに雪に埋もるる地方大学」
「神田川流れ流れていまはもうカルチェラタンを恋うことも無き」
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無援の抒情 (岩波現代文庫 文芸 16) 文庫 – 2000/7/14
自選の400首を加えた全共闘世代の自叙伝
- 本の長さ261ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2000/7/14
- ISBN-104006020163
- ISBN-13978-4006020163
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2000/7/14)
- 発売日 : 2000/7/14
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 261ページ
- ISBN-10 : 4006020163
- ISBN-13 : 978-4006020163
- Amazon 売れ筋ランキング: - 529,046位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 800位岩波現代文庫
- - 1,093位戯曲・シナリオ (本)
- - 2,582位詩歌 (本)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2016年8月21日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2013年1月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
60年安保の時代の青春をリリカルに描いた小説に柴田翔の『されどわれらが日々』がある。では70年安保・全共闘世代を扱った文学、『されどわれらが日々』に匹敵する文学に何があるかと考えた時、はたと考え込んでしまう。立松和平氏に『光の雨』があるが、これは連合赤軍という特殊な集団を扱ったもので、全共闘世代の一般的心情を扱ったものではない。そこで思いつくのが(散文ではないが)この道浦母都子氏の歌集『無援の抒情』である。
いつの時代にも真剣に人生を考える若者はいる。人生を考えるとは、人間とは何か、社会とは何か、人間と社会との関係はいかなるものか、また、自分とは何か、自分と家族、自分と社会との関係はいかなるものか、また、いかなるものであるべきかを考えるということであろう。そしてそれを言葉に結実したいと願った時、青春の文学が生まれる。
『無援の叙情』は政治的メッセージではない。
確かに1968年10・21 国際反戦デー闘争が歌われている。
わが縫いし旗を鋭く震わせて反戦デーの朝を風吹く
確かめ合うスクラム弱く震えいてわれらのインター歌声低き
1969年1月18,19日の安田講堂事件が歌われている。
火炎瓶も石も尽きしか静まりし塔に鋭き夜気迫りゆく
炎あげ地に舞い落ちる赤旗にわが青春の落日を見る
しかしそれは全共闘のためのプロパガンダではない。全共闘の時代を真摯に生きた女性の叫びである。
稚き手白き手選びてビラ渡すその手がつかむものを信じて
恋う人は同志なるかと問う友に向かいて重たき頭を振りぬ
お前たちにわかるものかという時代父よ知りたきその青春を
眠られぬ夜を明かして又想う苦しき今を今を生き抜け
思いつくままに幾つか拾ってみたが、これらが私の一番のお気に入りだというわけではない。何故一番のお気に入りを挙げなかったのかというと、それらは巻末に載せられた後藤正治氏の「我が世代を歌う――道浦母都子小論」に取り上げらているからである。実はこの小論が素晴らしいのだ。しかしこれを最初に読んでは絶対いけない。あまりに素晴らしいものなので、本文を読んでいる時知らず識らず氏の選んだ歌を探しているような気持になってしまうからだ。
訂正とお詫び:
柴田翔の『されどわれらが日々』は60年安保ではなく、52年の「血のメーデー事件」を描いたものでした。では、60年安保をリリカルに描いた文学作品に何があるだろうかと考えたのですが、今は思い浮かびません。どなたか紹介して下さいませんか。(2013/08/12)
いつの時代にも真剣に人生を考える若者はいる。人生を考えるとは、人間とは何か、社会とは何か、人間と社会との関係はいかなるものか、また、自分とは何か、自分と家族、自分と社会との関係はいかなるものか、また、いかなるものであるべきかを考えるということであろう。そしてそれを言葉に結実したいと願った時、青春の文学が生まれる。
『無援の叙情』は政治的メッセージではない。
確かに1968年10・21 国際反戦デー闘争が歌われている。
わが縫いし旗を鋭く震わせて反戦デーの朝を風吹く
確かめ合うスクラム弱く震えいてわれらのインター歌声低き
1969年1月18,19日の安田講堂事件が歌われている。
火炎瓶も石も尽きしか静まりし塔に鋭き夜気迫りゆく
炎あげ地に舞い落ちる赤旗にわが青春の落日を見る
しかしそれは全共闘のためのプロパガンダではない。全共闘の時代を真摯に生きた女性の叫びである。
稚き手白き手選びてビラ渡すその手がつかむものを信じて
恋う人は同志なるかと問う友に向かいて重たき頭を振りぬ
お前たちにわかるものかという時代父よ知りたきその青春を
眠られぬ夜を明かして又想う苦しき今を今を生き抜け
思いつくままに幾つか拾ってみたが、これらが私の一番のお気に入りだというわけではない。何故一番のお気に入りを挙げなかったのかというと、それらは巻末に載せられた後藤正治氏の「我が世代を歌う――道浦母都子小論」に取り上げらているからである。実はこの小論が素晴らしいのだ。しかしこれを最初に読んでは絶対いけない。あまりに素晴らしいものなので、本文を読んでいる時知らず識らず氏の選んだ歌を探しているような気持になってしまうからだ。
訂正とお詫び:
柴田翔の『されどわれらが日々』は60年安保ではなく、52年の「血のメーデー事件」を描いたものでした。では、60年安保をリリカルに描いた文学作品に何があるだろうかと考えたのですが、今は思い浮かびません。どなたか紹介して下さいませんか。(2013/08/12)
2023年7月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
二十歳の頃自分は何処にいて何を考えていたのか。
この短歌集を読んだ多くの人が思うことだろう。
ガス弾の匂い残れる黒髪を洗い梳かして君に逢いゆく。
作者より十五歳若い俵万智の短歌、
「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日。
明治・大正期の歌人、与謝野晶子の短歌、
その子二十櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな。
時代は違っても二十歳の頃の自分を見つめる視線は同じだろう。
なお、桐山襲という人の解説が時代状況を理解するのに大変役立った。
この短歌集を読んだ多くの人が思うことだろう。
ガス弾の匂い残れる黒髪を洗い梳かして君に逢いゆく。
作者より十五歳若い俵万智の短歌、
「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日。
明治・大正期の歌人、与謝野晶子の短歌、
その子二十櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな。
時代は違っても二十歳の頃の自分を見つめる視線は同じだろう。
なお、桐山襲という人の解説が時代状況を理解するのに大変役立った。
2017年3月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
とても安く購入出来ました。中味もとてもいいです。若かかりしころを思い出します。
2015年12月10日に日本でレビュー済み
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瀬戸内市の西井です。
この著書は、ずっと以前より探していましたが、古書店でも手に入らなかった物で今回急いで注文し手にいれました。
単行本ですので、余裕のある編集で、老書生にもゆったり落ち着いた気持ちで読書にふけりました。
全てに感謝申し上げます。
この著書は、ずっと以前より探していましたが、古書店でも手に入らなかった物で今回急いで注文し手にいれました。
単行本ですので、余裕のある編集で、老書生にもゆったり落ち着いた気持ちで読書にふけりました。
全てに感謝申し上げます。
2014年3月27日に日本でレビュー済み
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道浦母都子は、安保闘争において過激派と呼ばれる一派に属して、真摯に闘争を行った。あの時代の空気をとてもよく伝えてくれる。正直、私は、短歌と言うものにはなじめなかったが、この無援の抒情の短歌はすべて読み通せた。最初のページを電車の中で開いて「迫りくる盾怯えつつ確かめている私の実在」「「今日生きねば明日生きられぬという言葉想いて激しきジグザグにいる」の2首を読んで思わず本を閉じてしまった。「あっ、泣くな」と思ったからである。それほど、いきなりあの時代の空気が突入してきた。また、安保闘争が政治闘争というよりも、個人の実存の戦いであったことを明確に示してくれる。忘れかけていた時代の空気である。あの、時代を真摯に生きた世代に読み継がれるべき本である。また、あの時代を知らない若者にとって「無援の抒情」はどのように写るであろうか。まさに、あれは「時代」であった。安保闘争のうねりは、時代のうねりであった。若者たちは、時代のうねりに身を預けたのである。
2015年10月24日に日本でレビュー済み
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彼女の人生が現実にどのようなものだったかは知らないが、彼女はあれらの歌を作り公表することで、多分現実の時代を追体験したのだと思う。
ただし 私は燃え落ちる赤旗に「我が青春の落日」などは見なかった。闘いとは「遊びでもフィクションでもない」から。その種の異和感は結構ありますが
道浦母都子は彼女なりの追体験をしっかりやったんだと思う。
ただし 私は燃え落ちる赤旗に「我が青春の落日」などは見なかった。闘いとは「遊びでもフィクションでもない」から。その種の異和感は結構ありますが
道浦母都子は彼女なりの追体験をしっかりやったんだと思う。