万歳、にわか、紙芝居、浪花節、説教、瞽女、いたこ、神楽…。大道、門付けを中心に放浪芸をたどる全国行脚。前半部を占める第一章はレコード「ドキュメント 日本の放浪芸」からの書き起こし(実演部分は割愛)。音がないとそれぞれの差異や具体的な姿はわからないが、それでも次々に出てくる失われた芸の数々の名称や歴史のガイドは貴重で、リズミカルな詞を見るだけで楽しく、そしてスピードに乗った小沢節が流れていくようでじつに読みやすい。ぜひCDと合わせて読みたい。
ただし「貴重」と書くのは著者小沢にとっては不本意で、保存や回顧や感傷でなく生態を追うことに本書の力点がある。放浪芸の数々がいかに神事とつながり、笑いと結びつき、住民の信仰や嗜好に応じて土地と時代に「生きた」形を育んできたか。重ねられてきた演者の工夫にも敬意を払い、それを小沢は何より自らの滋養にしようと探求を続ける。そうした、研究でなく底から湧いてくるような勉強の熱こそがこの本の素晴らしさだ。巧みな語りもさることながら、芸人としての著者自身のルーツを探る情熱と芸に対する愛情の深さに駆動されていく筆致は猛烈にこちらを惹きつける魅力がある。端々に入る生っぽい写真もドキュメンタリーを物語っていて、すごくいい。
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