ゲド戦記の作者による、エッセイ集です。
講演をまとめたものなども合わせてあるので、
題目も、内容も、語り口も、ほんとに様々。
すべて、深い知識や洞察に裏打ちされているので、
一字一句、丁寧に読んで、楽しめる本。
彼女は、外に向く姿勢も、内に向く姿勢も、
筋が通っていながら、しなやかな人だと思います。
外に対しても、内に対しても、開かれている、
と言ったほうが分かりやすいでしょうか。
そして、そこにすくっと立っているのが分かる。
強い存在感があるのです。
そのバランスの良さは、稀有のものです。
思考の海に深く深く沈んでいったかと思うと、
拾い上げてきたものを、すっと現実の光に照らしてみせるような。
この本で取り上げられている小説の数々は、馴染み深い英米文学です。
特に、ヴァージニア・ウルフ。
原書の表題、The Wave in the Mind は、
ウルフの書いた手紙の一節から採られています。
この二人の作家に共通している、
創作に対する感覚や、真摯なまなざしには、感じ入ります。
物語を紡ぎだす深奥を、垣間見ることができるようで。
言葉が存在する以前に、リズムがあるのだといいます。
耳を傾け、
じっと待ち、
それをすくい上げることが出来れば、
おのずと物語は語られる。
一字一句正しい言葉が、そこにのってゆく。
登場人物の名前一つとっても、正しい答えは一つ。
本の帯に綴られた、「わたしは、本物の竜が見たいのです」
というセンテンスの意味を知ったとき、遅まきながら、
ゲド戦記をはじめとする、ル=グウィンの物語を、
ゆっくり紐解いてみようと思いました。
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ファンタジーと言葉 (岩波現代文庫) 文庫 – 2015/3/18
アーシュラ・K.ル=グウィン
(著),
青木 由紀子
(翻訳)
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『闇の左手』などのSFで数々の賞を受賞、〈ゲド戦記〉シリーズでファンタジーの分野でも飛躍的にファン層を広げたル=グウィンのエッセイ集。鋭い言語感覚とウィットに富んだ文章で、ファンタジーを紡ぐ想像力や言葉、さらに生い立ちや愛読書などについてみずからの体験を踏まえ、自由に語る。ファン必読の書。訳者による解題つき.
- 本の長さ352ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2015/3/18
- 寸法10.5 x 1.6 x 15 cm
- ISBN-104006022603
- ISBN-13978-4006022600
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商品の説明
著者について
アーシュラ・K.ル=グウィン (Ursula K. Le Guin)
1929年アメリカ合衆国バークリー生まれ.ラドクリフ・カレッジとコロンビア大学で,フランスおよびイタリアのルネッサンス期文学を専攻.作家.2014年度全米図書賞〈米文学への貢献〉賞受賞.著書にファンタジー『ゲド戦記』(全六巻),SF『闇の左手』『所有せざる人々』,エッセイ集『夜の言葉』『世界の果てでダンス』など.
青木由紀子(あおき ゆきこ)
1954年,東京生まれ.東京大学比較文学比較文化博士課程修了.訳書に,アーシュラ・K・ル=グウィン『ロカノンの世界』,マーガレット・マーヒー『足音がやってくる』など
1929年アメリカ合衆国バークリー生まれ.ラドクリフ・カレッジとコロンビア大学で,フランスおよびイタリアのルネッサンス期文学を専攻.作家.2014年度全米図書賞〈米文学への貢献〉賞受賞.著書にファンタジー『ゲド戦記』(全六巻),SF『闇の左手』『所有せざる人々』,エッセイ集『夜の言葉』『世界の果てでダンス』など.
青木由紀子(あおき ゆきこ)
1954年,東京生まれ.東京大学比較文学比較文化博士課程修了.訳書に,アーシュラ・K・ル=グウィン『ロカノンの世界』,マーガレット・マーヒー『足音がやってくる』など
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2015/3/18)
- 発売日 : 2015/3/18
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 352ページ
- ISBN-10 : 4006022603
- ISBN-13 : 978-4006022600
- 寸法 : 10.5 x 1.6 x 15 cm
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- - 601位岩波現代文庫
- - 1,131位外国のエッセー・随筆
- - 16,295位評論・文学研究 (本)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2016年1月6日に日本でレビュー済み
90年代から、2000年代初めに書かれたエッセイを集めた本である。ル=グウィンの父が文化人類学者であった事の影響が如何に大きかったか、が分かった。生家に、ネイティブ・アメリカンの長老じみた人物が居候して仲良しになったり、彼らの話しを聞いた事が彼女の世界の見方の形成に大きく寄与していた。書かれた物、詩だけでなく、小説にも特有のリズムがあり、またそれがないとダメな事を、ジェーン・オースティンの2つの小説やヴァージニア・ウルフの書くことについての日記を例にとって説明する所など感銘深かった。これに関連して、書かれたものが口承に比べて人間に取って自然でない事などを力説する。また、年を取る事に関するエッセイなど上質のユーモアを感じさせる所が多々あった。やんわりとだが、はっきりと自己のフェミニストとしての主張を書き付けたエッセイも含む。ただしここでも、筆致は穏やかだ。彼女が評価するお気に入り作家が、トルストイ、マーク・トウェイン、ディケンズ、P・K・ディックであることを初めて知り、うなづいた。ただしトルストイについては、彼女自身が中年をすぎてから、彼の人生観や生き方に批判的視点を持って接している事を書いている。以上で分かるように、日本版の題名から彼女のファンタジー(SFでなく)のファンが期待するような事はあまり書かれていなかった事に注意。ファンタジーよりも、より一般的にフィクションとノンフィクションの違いについての長い考察はあった。原題は”心の中の波”であり、書かれたものの中や、人と人の会話の中にあるリズムや交感などを指すと思われる。
2006年9月17日に日本でレビュー済み
ル=グウィン女史は広い視野の持ち主です。
「われわれが中心である」と思い込んでいる方々を鋭く批判しています。
例えば、262頁で「政治家や説教師や評論家が『家族』という言葉を
発するにもかかわらず、家族がどのように構成されているか見ようと
する人はほとんどいないようだ」と述べています。
さて、昨今、「家族」をめぐる言説が氾濫していますが、
われわれが用いる「家族」は社会的支配者側の「家族」像に
すぎないのかもしれないと思いました。
一方、社会的弱者・被支配者たちは支配者側の「家族」に
近づくことを強制されているのではないか...
「家族」のあり方は多様であるはずなのに...
「何らかの不安」によって世の中全体が保守化していっていますが、
ル=グウィン女史の「自由な声」は実に痛快でした。
「われわれが中心である」と思い込んでいる方々を鋭く批判しています。
例えば、262頁で「政治家や説教師や評論家が『家族』という言葉を
発するにもかかわらず、家族がどのように構成されているか見ようと
する人はほとんどいないようだ」と述べています。
さて、昨今、「家族」をめぐる言説が氾濫していますが、
われわれが用いる「家族」は社会的支配者側の「家族」像に
すぎないのかもしれないと思いました。
一方、社会的弱者・被支配者たちは支配者側の「家族」に
近づくことを強制されているのではないか...
「家族」のあり方は多様であるはずなのに...
「何らかの不安」によって世の中全体が保守化していっていますが、
ル=グウィン女史の「自由な声」は実に痛快でした。
2012年2月26日に日本でレビュー済み
高名なSF・ファンタジー作家だ。私から見ると、名前そのものがファンタジーだと思う。ずっと、どういう人なんだろうかと思っていた。
本書を読んで分かった。彼女は闘う人なのだ。敵は性別、人種、宗教、年齢・・・、そこから発生するすべての既成概念や偏見。声を大にして、正々堂々と自分の意見を主張する、格好良いったらありゃしない。
人としての有りようとか、作家・芸術家としての有りよう、物語を生み出す彼女なりの方法論など、饒舌に語ってくれる。散文のリズムを重んじ、語りや読書がパフォーマンスだという彼女の講演は、エンターテインメントらしい。トムやハックの物語に改たな視点を与えてくれるだけでなく、「うるさい雌牛たち」の朗読を目の前で披露されたら、目が点になりそうだけど、作品とは違う作家の姿に触れてみたい。
そう思ってYoutubeで探すと60分ぐらいある朗読映像を見ることができるのだが、残念ながら英語がわからない。でも会場の反応はかなり好意的で、彼女の語り手としてのスキルの高さが確認できる。
本書で、辞書に記載された「ファンタジー」の意味や語源を紹介する語り口には、彼女のストーリーテリングの魅力が溢れている。このような口調で「指輪物語」を母として子供たちに読んでやったのだろうか、羨ましい限りだ。
本書を読んで分かった。彼女は闘う人なのだ。敵は性別、人種、宗教、年齢・・・、そこから発生するすべての既成概念や偏見。声を大にして、正々堂々と自分の意見を主張する、格好良いったらありゃしない。
人としての有りようとか、作家・芸術家としての有りよう、物語を生み出す彼女なりの方法論など、饒舌に語ってくれる。散文のリズムを重んじ、語りや読書がパフォーマンスだという彼女の講演は、エンターテインメントらしい。トムやハックの物語に改たな視点を与えてくれるだけでなく、「うるさい雌牛たち」の朗読を目の前で披露されたら、目が点になりそうだけど、作品とは違う作家の姿に触れてみたい。
そう思ってYoutubeで探すと60分ぐらいある朗読映像を見ることができるのだが、残念ながら英語がわからない。でも会場の反応はかなり好意的で、彼女の語り手としてのスキルの高さが確認できる。
本書で、辞書に記載された「ファンタジー」の意味や語源を紹介する語り口には、彼女のストーリーテリングの魅力が溢れている。このような口調で「指輪物語」を母として子供たちに読んでやったのだろうか、羨ましい限りだ。
2008年2月29日に日本でレビュー済み
ル=グウィンといえば、フェミニズムということにもなる。「夜の言葉」を改訂したとき、三人称代名詞をheやsheからitに変えてしまうような荒技も見せてくれた。そして今回は、冒頭のエッセイ「自己紹介」において、「わたしは男である」と述べる。そして、ぼく自身、このエッセイを通して、「闇の左手」への見方を大きく変えてしまった。
「闇の左手」では、両性具有のゲセン人が描かれる。ゲセン人はケメルという、いわゆる発情期のみ、性別が分かれる。そうしたいわば“ジェンダーフリー” のSFとして書かれている。ところが、両性具有のはずのゲセン人だが、描かれている姿はみんな男性そのままだという批判がなされている。ぼく自身も読んだとき、多少は早川文庫の初版のカバーの影響もあるのかもしれないけれども、それでも“ジェンダーフリー”ではみんな男性になってしまうのか、と思ってしまった。このことが、ぼくが今でも「闇の左手」を好きになれない理由にもなっている。
でも、こうした背景には、ル=グウィンがラディカルフェミニズムの影響を受けていることが示される。かつて、世界には男性しかいなかった。言うまでもなく、人間はmanであり、特殊なものとしてwomanがいる。日本語でも、彼は彼男ではなく彼であり、彼女は彼の女性形という特殊なものである。こうした言葉が示すように、ジェネラル・モーターズの社長もハーバード大学の学長も男性であることが当たり前だった。当たり前だからこそ、当たり前に生きてきたル=グィンもまた、男性なのだ。だからこそ、ゲセン人もまた、ケメルの時期以外は、みんな男性ということになる。
もちろん、ラディカル・フェミニズム、何事も男性並を目指すことに対する批判が存在することは、ル=グィンだって知らないわけではないだろう。ゲド戦記の「帰還」において、ゲドを救うテナーを描き、「トンボ」〜「アースシーの風」ではすっかり女性たちの物語にしてしまったくらいなのだから。それでもなお、ル=グウィンは「わたしは男である」と述べていることに、このことの深さがある。
それにしても、あらためて思ったのは、ル=グウィンが言うように、ゲセン人がみんな男だとして、セクシュアリティはどうなるんだろう、ということだ。「闇の左手」が好きになれないのは、男性ばかりの社会でセクシュアリティに感情移入できなかったから、ということは素直に認めなくては行けない。でも、だとしたら、ジェンダーとセクシュアリティは実は不可分ではないのだろうか。そんなことを考えてしまう。
ル=グウィンは何より本が好きな子供だったという話も披露される。中でも、マーク・トウェインが好きだったというのは、意外といえば意外かも。これがディケンズだったら、そうだよなあって思うところなのだろうけれども。でも、ここで彼女が取り上げるのは、「イブの日記」であり、「ハックルベリー・フィンの冒険」である。前者はぼくも好きな作品。自立した女性イブに対し、アダムが情けなかったりして、なかなか笑える。「ハックルベリー」は、昔アニメで見ただけなのだけれども、子供が奴隷である黒人青年と繰り広げる冒険は、けっこう深い話だった。それは黒人青年が子供を助け、成長させる話であり、男性/女性、白人/黒人という関係において、この二つの作品は相似形なのだから。
最後に、多分、本書の重要なメッセージ。それはおそらく、「本を読もう」ということなんだろう。本を通じて、目の前の現実以外の世界に触れることができる。そうすることで、「(アメリカ人の多くがそうであるような)みんなキリスト教徒だ」というような誤解もなくなるだろう。ル=グウィンは2001年9月11日の同時多発テロに対する報復に強く反対したけれども、確かに多くの人が本を通じて広い世界、異なる価値観を認めるkとができれば、こうしたことは起こらなかったのかもしれない。そのぐらい重要なこと、というのが、ル=グウィンの認識なのだと思う。
「闇の左手」では、両性具有のゲセン人が描かれる。ゲセン人はケメルという、いわゆる発情期のみ、性別が分かれる。そうしたいわば“ジェンダーフリー” のSFとして書かれている。ところが、両性具有のはずのゲセン人だが、描かれている姿はみんな男性そのままだという批判がなされている。ぼく自身も読んだとき、多少は早川文庫の初版のカバーの影響もあるのかもしれないけれども、それでも“ジェンダーフリー”ではみんな男性になってしまうのか、と思ってしまった。このことが、ぼくが今でも「闇の左手」を好きになれない理由にもなっている。
でも、こうした背景には、ル=グウィンがラディカルフェミニズムの影響を受けていることが示される。かつて、世界には男性しかいなかった。言うまでもなく、人間はmanであり、特殊なものとしてwomanがいる。日本語でも、彼は彼男ではなく彼であり、彼女は彼の女性形という特殊なものである。こうした言葉が示すように、ジェネラル・モーターズの社長もハーバード大学の学長も男性であることが当たり前だった。当たり前だからこそ、当たり前に生きてきたル=グィンもまた、男性なのだ。だからこそ、ゲセン人もまた、ケメルの時期以外は、みんな男性ということになる。
もちろん、ラディカル・フェミニズム、何事も男性並を目指すことに対する批判が存在することは、ル=グィンだって知らないわけではないだろう。ゲド戦記の「帰還」において、ゲドを救うテナーを描き、「トンボ」〜「アースシーの風」ではすっかり女性たちの物語にしてしまったくらいなのだから。それでもなお、ル=グウィンは「わたしは男である」と述べていることに、このことの深さがある。
それにしても、あらためて思ったのは、ル=グウィンが言うように、ゲセン人がみんな男だとして、セクシュアリティはどうなるんだろう、ということだ。「闇の左手」が好きになれないのは、男性ばかりの社会でセクシュアリティに感情移入できなかったから、ということは素直に認めなくては行けない。でも、だとしたら、ジェンダーとセクシュアリティは実は不可分ではないのだろうか。そんなことを考えてしまう。
ル=グウィンは何より本が好きな子供だったという話も披露される。中でも、マーク・トウェインが好きだったというのは、意外といえば意外かも。これがディケンズだったら、そうだよなあって思うところなのだろうけれども。でも、ここで彼女が取り上げるのは、「イブの日記」であり、「ハックルベリー・フィンの冒険」である。前者はぼくも好きな作品。自立した女性イブに対し、アダムが情けなかったりして、なかなか笑える。「ハックルベリー」は、昔アニメで見ただけなのだけれども、子供が奴隷である黒人青年と繰り広げる冒険は、けっこう深い話だった。それは黒人青年が子供を助け、成長させる話であり、男性/女性、白人/黒人という関係において、この二つの作品は相似形なのだから。
最後に、多分、本書の重要なメッセージ。それはおそらく、「本を読もう」ということなんだろう。本を通じて、目の前の現実以外の世界に触れることができる。そうすることで、「(アメリカ人の多くがそうであるような)みんなキリスト教徒だ」というような誤解もなくなるだろう。ル=グウィンは2001年9月11日の同時多発テロに対する報復に強く反対したけれども、確かに多くの人が本を通じて広い世界、異なる価値観を認めるkとができれば、こうしたことは起こらなかったのかもしれない。そのぐらい重要なこと、というのが、ル=グウィンの認識なのだと思う。
2006年7月30日に日本でレビュー済み
この本は元々「心のなかの波」と言う作者の4冊目のエッセイ集から、19編を選んで編集されたものだそうです。
この「心のなかの波」と言うタイトル自身が、ヴァージニア・ウルフの手紙から取られており、この本の中でも引用されています。それだけ、作者のヴァージニア・ウルフへの傾注の深さを感じられます。
このエッセイ集は、かなり多岐に渡って語られています。
人類学者の家に育ったこと、子供時代の豊富な読書量、そしてファンタジーへの言及、更には、「心のなかの波」と言う言葉に象徴される「言葉」、特にその「音」の読者との共鳴について語られています。
もちろん、フェミニズムについても語られていますが、何と言っても、この本のメインは、「心のなかの波」です。
「言語」は本来「音読」により、作品の「リズム」を掴むことが大切で、それにより、読者の精神が作者の作品の心と共鳴して、その世界に入り込めるのだと言っています。逆に言えば、ものを書くという時には、その「リズム」を大切に書かなければいけないと言うことになります。
ウルフは、「文体って全部リズムなの。いったんリズムをつかんだら、間違った言葉なんて使いようがないの。・・・ある光景、ある感情が心のなかにこの波をつくりだすの。」と言っています。
天才ウルフならではの感覚なのかも知れませんが、何となく本を読む側としても、「リズム」の良し悪しは、その本の読みやすさに繋がり、その本の中に入り込みやすさに繋がっているようにも感じます。
この「心のなかの波」と言うタイトル自身が、ヴァージニア・ウルフの手紙から取られており、この本の中でも引用されています。それだけ、作者のヴァージニア・ウルフへの傾注の深さを感じられます。
このエッセイ集は、かなり多岐に渡って語られています。
人類学者の家に育ったこと、子供時代の豊富な読書量、そしてファンタジーへの言及、更には、「心のなかの波」と言う言葉に象徴される「言葉」、特にその「音」の読者との共鳴について語られています。
もちろん、フェミニズムについても語られていますが、何と言っても、この本のメインは、「心のなかの波」です。
「言語」は本来「音読」により、作品の「リズム」を掴むことが大切で、それにより、読者の精神が作者の作品の心と共鳴して、その世界に入り込めるのだと言っています。逆に言えば、ものを書くという時には、その「リズム」を大切に書かなければいけないと言うことになります。
ウルフは、「文体って全部リズムなの。いったんリズムをつかんだら、間違った言葉なんて使いようがないの。・・・ある光景、ある感情が心のなかにこの波をつくりだすの。」と言っています。
天才ウルフならではの感覚なのかも知れませんが、何となく本を読む側としても、「リズム」の良し悪しは、その本の読みやすさに繋がり、その本の中に入り込みやすさに繋がっているようにも感じます。
2006年10月3日に日本でレビュー済み
ル=グウィン女史にとって、「言葉」がいかに重要な地位を占めているかがわかります。また、本書では「言葉」だけではなく、それを紡ぐ「音」についても言及されています。
物理の授業において、音は波動だと習います。物語を通して伝わる波(リズム)が読者の心の中を流れる波と同調したとき、人の心は深く揺さぶれるのでしょう。
物理の授業において、音は波動だと習います。物語を通して伝わる波(リズム)が読者の心の中を流れる波と同調したとき、人の心は深く揺さぶれるのでしょう。