唐の高僧・鑒真(688~763)の五回の失敗の末、ようやく果たされた日本渡来を主軸とした物語です。
多くの方のレビューで述べられている様に、本書の特徴は、文章が淡々としている事、感情を抑制した筆致に徹している事です。
『天平の甍』の場合、それが作品の質を高めることに成功していると思われます。
主人公・普照。および、栄叡、戒融、玄朗。
この四人の日本人留学僧の、唐に渡ってからの、それぞれの生涯が描かれています。
唐の高僧・鑒真の日本招来に尽力したのは、栄叡と普照です。
しかし、その実現は困難を極め、普照も、鑒真に従う唐僧たちも、懐疑的になっていきます。
最後まで志を持ち続けたのは、栄叡と鑒真自身でした。
その栄叡も、道半ばで病を得て、世を去ります。
失明した鑒真和上が日本渡来したとき、日本人留学僧の中で生きて故国の土を踏んだのは、普照ただ一人でした。
一方、普照が別個に関わった、業行という日本人留学僧。
その生涯をひたすら写経のみに費やした、特異な人物です。
業行は、自身の書写した経典を日本へ届けることに、異常な執念を抱いています。
普照もまた、業行の悲願のために尽力するのですが····。
仏教事業のため、日本と唐を往来すること。
その過程で、多くの人物や経典が、荒れ狂う海の中へ沈んでいきました。
業行の生涯をかけて書写した経典もまた、彼自身もろとも海の藻屑と消えたのです。
鑒真とは対照的な、業行の悲運は『天平の甍』のもうひとつの結末として、心を打つものがあります。
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天平の甍 (旺文社文庫 7-2 必読名作シリーズ) 文庫 – 1990/3/1
井上 靖
(著)
- 本の長さ256ページ
- 言語日本語
- 出版社旺文社
- 発売日1990/3/1
- ISBN-104010660341
- ISBN-13978-4010660348
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登録情報
- 出版社 : 旺文社 (1990/3/1)
- 発売日 : 1990/3/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 256ページ
- ISBN-10 : 4010660341
- ISBN-13 : 978-4010660348
- Amazon 売れ筋ランキング: - 2,225,233位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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(1907-1991)旭川市生れ。
京都大学文学部哲学科卒業後、毎日新聞社に入社。戦後になって多くの小説を手掛け、1949(昭和24)年「闘牛」で芥川賞を受賞。1951年に退社して以降は、次々と名作を産み出す。
「天平の甍」での芸術選奨(1957年)、「おろしや国酔夢譚」での日本文学大賞(1969年)、「孔子」での野間文芸賞(1989年)など受賞作多数。1976年文化勲章を受章した。
カスタマーレビュー
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トップレビュー
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2024年4月14日に日本でレビュー済み
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2023年10月19日に日本でレビュー済み
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奈良の唐招提寺、鑑真和上の渡日をめぐる日本の僧を描いた本です。挑むこと数度、当時の船舶は死を覚悟
してのことでありました。仏を広めるため盲目になりながら、渡日を果たす鑑真和上も凄いが、日本の僧侶
の粘り強い働きも描かれております。さすが、井上靖文学が如実に表れた本となっております。
若い人にも読んでもらいたい作品です。
してのことでありました。仏を広めるため盲目になりながら、渡日を果たす鑑真和上も凄いが、日本の僧侶
の粘り強い働きも描かれております。さすが、井上靖文学が如実に表れた本となっております。
若い人にも読んでもらいたい作品です。
2019年9月22日に日本でレビュー済み
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大阪港から内陸の旅になるはずだ。海外へ行くのには大変な勉強をして、中国に経をもらいにいくのだろう。でも、それは何のためだろうか。解決のつかない問題があるから、教えをこいにいくのだろうか。愚にもつかないような凡人の犯行に、多大な努力を払うことは、いつの時代もバカなことのように思われた。大阪でスーパーの店頭でアイスコーヒーをグビグビ開けるような、自称親戚のために、小矢部へ辿りつくことなのか。壊素は偉い僧だったろうか。どんなことをしても文句だけは言わせてくれるような。旅が終わって、ふと見れば、解決のつかない問題というのは、いつも自分を試す一里塚の夜明けの街でに見えていたということです。小矢部市で写経をしながら、どうにもならなくなっていく世の中を思う。
2022年9月29日に日本でレビュー済み
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息子の学校課題で使用する必要があり購入しました。
私は読んでいないので内容は分かりません...
私は読んでいないので内容は分かりません...
2021年9月17日に日本でレビュー済み
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5人の遣唐使と鑑真•門弟を描いた傑作歴史小説です。1400年前の唐を舞台に、史実とフィクションの狭間で、嵐の中を舞う木の葉のような人間存在の脆弱さと、一方で信念を負い滅私の中に一歩ずつ突き進む人物たちの根源的な強さとを絶妙なバランスの中で描いていました。
自らの手と足を使って情報を持ち帰るしかなかった彼方の時代に触れて、溢れかえる情報の中を意志もなく漂流する現代人とを頭の中で対比させながら読みました。
そして、最も愚直に描かれた人物、蟻のように不器用に、実直に、生きたのちに海の藻屑と散った業行の奥に、「天才•空海」の影を見るとした山本健吉の解説に心が打ち震えました。
登場人物たちの心理描写を最小限に抑制している点が、この物語の侘しくて儚い美しさを際立たせているように感じました。
自らの手と足を使って情報を持ち帰るしかなかった彼方の時代に触れて、溢れかえる情報の中を意志もなく漂流する現代人とを頭の中で対比させながら読みました。
そして、最も愚直に描かれた人物、蟻のように不器用に、実直に、生きたのちに海の藻屑と散った業行の奥に、「天才•空海」の影を見るとした山本健吉の解説に心が打ち震えました。
登場人物たちの心理描写を最小限に抑制している点が、この物語の侘しくて儚い美しさを際立たせているように感じました。
2022年3月11日に日本でレビュー済み
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文化財鑑賞が好きな私は、奈良の唐招提寺に2014年6月に訪れました。唐招提寺の国宝・重要文化財をくまなく鑑賞しました。鑑真が開基の唐招提寺は井上靖の「天平の甍」で知っていました。
境内にある新宝蔵にh冠されている当時の金堂の屋根の西側に設置されていたという鴟尾(しび)を観ました。
まさに天平の甍です。大きかったです。高さは1.2mの紹介だきされていました。大きかったです。
手順前後ですが、「天平の甍」を読んでみたくなり、amazonで購入しました。
長編でないので直ぐに読み終えました。
遣唐使の一員で朝廷から唐の高僧を日本に(大和に)来ていただくことを託された二人の僧がやがて鑑真と会い、五度目のチャレンジでようやく日本にたどり着き、聖武天皇から唐招提寺を与えられ、日本仏教の戒律制定と仏教普及に貢献したことが書かれています。唐招提寺の生い立ちを知るための一つの材料です。
境内にある新宝蔵にh冠されている当時の金堂の屋根の西側に設置されていたという鴟尾(しび)を観ました。
まさに天平の甍です。大きかったです。高さは1.2mの紹介だきされていました。大きかったです。
手順前後ですが、「天平の甍」を読んでみたくなり、amazonで購入しました。
長編でないので直ぐに読み終えました。
遣唐使の一員で朝廷から唐の高僧を日本に(大和に)来ていただくことを託された二人の僧がやがて鑑真と会い、五度目のチャレンジでようやく日本にたどり着き、聖武天皇から唐招提寺を与えられ、日本仏教の戒律制定と仏教普及に貢献したことが書かれています。唐招提寺の生い立ちを知るための一つの材料です。
2022年2月27日に日本でレビュー済み
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人物それぞれと仏像、背景がやっと結びつきました。昔に読んでいても心に刺さらなかったかもしれません。今読んで良かったです。