現実生活の苦しさのインパクトが大きかった。
とくに絵を仕事にしようと考えたことのある人は身につまされるものがあるだろう。
内容は暗くて夢がなくて現実的(表現は突飛だけど)。
親孝行なんてある日突然できなくなっちゃうものだし、どんなに命がけで働いてもその苦しみは減らないし報われない。
こんな日々がもしかして死ぬまで続くのだろうか?
といった孤独やむなしさには共感を覚えるし、そのため作品をものすごくリアルに感じた。
そしてそれをこんな美しい漫画にできる林さんはやっぱりすごい。
内容についてもうちょっと補足。
これは同棲する男女の物語ではあるが、そこに笑いが絶えない明るい生活とか愛の言葉とかは基本的に出てこない。
家では常に仕事におわれ、やつあたりや喧嘩はしょっちゅうする。
幸子は一郎の苦しみや彼なりの優しさを理解していないし、一郎は幸子が彼に望むことを分かっていても叶えられない。
お互いが「自分なりに」相手を思いやっているからこそ、かえって傷つけあってしまうというジレンマにもはっとさせられる。
あと、個人的に感動するのは、やはりそんなシビアな物語なのに林さんの絵がこの漫画を美しくしているところ。
あまりにもきれいな絵に、最後まで緊張しながら時間をかけて読んだ。
すんだ夜空に流れるお星さまからは、本当にひんやりとした昭和の冬の夜の空気のにおいが伝わってくるし(筆者は平成生まれだけど分かる!)、
ごくシンプルに脱力したフォルムで描かれているのに、幸子さんはちゃんとかわいらしくて、小梅ちゃんの美に通じるものがちゃんとある。
真っ黒い屋根瓦に降りつける吹雪、質素な木造の家々。
小さな電球や下駄をひっかけて表へ飛び出す一郎などからは、昭和の清貧とでもいいたい空気が生々しく伝わってくる。
しかもその生々しさが美しい(実際は不潔だったりダサいはずなんだけど)。
あがた森魚さんのエッセイは個人的にはよくわからなかった。
同タイトルの曲も何回も聴いてみたけれど、自分には原作に抱いたような感動はなかった。
世代が違うからかだろうか?
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赤色エレジー (シリーズ昭和の名作マンガ) コミック – 2008/12/19
林 静一
(著)
「明日になれば、朝がくれば、苦しいことなんか忘れられる」。貧しい同棲生活の中で、愛するが故に傷つけ合う一郎と幸子。70年代の風景とファッション、時代感覚と状況のすべてがここにある。作者自身のアニメ絵コンテとダブル収録する一冊!
- 本の長さ376ページ
- 言語日本語
- 出版社朝日新聞出版
- 発売日2008/12/19
- ISBN-104022140119
- ISBN-13978-4022140111
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登録情報
- 出版社 : 朝日新聞出版 (2008/12/19)
- 発売日 : 2008/12/19
- 言語 : 日本語
- コミック : 376ページ
- ISBN-10 : 4022140119
- ISBN-13 : 978-4022140111
- Amazon 売れ筋ランキング: - 423,164位コミック
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2013年5月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2012年4月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
あがた森魚さんの『赤色エレジー』は今も時折耳にします。
この作品は60年代から70年代の日本カルチャーの記念碑の一つにあたるでしょう。
今も漫画は次から次へとジャンルを拡大していますが、この頃の漫画のムーブメントも凄かったですね。
林静一さんの作品は、読者の方が理解できなければ時代に後れているような錯覚に襲われるものでした。
コラージュのような手法で描かれたサブカルチャー臭の漂う作品ですが、それだけに今読んでも新鮮です。
若者。貧乏。孤独。恋。絶望。夢。
60年代高度成長の時代は大きな夢をもってそこに突き進んでゆくのが時代心理であったと思います。
経済の負の側面から始まった70年代で、逆に夢に見放された者、夢に取り付かれ貧しさから抜け出せない絶望感が時代を覆ってきたように思われます。
それにあわせて、絵のタッチ、表現形式が前衛的になってきました。
今から見るとポップアートと呼べる絵で、横尾忠則氏達に通じている感じがします。
この時代の感性は日本のカルチャーにあっていたのではないかと実に不思議な気持ちで眺めています。
この作品は60年代から70年代の日本カルチャーの記念碑の一つにあたるでしょう。
今も漫画は次から次へとジャンルを拡大していますが、この頃の漫画のムーブメントも凄かったですね。
林静一さんの作品は、読者の方が理解できなければ時代に後れているような錯覚に襲われるものでした。
コラージュのような手法で描かれたサブカルチャー臭の漂う作品ですが、それだけに今読んでも新鮮です。
若者。貧乏。孤独。恋。絶望。夢。
60年代高度成長の時代は大きな夢をもってそこに突き進んでゆくのが時代心理であったと思います。
経済の負の側面から始まった70年代で、逆に夢に見放された者、夢に取り付かれ貧しさから抜け出せない絶望感が時代を覆ってきたように思われます。
それにあわせて、絵のタッチ、表現形式が前衛的になってきました。
今から見るとポップアートと呼べる絵で、横尾忠則氏達に通じている感じがします。
この時代の感性は日本のカルチャーにあっていたのではないかと実に不思議な気持ちで眺めています。
2023年5月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
懐かしいですね
あらためて 読み返すと 新鮮です
あらためて 読み返すと 新鮮です
2007年6月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この作品が辛く哀しい恋の話であることは確かだ。しかし、これだけでは伝えきれないものがある。単純化された絵の白と黒の哀しい感じ。その間に現れるリアルな描写の迫力。それらが複雑に組み合わされていて、作品に一貫した静寂と緊張感を与えている。
二人の男女の相手に対するやさしさ、愛情を伝えきれない不器用さ、相手への甘え。
二人はそれぞれに家族との問題を抱えている。相手のことを思うたびに傷つき、傷つけてゆく。その悪循環に男女は流されてゆく...。
読み終わったあと、考える。「もし、僕がこの男女の立場になったとしたら、何ができただろう?」と。答えは...わからない。僕は、まだ若すぎる(高校生)。答えがあるのか、ないのかさえまだ...わからない。
二人の男女の相手に対するやさしさ、愛情を伝えきれない不器用さ、相手への甘え。
二人はそれぞれに家族との問題を抱えている。相手のことを思うたびに傷つき、傷つけてゆく。その悪循環に男女は流されてゆく...。
読み終わったあと、考える。「もし、僕がこの男女の立場になったとしたら、何ができただろう?」と。答えは...わからない。僕は、まだ若すぎる(高校生)。答えがあるのか、ないのかさえまだ...わからない。
2002年5月6日に日本でレビュー済み
文庫で初めて読みました。
若くてお金のない恋人、という話の筋のほうは
かなりしみったれていますが、絵がとにかく斬新で
楽しめました。印象的なシーンもたくさんです。
幸子のユビピストルで撃たれ、ぶっ倒れる一郎のところが
特にぐっと来ました。
若くてお金のない恋人、という話の筋のほうは
かなりしみったれていますが、絵がとにかく斬新で
楽しめました。印象的なシーンもたくさんです。
幸子のユビピストルで撃たれ、ぶっ倒れる一郎のところが
特にぐっと来ました。
2009年10月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
絵に惹かれた購入した。個性的でそれはよいのだが、物語が私の感覚からするとやや淡泊です。
おもしろかったぁ、という感想はでない作品と思います。
おもしろかったぁ、という感想はでない作品と思います。
2018年3月7日に日本でレビュー済み
この本に収録されている「吾が母は」の中に、「きみ一匹で生きて行くにもこの自然は厳しすぎるし現実に私なしでは生きていけない そこでだ! 新しく私ときみは血をわけた家族になるんだ」とあるのに、今ごろ気がつきました。今の日本を象徴してますね。
2010年7月28日に日本でレビュー済み
あがた森魚の名作のモチーフとなった作品。
まず断っておくのは、漫画にテンポのよさを求めている人にはこの作品は合わないだろう。どのくらいそうであるかという、つげ義春よりもずっとずっとテンポはないというレベルだ。それでいて、味がある。これは音楽で言うとポストロックのような作品だ。貧乏で同棲している恋人2人の空気感だけが、ここにはある。その空気感だけを読者は感じ、そこにある人の儚さと美しさを見るのである。
まず断っておくのは、漫画にテンポのよさを求めている人にはこの作品は合わないだろう。どのくらいそうであるかという、つげ義春よりもずっとずっとテンポはないというレベルだ。それでいて、味がある。これは音楽で言うとポストロックのような作品だ。貧乏で同棲している恋人2人の空気感だけが、ここにはある。その空気感だけを読者は感じ、そこにある人の儚さと美しさを見るのである。