昭和天皇に侍従として２０年仕えた卜部亮吉の、最期のお別れはとうとうやってきた。
昭和６４年１月７日 早朝５時前に陛下急変の報せで吹上へタクシーで馳せ参じる。ちょうど６・３３崩御拝訣 皇族・四長官・内親王等お口しめし お順に、長官・皇太后次いで新帝に拝謁、崩御ご報告あと新帝陛下に関連書類伺い、お口しめし奉仕、次に鋏とひげそりにて御整髪奉仕、侍医・看護婦によりお手当、お居間の設営、９・５０終了、剣璽御動座のあと たんかにて御尊骸を御寝室からお居間にお移しする あまりに重いのに驚く（その前にお召しもの奉仕）…ここで初めて主観が現れる。「重い」と「驚く」のは、侍従が中心で少数の者で抱えて移動したからであろう。
平成元年１月８日は久々の雨。１０時から元部局長元側近奉仕者の拝訣 バスにて庁舎から二回にわたって運ぶ、大広間にて拝訣の要領説明ののち順次御前に進む、花蔭亭に連れ戻るもお茶ひとつ出ず恥じをかく…ここでも感情が顕わに出る。いわゆる接待のお茶を頼んでなかったのでだしてあげられなかったのに責任を感じたのであろう。しかし、こういうときお茶を出さなくてもかまわないのではあるまいか。
２・４０お舟入の準備始まる お舟・お榊・お身回り品・白絹の装束など検分 両陛下と参列者に次第説明 参列侍従・侍医により御尊骸をベッドから御内贈にお移しする、あと花蔭亭にて御会食 ８時すぎに終了…島津〔貴子〕さんから開いているお口のこと…ひそかに実施…冠紐にて一応成功…実の娘はやはり親の死顔に気を使う、皇族を離れた元皇女の心遣いが感じられる。
ここでは、わずか一両日を紹介するにすぎなかったが、淡々とした事実を記録する中に、人間的な血の通った表現が見られて、心惹かれる。
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。
