朝日新聞夕刊連載時からすごくおもしろかった!というか、連載スリリングでした。だって大の大人が夏の別荘で「遊んでいる」だけで何も起こらないし、コモローと久呂子さんのカンケー(が何もないの)をわからないまま最初の何日かを読み、終わりのほうで、次の連載は藤野千夜という話題が新聞に出る頃、作品中では「フジノさん」から、連載やりますという電話がきて、コモローは「オレが新聞連載することがあったら、もう、サスペンスあり、大恋愛あり、次の日が待ち遠しくてたまらない感動巨編を書くね」と言うし(次の日が待ち遠しかったのは事実)、「オーエ賞」受賞を期待するコモローが子供っぽいことを言い散らかすあたりは、読んでてどきどきしてしまった。「ちょっと、コモロー、オーエさん朝日読んでるよ!」って、久呂子さんの代わりに呟きつつ読んだりして。
連載終了時の作者のコラムによると、パソコンのコピー&ペーストで同文反復をしてみた、と言うんだけど、わからなかった!今回読み返してもわからなかった!どこよ?「内面」を隠蔽した「私小説」だとも。ちなみに高野文子の挿絵ではコモローは作者似で、久呂子さんは黒子でした。コモローにしろおじさんにしろ、普段から互いに会っている人物たちなのに、夏の別荘だけにカメラを据えている不思議な小説構造は、コモローのブログ「ムシバム」の写真が、虫の意味を抜き取って「本当はこの家を撮っている」のと同じことなんだ!とふいに気づく。久呂子さんが、鴨居に並ぶ電球のすき間の意味をふいに知るように。
ちなみに我が家の「顔」(作中の、恋人のキャラをつくる遊び)で生まれた甥(16才)の恋人「35才メタボでアフロな左門豊作メガネのアニメ声のヲタクウェイトレス」「伊集院ワカメ」は永遠です。
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ねたあとに 単行本 – 2009/2/6
長嶋 有
(著)
山荘での退屈な時間を過ごすために発明(?)された、独創的な「遊び」の数々……ケイバ、顔、それはなんでしょう、軍人将棋。魅惑的な日々の「遊び」が、ひと夏の時間を彩ってゆく。小説家「コモロー」一家の別荘に集う、個性的な(実在する!?)友人たちとの夏の出来事をつづる、大人の青春小説。第一回大江健三郎賞受賞作家による朝日新聞夕刊連載の単行本化。
- 本の長さ333ページ
- 言語日本語
- 出版社朝日新聞出版
- 発売日2009/2/6
- ISBN-104022505311
- ISBN-13978-4022505316
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登録情報
- 出版社 : 朝日新聞出版 (2009/2/6)
- 発売日 : 2009/2/6
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 333ページ
- ISBN-10 : 4022505311
- ISBN-13 : 978-4022505316
- Amazon 売れ筋ランキング: - 792,071位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 18,169位日本文学
- カスタマーレビュー:
著者について
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1972年生まれ。2001年に「サイドカーに犬」で第92回文學界新人賞を受賞しデビュー。02年に「猛スピードで母は」で第126回芥川賞を受賞、07年に『夕子ちゃんの近道』で第1回大江健三郎賞を受賞した(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 エロマンガ島の三人 (ISBN-13: 978-4167693046 )』が刊行された当時に掲載されていたものです)
カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2009年4月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2016年11月15日に日本でレビュー済み
■長嶋有『ねたあとに』2009年2月28日・朝日新聞出版。
■長篇小説。
■2016年11月15日読了。
■採点 ★★★☆☆
本書は軽いスタイルで書かれてあるが、作家自身の強い方法論的確信によって裏打ちされた(と思われる)、極めてチャレンジングな作品である。
これが日本の大手日刊紙に連載されていたことがにわかには信じがたい。
と言うのは、ストーリーらしきものはほとんどない、いや、皆無、と云ってもよい。作家自身を思わせる主人公らしき(?)人物の一家が構える山荘にその親族や友人たちが代わりばんこに滞在する。そこでその山荘に代々伝わるオリジナルの遊びを夜な夜な繰り広げる。
ただ、これだけなのである。
黒子を思わせる「久呂子さん」という主人公の友人が語り手として状況の説明を行うが、いわゆる近代小説的な意味での内面はほぼ排除されている*。
*その意味では「表層小説」とも言いうる。
正直に云って、初めの100ページぐらいはこの小説*の面白さが分からなかった。しかしながら、物語(?)の過半に至ると登場人物たちの様子をただ眺めていることに、ある種の面白味を感じることになる。それはこの山荘の遊び**が変すぎて面白いということもあるが、そこに集う人々***の変過ぎさが面白味を誘うのであろう。
*これは小説なのだろうか?
**個人的には「それはなんでしょう」と「ダジャレしりとり」が面白かった。
***電話でしか登場しない引きこもりのヒキオくんとか強い存在感だ。
いずれにしても本書は読者を選ぶ作品だ。
単行本の装画の高野文子さんが素晴らしい。
■長篇小説。
■2016年11月15日読了。
■採点 ★★★☆☆
本書は軽いスタイルで書かれてあるが、作家自身の強い方法論的確信によって裏打ちされた(と思われる)、極めてチャレンジングな作品である。
これが日本の大手日刊紙に連載されていたことがにわかには信じがたい。
と言うのは、ストーリーらしきものはほとんどない、いや、皆無、と云ってもよい。作家自身を思わせる主人公らしき(?)人物の一家が構える山荘にその親族や友人たちが代わりばんこに滞在する。そこでその山荘に代々伝わるオリジナルの遊びを夜な夜な繰り広げる。
ただ、これだけなのである。
黒子を思わせる「久呂子さん」という主人公の友人が語り手として状況の説明を行うが、いわゆる近代小説的な意味での内面はほぼ排除されている*。
*その意味では「表層小説」とも言いうる。
正直に云って、初めの100ページぐらいはこの小説*の面白さが分からなかった。しかしながら、物語(?)の過半に至ると登場人物たちの様子をただ眺めていることに、ある種の面白味を感じることになる。それはこの山荘の遊び**が変すぎて面白いということもあるが、そこに集う人々***の変過ぎさが面白味を誘うのであろう。
*これは小説なのだろうか?
**個人的には「それはなんでしょう」と「ダジャレしりとり」が面白かった。
***電話でしか登場しない引きこもりのヒキオくんとか強い存在感だ。
いずれにしても本書は読者を選ぶ作品だ。
単行本の装画の高野文子さんが素晴らしい。
2009年2月10日に日本でレビュー済み
映画「レザボア・ドッグズ」を見たとき、冒頭五分ぐらい男たちが飯を食いながら相当どうでもいいことをしゃべりつづけて全然おはなしが始まらないので「なんだこれ?」と思った。
「ねたあとに」は、あの冒頭五分間がずっと続くような小説という感じ。
山荘に大人が集まって、いろんな遊びを遊んでいる。
いつおはなしが始まるのかと思っていると
なんと、始まらない! すごい。
アッコさんという巨乳の女の人が出てくるけど、恋愛もなし。
男たちがひたすら遊ぶそばでただ揺れているだけ(もったいない)。
それは小説として面白いのか?
意外にも、面白いのだ!
人生の成分を「ドラマチックなできごと(意義深い出会いや別れ、身を焦がす恋愛、人間的成長など)」と「それ以外のなんてことのない日常」とに分けると、人生の99%の時間はきっと後者だろう。
今まで小説は前者(ドラマチックなこと)を書くものだとなんとなく思っていたけど、後者「だけ」の小説があったっていいじゃないか。
むしろ後者のうちに語られるべき面白い細部がいっぱいあるんじゃないのか?
「ねたあとに」はそう言っているようだ。
(そういえば漱石の「猫」だって、大のおとなが遊びだべる「だけ」の小説だった。)
日常の細部は人生の大きなドラマと同じぐらい面白い。
長嶋有はデビュー以来そう言いつづけてきたと思う。
「ねたあとに」はそれを突きつめ、ドラマを徹底排除したあとに「何か」が浮かび上がってくるじつにスリリングな小説だ(しかしこんな壮大な実験をよく新聞連載でやったものだ)。
真剣に遊ぶ地球人を、宇宙人が上空から見てつづった観察日誌みたいな面白さ。
初めて読む長嶋作品にはお薦めしないが、間違いなくいちばんエッジな長嶋作品。
作家コモローの山荘に招かれた気分で、一晩に一章ずつ読むことをお薦めします。
「ねたあとに」は、あの冒頭五分間がずっと続くような小説という感じ。
山荘に大人が集まって、いろんな遊びを遊んでいる。
いつおはなしが始まるのかと思っていると
なんと、始まらない! すごい。
アッコさんという巨乳の女の人が出てくるけど、恋愛もなし。
男たちがひたすら遊ぶそばでただ揺れているだけ(もったいない)。
それは小説として面白いのか?
意外にも、面白いのだ!
人生の成分を「ドラマチックなできごと(意義深い出会いや別れ、身を焦がす恋愛、人間的成長など)」と「それ以外のなんてことのない日常」とに分けると、人生の99%の時間はきっと後者だろう。
今まで小説は前者(ドラマチックなこと)を書くものだとなんとなく思っていたけど、後者「だけ」の小説があったっていいじゃないか。
むしろ後者のうちに語られるべき面白い細部がいっぱいあるんじゃないのか?
「ねたあとに」はそう言っているようだ。
(そういえば漱石の「猫」だって、大のおとなが遊びだべる「だけ」の小説だった。)
日常の細部は人生の大きなドラマと同じぐらい面白い。
長嶋有はデビュー以来そう言いつづけてきたと思う。
「ねたあとに」はそれを突きつめ、ドラマを徹底排除したあとに「何か」が浮かび上がってくるじつにスリリングな小説だ(しかしこんな壮大な実験をよく新聞連載でやったものだ)。
真剣に遊ぶ地球人を、宇宙人が上空から見てつづった観察日誌みたいな面白さ。
初めて読む長嶋作品にはお薦めしないが、間違いなくいちばんエッジな長嶋作品。
作家コモローの山荘に招かれた気分で、一晩に一章ずつ読むことをお薦めします。