とても評価に困る作品だ。
読んでいて楽しかったかと問われれば、楽しい瞬間はひとかけらもない。自己正当化に必死な醜い日本人のオンパレードだし、しょっちゅう登場する日本社会の病理とやらへの批判も紋切り型でまったく胸に響かない。サプライズはひとつもなく、こうなるのだろうなと予想できることが予想できる通りに再確認されていくだけの小説だ。
しかし明らかに、作者はそんなことは先刻承知で書いているのだ。社会派っぽい内容そのものもミスディレクションのひとつだろう。
これは序章に書かれている通りあの歴史的名作に対する挑戦であり、「本当に『全員』が犯人というのはこういうことだ!」と高らかに宣言してそれを成し遂げた作品なのだ。だから被害者の父親がクライマックスで冒頭を思い出して慟哭する時、探偵も犯人であり読者さえも犯人であると指弾してこの小説は「完成」するのである。
恥ずかしながら自分も、推理作家協会賞の北村薫選考委員の選評を読むまでこの点にまったく気づかなかった。この点が北村薫の深読みや過大評価などではなく貫井徳郎の狙いそのものであることは受賞のことばを読めばよくわかる。
しかし、それを措いても、だ。
まったく楽しくなかった。読むのがつらい小説だった。
こんなものを、しかし最後まで読み通せるように書いてしまう作者の筆力が恨めしい。
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乱反射 単行本 – 2009/2/20
貫井 徳郎
(著)
ひとりの幼児を死に追いやった、裁けぬ殺人。街路樹伐採の反対運動を起こす主婦、職務怠慢なアルバイト医、救急外来の常習者、事なかれ主義の市役所職員、尊大な定年退職者……複雑に絡み合ったエゴイズムの果てに、悲劇は起こった。残された父が辿り着いた真相は、罪さえ問えない人災の連鎖だった。遺族は、ただ慟哭するしかないのか? モラルなき現代日本を暴き出す、新時代の社会派エンターテインメント!
- 本の長さ516ページ
- 言語日本語
- 出版社朝日新聞出版
- 発売日2009/2/20
- ISBN-104022505419
- ISBN-13978-4022505415
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登録情報
- 出版社 : 朝日新聞出版 (2009/2/20)
- 発売日 : 2009/2/20
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 516ページ
- ISBN-10 : 4022505419
- ISBN-13 : 978-4022505415
- Amazon 売れ筋ランキング: - 520,587位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2024年3月5日に日本でレビュー済み
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2023年7月10日に日本でレビュー済み
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注文してすぐに届きました。
状態も良かったです!
通勤時間、電車の中の読書が毎日の楽しみです。
状態も良かったです!
通勤時間、電車の中の読書が毎日の楽しみです。
2017年4月14日に日本でレビュー済み
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ストーリーは、同著者の愚行録同様、章毎に人物が切り替わり、なぜ主人公の子供が死ぬ事になったのか、その伏線となる愚かな行動が延々と語られる。何故死んだのかその理由を知りたくて黙々た読み進められる。
以降ネタバレになりますが、
最後に、主人公自身も1度だけという息子を間接的に殺した愚かな人々と同じ気持ちで、1度だけならとパーキングエリアのゴミ箱に自宅のゴミを捨てたことを、自身が攻めてきた愚かな人々と同じ人種だということを深く悔いるが、できればそのパーキングエリアに捨てたゴミが息子を死に追いやる連鎖が始まるキッカケだった、とかだとより良かったと思う。例えばパーキングエリアに捨てたゴミの中に家庭で出た天ぷら油が含まれていて、犬の散歩をしていた叔父さんは実はそのパーキングの掃除夫として一時期働いていて、片付けた際に油に足を滑らせ腰を悪くし、その際で犬のフンを片付けられなくなったとか。。。素人考えですが、何か始まりが主人公の愚かな行いだったという鬱エンドを期待せずにはいられませんでした。
以降ネタバレになりますが、
最後に、主人公自身も1度だけという息子を間接的に殺した愚かな人々と同じ気持ちで、1度だけならとパーキングエリアのゴミ箱に自宅のゴミを捨てたことを、自身が攻めてきた愚かな人々と同じ人種だということを深く悔いるが、できればそのパーキングエリアに捨てたゴミが息子を死に追いやる連鎖が始まるキッカケだった、とかだとより良かったと思う。例えばパーキングエリアに捨てたゴミの中に家庭で出た天ぷら油が含まれていて、犬の散歩をしていた叔父さんは実はそのパーキングの掃除夫として一時期働いていて、片付けた際に油に足を滑らせ腰を悪くし、その際で犬のフンを片付けられなくなったとか。。。素人考えですが、何か始まりが主人公の愚かな行いだったという鬱エンドを期待せずにはいられませんでした。
2015年12月12日に日本でレビュー済み
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乱反射というタイトルが、作中には一回も出てこないが作品をよく現わしていると思う。
人は誰しも自分が善人だと信じて行動している。しかし、他人にまったく迷惑をかけない、
ルールを一切破らない、で居続けられる人はどれほどいるだろう。
些細な出来事によって他人に迷惑をかけたり、不快な思せたとき
その負のパワーは誰かに吸収され、蓄積されるか、すぐさま別の誰かに跳ね返ってゆく。
まさに乱反射を繰り返していき、運悪くその無数の乱反射が1点に集中したとき悲劇が起こる。
息子を亡くした主人公が最終的に行き着いた結論は、うーむとうなるばかりです。
ただ、私見を言わせてもらうならば、この小説の素晴らしいところは、作品の二面性です。
レビューも見ても、ほとんどの方は、この事故を作った些細な罪を犯した人々の罪に対してコメントされていますが、
それと同等か、それ以上に著者のメッセージには、事故の被害者となった主人公の罪、より正確に言えばこの時代の罪を問いていると思います。
主人公も何度も自問自答していますが、事故を作った原因を、関係者にいいがかりを付けているだけではないか
というものです。泣き寝入りはしたくないし、すべきではないし、罪ある人には罰を与えなければいけない。
しかしながら、あらゆる不幸にその原因を求めれば、際限がなくあらゆる人が罪人となる現実。
どこかで聞いた言葉ですが、「都会は、生活するには天国、働くには地獄」とかいうのがありました。
これは時代的にもあはてはまる気がする。
この時代は被害者の訴えが受け入れらる能性は高いが、一方加害者になる可能性も高い。
人は誰しも自分が善人だと信じて行動している。しかし、他人にまったく迷惑をかけない、
ルールを一切破らない、で居続けられる人はどれほどいるだろう。
些細な出来事によって他人に迷惑をかけたり、不快な思せたとき
その負のパワーは誰かに吸収され、蓄積されるか、すぐさま別の誰かに跳ね返ってゆく。
まさに乱反射を繰り返していき、運悪くその無数の乱反射が1点に集中したとき悲劇が起こる。
息子を亡くした主人公が最終的に行き着いた結論は、うーむとうなるばかりです。
ただ、私見を言わせてもらうならば、この小説の素晴らしいところは、作品の二面性です。
レビューも見ても、ほとんどの方は、この事故を作った些細な罪を犯した人々の罪に対してコメントされていますが、
それと同等か、それ以上に著者のメッセージには、事故の被害者となった主人公の罪、より正確に言えばこの時代の罪を問いていると思います。
主人公も何度も自問自答していますが、事故を作った原因を、関係者にいいがかりを付けているだけではないか
というものです。泣き寝入りはしたくないし、すべきではないし、罪ある人には罰を与えなければいけない。
しかしながら、あらゆる不幸にその原因を求めれば、際限がなくあらゆる人が罪人となる現実。
どこかで聞いた言葉ですが、「都会は、生活するには天国、働くには地獄」とかいうのがありました。
これは時代的にもあはてはまる気がする。
この時代は被害者の訴えが受け入れらる能性は高いが、一方加害者になる可能性も高い。
2022年10月2日に日本でレビュー済み
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前半がマイナスナンバーから始まる章の設定は、作者の意図的な構成を感じられて効果的でした。
ゼロ章に至るまでは、接点がないごく普通の人々の日常生活を描き、プラスナンバーから始まる後半は、各人の小さなルール違反が偶然の重なり合いにより、一人の幼児の事故死へとつながるという展開です。自分が犯したささいな違反に、この程度なら構わないだろうと見過ごし忘れ去ってしまう人それぞれの身勝手さが連鎖となり、いつかは膨張して、見も知らない他人を撃つ凶器となり得るということです。まさに「乱反射」とは絶妙なタイトルです。
ちょっと無理な展開も見受けられますが、それに勝る作者の発想と構成力にはさすかだと思いました。
ゼロ章に至るまでは、接点がないごく普通の人々の日常生活を描き、プラスナンバーから始まる後半は、各人の小さなルール違反が偶然の重なり合いにより、一人の幼児の事故死へとつながるという展開です。自分が犯したささいな違反に、この程度なら構わないだろうと見過ごし忘れ去ってしまう人それぞれの身勝手さが連鎖となり、いつかは膨張して、見も知らない他人を撃つ凶器となり得るということです。まさに「乱反射」とは絶妙なタイトルです。
ちょっと無理な展開も見受けられますが、それに勝る作者の発想と構成力にはさすかだと思いました。
2018年5月17日に日本でレビュー済み
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今回、貫井徳郎の作品を初めて読みました。
登場人物の心中が上手く描かれていて、約600頁(文庫)もあるのにぐいぐいと読み進められた。
主人公以外にいろんな登場人物がいます。
その中には身勝手な人や同情したくなる人もいる。
事例は違うが「この位、いいか?仕方ないもの!」とマナーを守らなかったことが私も数回あった。
自分が大事!今を快適に!という考えや行動が無意識に身についている人は多いと思う。
この小説を読んでいると、例えが違うかもしれないが「風が吹けば桶屋が儲かる」という諺を連想してしまう。
P538の「・・・気持ちの整理は自分でつけるものなんです。待ってたって、いつまで経っても整理なんかつかないんです」
という上司の言葉が私には深くささった。
受け入れられないけど受け入れなくてはいけない様々な事例にあてはまる力強い言葉だと思う。
どんなにやるせなくても受け入れて生きていかなくてはいけない。
深く考えさせられた内容でした。
登場人物の心中が上手く描かれていて、約600頁(文庫)もあるのにぐいぐいと読み進められた。
主人公以外にいろんな登場人物がいます。
その中には身勝手な人や同情したくなる人もいる。
事例は違うが「この位、いいか?仕方ないもの!」とマナーを守らなかったことが私も数回あった。
自分が大事!今を快適に!という考えや行動が無意識に身についている人は多いと思う。
この小説を読んでいると、例えが違うかもしれないが「風が吹けば桶屋が儲かる」という諺を連想してしまう。
P538の「・・・気持ちの整理は自分でつけるものなんです。待ってたって、いつまで経っても整理なんかつかないんです」
という上司の言葉が私には深くささった。
受け入れられないけど受け入れなくてはいけない様々な事例にあてはまる力強い言葉だと思う。
どんなにやるせなくても受け入れて生きていかなくてはいけない。
深く考えさせられた内容でした。
2020年4月29日に日本でレビュー済み
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誰でもがしているような些細なことが事件に繋がっている。誰が悪いとは言いきれず、読後感は嫌な気分のまま終ります。もしかしたら自分のふとした何気ない行動で何かの事件に繋がっているのかも、と、考えさせられます。
事件にかかわったそれぞれの人のその後はどうなったかと考えるとますます暗い気分になります。
事件にかかわったそれぞれの人のその後はどうなったかと考えるとますます暗い気分になります。