そう、「都市」というのは、人間が自然に逆らって、無理の上に無理を積み重ねて構築している「虚構の空間」だから。その空間で生き続けている人間は、生き物としての不安を感じるのだと思います。
「これでいいのだろうか」そして「このままで、いつまでいられるだろうか?」
この不安を、きわめて苦く、皮肉に満ちて描いているのが「橋」。この本の中で、私が一番怖いと思った話です。そして、この話は「ニュータウン」と地続きでもある。でも、「ニュータウン」は、皮肉と苦さだけではない終わり方をします。ある意味、「始まり」かも知れない終わり方です。
この話、そしてこれが、この連作集の「最終話」に持って来られているという事実から、作者である三崎亜記先生の中には、「都市という虚構の空間」に対する疑問と、そこで生き続けることへの不安がどれほど深刻に存在するとしても、それでもどうしても否定することのできない「愛着」があるのではないかと感じます。
こういう意識を持っている人には、たぶんふたつのタイプがいると思う。
ひとつは「都市で生まれて、都市で育ったから、都市で生きることしか知らない。」私がこのタイプで、そしてこんな意識のあり方を理解して描いてくれたのが「団地船」だと思います。この話は、好きすぎてなにも言えないです。
そして、もうひとつのタイプが、
「何かを捨てて、何かから逃げてきた。だから、都市で生きていくしかない。」
「海に沈んだ町」は、そうやって生きてきた人が、捨てたはずの故郷を改めて失う話です。その気持ちがどんなものか、私には分かりようがないけど…でも、今もそういう気持ちを持って生きている人が、自分が生きている同じ都市にいる。
きっと大勢いるのだと思う…「海に沈んだ町」が、この本のタイトルになったのは、そういうことなんだと思います。
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海に沈んだ町 単行本 – 2011/1/1
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- 本の長さ234ページ
- 言語日本語
- 出版社朝日新聞出版
- 発売日2011/1/1
- ISBN-104022508329
- ISBN-13978-4022508324
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登録情報
- 出版社 : 朝日新聞出版 (2011/1/1)
- 発売日 : 2011/1/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 234ページ
- ISBN-10 : 4022508329
- ISBN-13 : 978-4022508324
- Amazon 売れ筋ランキング: - 993,063位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2023年8月3日に日本でレビュー済み
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2014年2月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
マンションが船になって旅をする「団地船」、突然やってきた海によって故郷を奪われてしまった「海に沈んだ町」
永遠に朝のやって来ない町のお話「四時八分」など非現実なはずなのにもしかして世界のどこかであるのかもしれない・・
そんな不思議な気持ちにさせられる三崎さんの世界観全開の短編集です。
さらにこの短編集を彩っている時々間に登場する白石さんの風景写真が読む人をより三崎さんの世界に浸させてくれます。
言葉にするのが難しい。だからこそ気になった方は一度読んでみて欲しいです。
永遠に朝のやって来ない町のお話「四時八分」など非現実なはずなのにもしかして世界のどこかであるのかもしれない・・
そんな不思議な気持ちにさせられる三崎さんの世界観全開の短編集です。
さらにこの短編集を彩っている時々間に登場する白石さんの風景写真が読む人をより三崎さんの世界に浸させてくれます。
言葉にするのが難しい。だからこそ気になった方は一度読んでみて欲しいです。
2011年1月15日に日本でレビュー済み
やはり三崎亜記の世界。
その世界をつなぐ連作短編。
次の物語のために、
前の物語の中に、
必ず次のキーワードが語られているところも、
遊び心にあふれた仕掛け。
淡々とした描写の中にも、
浮き彫りになる、
人と人との関係。
描かれているのは、
どんな時代、どんな世界でも、
人を信じるのは難しいし、
人を愛するのは尊い。
しかし、
それを貫くのは、なんとも切ない。
時々、
性別が分からなくなる。
わざとぼかしているのだろうが、
それによって、物語に奥行きが出ている。
一見突拍子もない似て非なる町の世界。
独特の世界観によって、
現実世界とのギャップを感じずにはいられない。
失いたくないものは、だれでも同じなんだと思いました。
その世界をつなぐ連作短編。
次の物語のために、
前の物語の中に、
必ず次のキーワードが語られているところも、
遊び心にあふれた仕掛け。
淡々とした描写の中にも、
浮き彫りになる、
人と人との関係。
描かれているのは、
どんな時代、どんな世界でも、
人を信じるのは難しいし、
人を愛するのは尊い。
しかし、
それを貫くのは、なんとも切ない。
時々、
性別が分からなくなる。
わざとぼかしているのだろうが、
それによって、物語に奥行きが出ている。
一見突拍子もない似て非なる町の世界。
独特の世界観によって、
現実世界とのギャップを感じずにはいられない。
失いたくないものは、だれでも同じなんだと思いました。
2017年1月25日に日本でレビュー済み
買って本当によかったです。
安いので買ったのですが、こんな素敵な作家さんに出会えてよかった。
作品の雰囲気は恒川光太郎さんに似て居ます。世界観が独特です。
安いので買ったのですが、こんな素敵な作家さんに出会えてよかった。
作品の雰囲気は恒川光太郎さんに似て居ます。世界観が独特です。
2011年2月2日に日本でレビュー済み
帯には「失われた町」「刻まれない明日」に連なる作品とありますが
あくまでも「廃墟建築士」「鼓笛隊の襲来」の方に連なる連作短編です。
三崎亜紀のメガネを通して見る世界は
私たちが知っている世界と、少しズレています。
最初は、笑っていられる程度のズレですが、
不図、足元を見て見ると
あるはずの地面が失われていることに気がつきます。
ハッとしたところで、
夢から目覚めるように現実に戻されます。
戻ってきた来た世界は、メガネを通してみる前の普通の世界。
ただ、何かが違う。ほんの些細ですが、決定的な何かが・・・。
今回も、そうした物語が続きます。
それでいて、どの作品も
とても壊れやすいガラス細工のように
両手でそっと包み込みたくなるような
切なさと、哀しさと、温かさに満ちています。
今回も、三崎ワールドは健在。
オススメです。
あくまでも「廃墟建築士」「鼓笛隊の襲来」の方に連なる連作短編です。
三崎亜紀のメガネを通して見る世界は
私たちが知っている世界と、少しズレています。
最初は、笑っていられる程度のズレですが、
不図、足元を見て見ると
あるはずの地面が失われていることに気がつきます。
ハッとしたところで、
夢から目覚めるように現実に戻されます。
戻ってきた来た世界は、メガネを通してみる前の普通の世界。
ただ、何かが違う。ほんの些細ですが、決定的な何かが・・・。
今回も、そうした物語が続きます。
それでいて、どの作品も
とても壊れやすいガラス細工のように
両手でそっと包み込みたくなるような
切なさと、哀しさと、温かさに満ちています。
今回も、三崎ワールドは健在。
オススメです。
2011年6月3日に日本でレビュー済み
本書について、帯やレビューの中で作者の過去の作品とのつながりを指摘するものがあるが、大して意味のあることではない。
作者の「町」というテーマ・対象への強い意識、また現実世界とは異なる設定や事象をクロスオーバーさせる手法は、作者の多くの作品に通底するものだから、今更言うには及ばない。
本作品が過去の作品と大きく外形的に違う点は2点で、一つは登場人物や場所が繋がらない短編集であること、もう一つは写真とのコラボレーションであること。そして、この相違は、本作品の描く内容・テーマ自体が、過去の作品からスピンオフしていることとつながってくる。
すなわち、過去の作品においては、「町」という空間・時間・生活する者・物を広く抱える存在を大きく取扱いつつ、その中で、そこに暮らす登場人物を描きこんでいくという共通手法があり、そこに現実世界とは異なる設定や事象を置いていくことで、逆に登場人物の心理が読者に深く伝わってきていた。異世界的な事象はあくまで背景や設定であって、それと現実の対比がテーマではなかった。
しかし、本作品では、そうした異世界的な設定や事象そのものが中心に置かれており、多くの登場人物は狂言回し的な存在でしかない。古典的なショートショートを彷彿とさせる「巣箱」や怪異譚的な「四時八分」はその最たるところである。また、「ペア」や「海に沈んだ町」ではその事象が何を意味するのか(何かの比喩なのか?単なる変事象なのか?)も定かでない。そして、これまでの作品で作者が慎重に回避してきた現実世界とのシンクロが「ニュータウン」では大きな踏み出しとなっているようにも感じられる。浅く読むなら、「ニュータウン」は現実世界の政治・社会への露骨な批判でしかないからだ。
こうした三崎ワールドの中心から、スピンオフ的に個々に切り出された各短編は、写真によって現実世界と異世界との境界をまたぐような存在感を付与され、叙事・叙景から強い存在感を示す仕上がりとなっている。
今回の作者の挑戦を私は5つ☆をもって評価したいが、自分の評価内容が的を射ているのか不安ではある。
こうした叙景を現実の「町」を深く鋭く洞察してきた作者が行なったからこそ、「海に沈んだ町」と「団地船」で起きたことがまさに311で現実に起き、「ニュータウン」の後味の悪い結末がどうしても311の起きた町々と被るように感じられる。
それは外形的に似ているという単純なものではないようにも思う。
作者の「町」というテーマ・対象への強い意識、また現実世界とは異なる設定や事象をクロスオーバーさせる手法は、作者の多くの作品に通底するものだから、今更言うには及ばない。
本作品が過去の作品と大きく外形的に違う点は2点で、一つは登場人物や場所が繋がらない短編集であること、もう一つは写真とのコラボレーションであること。そして、この相違は、本作品の描く内容・テーマ自体が、過去の作品からスピンオフしていることとつながってくる。
すなわち、過去の作品においては、「町」という空間・時間・生活する者・物を広く抱える存在を大きく取扱いつつ、その中で、そこに暮らす登場人物を描きこんでいくという共通手法があり、そこに現実世界とは異なる設定や事象を置いていくことで、逆に登場人物の心理が読者に深く伝わってきていた。異世界的な事象はあくまで背景や設定であって、それと現実の対比がテーマではなかった。
しかし、本作品では、そうした異世界的な設定や事象そのものが中心に置かれており、多くの登場人物は狂言回し的な存在でしかない。古典的なショートショートを彷彿とさせる「巣箱」や怪異譚的な「四時八分」はその最たるところである。また、「ペア」や「海に沈んだ町」ではその事象が何を意味するのか(何かの比喩なのか?単なる変事象なのか?)も定かでない。そして、これまでの作品で作者が慎重に回避してきた現実世界とのシンクロが「ニュータウン」では大きな踏み出しとなっているようにも感じられる。浅く読むなら、「ニュータウン」は現実世界の政治・社会への露骨な批判でしかないからだ。
こうした三崎ワールドの中心から、スピンオフ的に個々に切り出された各短編は、写真によって現実世界と異世界との境界をまたぐような存在感を付与され、叙事・叙景から強い存在感を示す仕上がりとなっている。
今回の作者の挑戦を私は5つ☆をもって評価したいが、自分の評価内容が的を射ているのか不安ではある。
こうした叙景を現実の「町」を深く鋭く洞察してきた作者が行なったからこそ、「海に沈んだ町」と「団地船」で起きたことがまさに311で現実に起き、「ニュータウン」の後味の悪い結末がどうしても311の起きた町々と被るように感じられる。
それは外形的に似ているという単純なものではないようにも思う。