「夜をぶっとばせ」『小説トリッパー』二〇〇二年冬季号
DVな夫の許で僅かづつ常道を逸してゆく妻。その昔中学生だった頃から、いったいどれだけ遠くまで来てしまったのだろう。壊れたのか、それとも単にひょいと一線を越えてしまったのか、見知らぬ他人とデートを繰り返す彼女。息子は小学校では苛められっ子で、娘(妹)は月一で箱庭療法に通う精神が不安定な子供だったが、その娘が兄がボール遊びでいじめられたと石で兄の仲間の頭を殴ってから時は動き始めた。やがて事態は彼女の思いもよらなかった展開を見せ…… 描写があってすぐにいなくなってしまうハスキー犬の不在が物語を蔽い尽くそうとする閉塞感にポッカリと孔を開けているのが興味深い。
「チャカチョンバへの道」『小説トリッパー』二〇十一年夏季号
前作の登場人物であるDVな夫の視点から語られる数年後の姉妹篇。あちらから見ればこうだったあれは、しかしこちらから見ればそれであり、だがそれはやはりああなるしかなかったのだろう。話の展開と構成の化け方が作者が辿った歳月を感じさせる。えっ、何で黒人? あの友だちが…… どうして息子と娘はこうなった?「黄色い黄色い陽が今日もやっぱり沈む」って、この登場人物に当てるには、ちょっとシュール過ぎない? そして犬はまた不在となるのであった。
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夜をぶっとばせ 単行本 – 2012/5/18
井上荒野
(著)
- 本の長さ164ページ
- 言語日本語
- 出版社朝日新聞出版
- 発売日2012/5/18
- 寸法128 x 18 x 188 cm
- ISBN-104022509759
- ISBN-13978-4022509758
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登録情報
- 出版社 : 朝日新聞出版 (2012/5/18)
- 発売日 : 2012/5/18
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 164ページ
- ISBN-10 : 4022509759
- ISBN-13 : 978-4022509758
- 寸法 : 128 x 18 x 188 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,196,058位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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著者について
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1961年東京都生まれ。成蹊大学文学部卒業。1989年「わたしのヌレエフ」で第1回フェミナ賞を受賞し、デビュー。2004年『潤一』(新潮文庫)で第11回島清恋愛文学賞、2008年『切羽へ』(新潮社)で第139回直木賞を受賞。『あなたがうまれたひ』(福音館書店)など絵本の翻訳も手掛けている。